2022/08/16

🇵🇭母趾種子骨炎

第一中足骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患

母趾種子骨(ぼししゅしこつ)炎とは、足の甲にある第一中足(ちゅうそく)骨の骨頭下部にある種子骨の周囲に炎症が起き、足の親指の裏側に痛みが生じる疾患。種子骨炎とも呼ばれます。

種子骨は、足や手の関節の付近の靱帯(じんたい)や腱(けん)の中にあるアサガオの種のような形の小さい骨。隣接の骨とともに関節を構成し、滑車のような役目をして靱帯や腱の滑りを助けたり、これらが骨の面から脱臼(だっきゅう)するのを防いでいます。人体では、足の裏に2~5個、手のひらに5個の種子骨があります。

足の裏の第一中足骨の骨頭下部にある種子骨は、内側と外側に1個ずつあります。内側の骨は脛側(けいそく)種子骨、外側の骨は腓側(ひそく)種子骨に相当し、靱帯や腱の滑りを助けたり、足の裏に体重の負荷がかかる時にクッションの役割を果たしていますが、そのいずれかに圧力がかかることで炎症が生じ、痛みが生じます。

母趾種子骨炎の症状としては、軽いうちは長く歩いた時、ハイヒールなど特定の靴を履いた時に、足裏の親指の付け根の部分が痛みます。重症になると、常に痛くなります。

触ってみると、5ミリから10ミリの種子骨が皮膚の下に触れ、痛みます。時に炎症のために軽度の熱感を生じたり、内側に広がる発赤を引き起こすことがあり、はれることもあります。たこや魚の目が足裏にできることもあり、この場合、たこや魚の目を削っても一時的になくなるだけで再発します。

足の親指の付け根が外側を向き、親指の骨頭が内側に向いた状態になる外反母趾のために、母趾種子骨炎を起こすことが最も多くみられます。また、足裏に過度の負荷がかかるランナーやダンサー、サッカー選手、ハイヒールをよく履く人に多く起こっている傾向があります。靴を変えた際に今まで以上に足に負荷がかかって起こったり、直接的な外傷、骨折などで種子骨の位置が変化して起こることもあります。

生まれ付き内側と外側の種子骨の大きさに違いがあったり、種子骨が分裂していることもあり、これらの場合には片方の種子骨に体重が集中して起こることもあります。

母趾種子骨炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、症状や問診で母趾種子骨炎と確定できます。足部と足の親指を背屈させた状態で中足骨骨頭部を調べ、種子骨を触診することもあります。圧痛は、種子骨、それも通常は脛側種子骨に限局化されます。

炎症によりはれを生じている場合、痛風や感染性関節炎と区別するために関節穿刺(せんし)を行うこともあります。

骨折、変形性関節症、骨折による転位が疑われる場合は、X線(レントゲン)検査を行い、種子骨の形状や位置関係、分裂の有無などを確認します。X線検査ではっきりしない場合は、MRI検査を行うこともあります。

整形外科の医師による治療では、痛みを生じる靴やスポーツシューズを単に履かないことを勧め、それで十分であることもあります。痛みが持続する場合には、厚底の靴や矯正装具を処方し、種子骨への圧迫を減らします。炎症がみられる場合は、治療には保存的な処置に加えて、コルチコステロイド(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)麻酔薬の局所注射を行うと、症状の軽減に有効です。

転位のない骨折がある場合、保存療法で十分であり、平らな硬性矯正靴を用いて関節を固定化することもあります。歩けないほど強い痛みが持続する場合、種子骨を取り除く手術が有効であることもありますが、足部の生体力学や歩行運動を侵害する可能性があるため、医師により意見の分かれるところです。一般的には、運動選手やプロ・ダンサーなどに対して、保存療法ではよくならない時だけ手術を行います。

🇵🇭ポストポリオ症候群

ポリオにかかって回復してから、10年以上たった後に生じる手足の機能障害

ポストポリオ症候群とは、ポリオ(小児まひ、急性灰白髄〔かいはくずい〕炎)にかかって回復してから、10年から数十年たった後に、手足の筋力の低下、関節の痛みや変形などを生じる機能障害。ポリオ後症候群、ポストポリオ、ポリオ後遅発性筋委縮症、PPS(Post-Polio Syndrome)とも呼ばれます。

ポリオは、ポリオウイルスが感染して、脊髄(せきずい)神経の灰白質という部分を侵すため、初めの数日間、発熱、頭痛、背骨の痛み、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が現れた後、急に足や腕がまひして動かなくなります。

日本では5歳以下の小児の罹患(りかん)率が高かったことから、一般には小児まひと呼ばれることが多いのですが、大人がかからないわけではありません。病原ウイルスは感染者ののどにいますが、主な伝染源になるのが感染者の大便とともに排出されたウイルスで、さまざまな経路で経口感染します。季節的には、夏から秋にかけて多く発生します。

日本では1960年に新潟、北海道、九州で5000人を超える大流行があり、1961年からポリオ生ワクチンの服用が全国的に実施されています。1980年には、自然感染によるポリオが根絶され、現在ではポリオ生ワクチンからの2次感染でしか発症していませんが、海外ではまだ流行している地域があります。世界保健機関(WHO)では、撲滅を目指しています。

2006年の厚生労働省の障害者調査によると、ポリオによる18歳未満の障害者は推定3000人、18歳以上は4万3000人。明らかにしていない人を合わせると、障害者の総数は10万人近いという推測もあります。

このうち、ほとんどが幼小児のポリオ患者が毎年、多数発生していた時期に全国各地で罹患し、ポリオ後遺症を持った人たちが50~60歳前後に達したころに、ポストポリオ症候群を生じて手足の筋力低下、しびれ、痛みなどの症状が生じて、日常生活ができなくなったりしています。

最近15年くらいの間に日本や欧米の専門家によって精力的に調査研究された結果、ポストポリオ症候群はポリオの再発ではなく、ポリオの二次障害であることが確定しました。しかし、医師を始め、看護師、理学療法士、作業療法士、介護士などのパラメディカルスタッフに、ポストポリオ症候群はまだ十分理解されておらず、不適切な治療やリハビリを受けているケースもあります。

ポストポリオ症候群の頻度はポリオ経験者の20〜40パーセントといわれており、女性より男性にやや多い傾向があります。症状としては、筋肉が弱くなった、力が入らなくなったといった筋力低下と、筋肉がやせた、筋肉が細くなったといった筋委縮が多いほか、筋肉痛、関節痛、筋肉内の筋線維がピクピクと細かく動く過敏現象である筋線維けい縮、ピリピリ感など多彩です。障害のある手や足を氷のように冷たく感じる冷感、感覚鈍麻、腰痛、全身倦怠(けんたい)感を自覚する人もいます。

ポストポリオ症候群の諸症状は、ポリオ後遺症のある手や足に現れることが多いものの、他の側の手足に発現することもあります。

ポストポリオ症候群はしばらくの間は進行しますが、数カ月~1年くらいで進行は停止します。筋力低下と筋委縮はかなりの程度に回復する人が多く、ポストポリオ症候群の発症前の日常生活に戻ることができます。同時に、筋肉や関節の痛みやしびれ、疲れやすさも次第に消失します。しかしながら、一進一退を繰り返しながら少しずつ悪くなり、日常生活ができなくなるという人もいます。

幼小児期に経口感染したポリオウイルスは、急性期に増殖して、好んで脊髄の運動神経細胞に入り込みます。ウイルスが侵入した運動神経細胞は壊れて、消滅するので、それらの神経細胞から命令を受けていた手足の筋肉は動かなくなります。これがポリオによる手足のまひであり、このまひが後遺症として残ります。

急性期が過ぎて体力が回復すると、生き残った脊髄の運動神経細胞から出る末梢(まっしょう)神経は、たくさんの枝を伸ばし始めます。これらの枝が、ポリオの侵入によって消滅した神経細胞から命令を受けられなくなって運動できないままでいる手足の筋肉につながって、これらのポリオウイルスに障害されていない筋肉を活動させるようになります。ポリオ発症の直後には全く動かなかった手足の筋肉が、少しずつ動くようになるのは、このためです。

ポリオ経験者は一般に努力家で、後遺症を持った手足に対して一生懸命に機能回復訓練をした人が多く、運動まひの残っている手足においても神経と筋肉がかなりよくつながって、機能をうまく果たしており、その後何十年にも渡って通常の社会生活を送っています。

このように、ポリオ後遺症のある手足の筋肉に命令を伝えている脊髄の運動神経細胞は、健康な人と比べると余分の神経の枝を出して長年頑張っていますが、50~60歳ごろになって分枝した神経の部分が疲れを生じて、委縮したり消滅し始めます。また、ちょうど初老期に達するため、老化現象の一つとして神経細胞が減ったり、神経のみなら筋肉自体も弱くなったり、神経と筋肉の接合部も疲れを生じることもあるのです。

ポストポリオ症候群の際にしばしば現れる筋肉や関節の痛みやしびれは、追加して出現した筋力低下のために、その近辺の末梢神経や筋肉や関節に余分の負担がかかるために生じると考えられます。

筋力の低下によって起こる他の部位への影響なども深刻で、呼吸や飲み込みに関係する神経が障害されると、夜間の苦しさや飲み込みにくさを覚えることもあります。筋肉量が落ち基礎代謝が減るので、体重コントロールも難しくなります。

症状が生じた際は、神経内科や整形外科、内科、理学療法科(リハビリ科、リハビリテーション科)で神経、筋肉の障害を専門に診療している医師に相談しましょう。最近は全国各地にポリオの会ができており、お互いに連絡を取り合っていますので、もしもよい医師が見付からない場合には、最寄りのポリオの会に相談するのも一案。

なお、ポストポリオ症候群を発症した人は、障害厚生年金の支給対象となっています。

ポストポリオ症候群の検査と診断と治療

医師による診断では、ポストポリオ検査入院を行うのが一般的で、2〜4週間の入院が必要とされます。血液検査、検尿、MRI、筋電図、心電図、X線、運動負荷試験などの検査のほか、必要に応じて装具を作り、運動療法や作業療法を実施し、運動の指導、日常生活の指導を含めたリハビリを行います。

ポストポリオ症候群と似た症状を示す貧血や甲状腺(こうじょうせん)機能の低下、変形性脊椎(せきつい)症、骨粗鬆(こつそしょう)症などとの鑑別も行います。

医師による治療では、ポストポリオ症候群に対する根本的な治療薬がない現在、そのリハビリと予防が最大の治療方法となります。

まず、無理な運動は避けて、安静にしたり、マッサージや入浴などでその部位の血液循環をよくすることが勧められます。ポストポリオ症候群の急性期が過ぎて、筋線維けい縮、筋力低下、筋肉や関節の痛みなどの症状が消失または軽減してきたら、少しずつリハビリを始めることになります。

ラジオ体操や散歩などがお勧めで、運動の目安は1日の運動による疲労が翌日に残らない程度とします。数日から1週間ぐらい同程度の運動を続け、調子がよければ少し運動量を増して数日間様子をみます。具合がよければ、さらに運動量を増していきます。

予防としては、50~60歳前後のポリオ経験者は、後遺症のある手や足に過剰な負担をかけないように気を付けることが必要です。この年代で集中的な筋肉トレーニングを行ったり、スキーや登山で足の筋肉を酷使した直後にポストポリオ症候群を発現したケースが、多く報告されています。体重増加(肥満)にも気を付けることが必要で、過体重が筋肉や関節に余分の負担をかけます。

初老期になると、脊髄や筋肉だけででなく、脳や全身臓器の機能も低下してくるので、全身をよく動かし、適度に歩き、趣味をたくさん持ち、偏食なくよく食べ、毎日を楽しく過ごすことが、ポストポリオ症候群の予防になります。

🇵🇭母性喪失症候群

子供が十分な愛情を感じられないまま育ち、精神的な発達や身体的な成長に遅れを生じる状態

母性喪失症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、情緒の発達、言語や知的能力の発達、さらに身体発育の遅れと行動異常を生じる状態。愛情遮断症候群、情緒剥脱(はくだつ)症候群とも呼ばれます。

乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長に遅れが出るほか、精神的な発達にも遅れが出ると考えられています。

子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあります。入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。

母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。

栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。

愛情不足の養育が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。

養育者が子供の母性喪失症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。

母性喪失症候群の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。

小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。

また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。

しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。

母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。

🇲🇳捕捉性ニューロパチー

末梢神経が周りの組織に圧迫されて異常を生じ、しびれや痛みなどの神経障害を招く疾患

捕捉(ほそく)性ニューロパチーとは、末梢(まっしょう)神経が周りの組織に圧迫されて異常を生じ、しびれや痛み、筋力低下などの神経障害を招く疾患。機械的神経障害、あるいは絞扼(こうやく)性神経障害とも呼ばれます。

ニューロパチーは、脳や脊髄(せきずい)から分かれた後の、体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態で、末梢神経障害とも呼ばれ、以前は神経炎と呼ばれていました。

捕捉性ニューロパチーは普通、1本の神経にだけに起こる単神経炎の形をとり、上肢では正中(せいちゅう)神経まひ、尺骨(しゃくこつ)神経まひ、橈骨(とうこつ)神経まひ、下肢では腓骨(ひこつ)神経まひがよく起こります。

手にとって最も重要な神経が障害を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす正中神経まひ

正中神経まひは、手にとって最も重要な神経である正中神経が障害を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす疾患。その傷害は、鋭敏な感覚と巧緻(こうち)性を要求される手にとって致命的なダメージになります。

正中神経は、親指から薬指の親指側2分の1までの手のひら側の感覚を支配し、前腕部では前腕を内側にひねるように回す運動である回内や、手首の屈曲、手指の屈曲を支配しています。さらに、手部では親指の付け根の母指球筋という筋肉などを支配していて、親指を手の平と垂直に立てる運動である外転、親指と小指をつける運動である母指対立などを支配しています。

正中神経の傷害がどこで生じているかによって、正中神経まひの症状は異なります。

正中神経は手首部にある手根管という狭いトンネルを通り抜ける構造になっており、周囲三方向を手根骨の壁、残りの一方は強靭(きょうじん)な横手根靱帯(じんたい)によって囲まれています。そのため、この部分で正中神経が圧迫されやすい構造になっており、容易に正中神経が損われて正中神経まひを起こします。これを手根管症候群といいます。

手根管症候群の初期には人差し指、中指がしびれ、痛みが出ますが、最終的には親指から薬指にかけての親指側にしびれ、痛みが出ます。

このしびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと指がしびれ、痛みます。ひどい時は夜間の睡眠中に、痛みやしびれで目が覚めます。この際に手を振ったり、指を曲げ伸ばしすると、楽になります。手のこわばり感もあります。

進行すると親指の付け根の母指球筋がやせてきて、親指と人差し指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。細かい作業が困難になり、縫い物がしづらくなったり、細かい物がつまめなくなります。

手根管症候群は原因が見いだせない特発性というものが多く、原因不明とされています。妊娠期や出産期、更年期の女性に多く生じるのが特徴で、骨折や脱臼(だっきゅう)などのけが、仕事やスポーツでの手の使いすぎ、腎不全のために人工透析をしている人などにも生じます。腫瘍(しゅよう)や腫瘤(しゅりゅう)などの出来物でも、生じることがあります。

妊産婦と中年の女性にはっきりした原因もなく発症する特発性の手根管症候群は、女性のホルモンの乱れによって、正中神経とともに手根管を通っている滑膜性の腱鞘(けんしょう)がむくむのが誘因と考えられ、手根管の内圧が上がり、圧迫に弱い正中神経が偏平化して症状を示すと見なされています。けがによるむくみや、手の使いすぎによる腱鞘炎などでも、同様に正中神経が圧迫されて症状を示すと見なされています。

前腕から手首までの間の正中神経の傷害では、手根管症候群と同様に、親指から薬指にかけての親指側のしびれと痛み、親指の付け根の母指球筋の障害を示します。肘(ひじ)より上のレベルの外傷による正中神経の傷害では、まひの程度はさまざまです。

指にしびれ、痛みがあり、朝起きた時にひどかったり、夜間睡眠中に目が覚めるようなら、整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。

肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる尺骨神経まひ

尺骨神経まひは、肘の皮膚の表面近くを通る尺骨神経が損傷して、まひを生じ、手指のしびれや感覚障害、運動障害が起こる疾患。

尺骨神経の働きは、手首の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリつける内転、親指以外の4本の指を外に開く外転、4本の指を互いにくっつける内転です。 知覚神経は、小指、薬指の小指側半分、手のひらの小指側半分を支配します。

尺骨神経には2カ所、圧迫を受けやすい部位があります。最も多いのは肘関節部で、机の上で肘をついていて手がビリビリした経験は多くの人が持っているはずですが、その部位を長時間に渡って圧迫したり、無理に肘を曲げる姿勢をとることで症状が現れ、肘部管(ちゅうぶかん)症候群と呼ばれます。

リウマチや肘の骨折、腫瘍、腫瘤などで肘関節に変形のある場合には、特に誘因がなくても圧迫症状が起こり得ます。

次に多い圧迫部位は小指側の手のひらで、長距離自転車選手、繰り返す腕立て伏せ、タイル張りなど長時間の床仕事などで、手のひらを圧迫することにより症状が現れ、ギヨン管症候群(尺骨神経管症候群)と呼ばれます。

尺骨神経が侵されると、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋がまひし、細かい動きがうまくできない巧緻運動障害が生じます。また、小指と薬指が伸びにくくなったり、親指以外の4本の指での内外転と、親指の内転ができなくなります。

日常生活で気付くことには、小指の内転困難によってポケットに手を入れようとすると小指が引っ掛かってしまうこと、親指の内転困難によって親指と人差し指で新聞紙などを挟む力が弱くなることなどがあります。また、小指と薬指にしびれや感覚障害を起こします。

重症で慢性の尺骨神経まひでは、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮が生じ、筋肉が固まって指が曲がったままになる鉤(かぎ)爪変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる現象が起こります。

腕に走る橈骨神経が圧迫されて、腕がしびれたり、動かなくなる橈骨神経まひ

橈骨神経まひは、腕の骨を巻くように、鎖骨の下から手首、手指まで走っている神経が、外から圧迫されることで起こる障害。腕がしびれたり、手首や手指が動かなくなったりします。

橈骨神経は腕に走る大きな神経の1つで、主に肘関節を伸ばしたり縮めたり、手首や手指を伸ばしたりするなどの動きを支配している神経です。感覚領域は手の背部で、親指、人差し指とそれらの間の水かき部を支配しています。

腕に走る大きな神経はほかに、正中神経、尺骨神経がありますが、橈骨神経は障害を受けやすく、腕の神経まひのほとんどを占めます。

この橈骨神経は鎖骨の下からわきの下を通り、上腕の外側に出てきて上腕中央部で上腕骨のすぐ上を走り、肘のあたりで腕の内側を走り、手首の近くでまた表面に出てきます。このようにいろいろな方向に走っていますので、いろいろな部位で圧迫を受ける可能性があります。中でも、橈骨神経が障害されやすい部位は2カ所あります。

1カ所はわきの下での圧迫、もう1カ所は上腕の外側での圧迫です。特に上腕の外側、いわゆる二の腕の部位は、上腕骨に接するように橈骨神経が走行し、筋肉が薄い部位であるために、上腕骨に橈骨神経が圧迫されやすい状況にあり、最も障害を受けやすい部位です。

橈骨神経まひの原因は、大きく分けて2つあります。一番多いのが、腕の橈骨神経を体外から強く圧迫したことで起こる末梢性の神経まひです。

典型的には、前夜から腕枕をして寝ていた、ベンチの背もたれにわきの下を挟むような姿勢を続けていた、電車で座席の横のポールに腕を当てて寝ていた、飛行機で肘掛けに寄り掛かるように寝ていた、浴槽でわきの下を圧迫するようにうたた寝していたなど、わきの下や上腕の外側を強く圧迫するような姿勢を一定時間続けると、気付いた時には腕はしびれ、動かなくなっていたというように発症するケースが多く認められます。飲酒後、寝て起きたら、橈骨神経まひになっていたというケースも多く認められます。

何らかの思い当たる原因があって手が動かなくなったのであれば、まず末梢性のもので一時的な神経まひと考えられます。逆に、全く何の覚えもなく発症した時は、腫瘤などほかの原因から起きている場合もありますので、要注意です。

橈骨神経まひのもう1つの原因は、骨折、脱臼などの外傷による外傷性の神経まひで、外からの圧迫で神経を傷付けたり、骨折した骨が神経を傷付けたりといったケースです。

橈骨神経が上腕の中央部で傷害されると、手首と手指の付け根の関節に力が入らず伸ばしにくくなり、手首と手指がダランと垂れる下垂手になります。親指、人差し指、中指の伸ばす側を含む手の甲から、前腕の親指側の感覚の障害も生じます。

橈骨神経が肘関節の屈側で傷害されると、手首を伸ばすことは可能ですが、手指の付け根の関節を伸ばすことができなくなり、指のみが下がった状態になる下垂指になります。手の甲から前腕の感覚の障害がありません。

橈骨神経が前腕から手首にかけての親指側で傷害を受けると、障害の部位によりいろいろな感覚の障害が起こりますが、下垂手にはなりません。

共通する症状は、グーが握れなくなる、パーに開けなくなる、しびれです。まひの程度が重いほど、パーに開けなくなる症状が顕著です。手首の筋力が著しく弱くなるため、ちょっとした物でも持ち上げられなくなります。また、感覚の鈍さが現れ、親ペンなどをうまく持てず、字もうまく書けません。親指と人差し指の水かき部分のしびれ、腕のだるさや痛み、腕や手のひらのむくみなどがよくみられる症状です。

まひの状態が長く続くと、筋肉の委縮が起こり、腕の筋肉がやせ細ってきます。

手がしびれ、動かなくなった場合のほとんどは、末梢性のもので一時的な神経まひと考えられますが、中には重症の場合があるので、念のために整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。

自力で足首、足指を上げることができなくなり、感覚の障害、しびれが生じる腓骨神経まひ

腓骨神経まひは、足関節と足指、下腿(かたい)外側に支配領域を持っている腓骨神経がまひし、自力で足首や足指を上げることができなくなる疾患。

腓骨神経は、下腿を走行する神経であり、膝(ひざ、しつ)関節の後方で坐骨(ざこつ)神経から分岐し、膝の外側を通り、腓骨の側面を下降して、足関節を通り足指に達します。

腓骨神経まひの原因として最も多いのは、膝の外側(腓骨頭部)への外部からの圧迫により生じるものです。車に同乗中、交差点で出合い頭の衝突事故が起こり、膝の外側をダッシュボードに打ちつけるといった形での腓骨頭骨折や、その他の膝の外傷、開放創や挫傷(ざしょう)などによって生じます。下肢の牽引(けんいん)などで仰向けに寝た姿勢が続いたり、ギプス固定をしている時に、膝の外側が後ろから圧迫されて生じることもあります。

長時間に渡って足を組む姿勢をとることや、草むしりのような膝を曲げた姿勢をとること、硬い床の上で横向きに寝ることで生じることもあります。関節リウマチによる関節の変形、ガングリオン(結節腫)などの腫瘤、腫瘍によっても生じます。

腓骨神経まひが生じると、足首や足指が下に垂れたままの状態となり、自力で背屈ができなくなります。これを下垂足(垂れ足)といいます。下腿の外側から足背(足の甲)ならびに小指を除いた足指背側にかけて感覚が障害されて、しびれたり、触った感じが鈍くなります。

具体的には、下垂足が明らかでない時でも、障子の敷居で足を引っ掛けたり、スリッパやサンダルが歩いているうちに脱げやすいといった症状がみられることがあります。

下垂足が明らかになると足首と足指が下に垂れた状態となるため、靴下や靴を履く際には、その都度座って片手で足を支えないと、うまく履くことができません。車の運転でも、右足にまひが起こればアクセルやブレーキを踏むことはできません。

重症になると、正座、和式トイレの使用はできず、下腿をしっかり保持できないので、杖(つえ)の使用が常時必要となります。深刻なのは、下腿部の疼痛(とうつう)と筋拘縮(こうしゅく)です。下腿部には常にしびれたような疼痛が持続して、血流障害が発生し、下腿全体の筋肉が拘縮、委縮を示します。放置すれば、下腿は廃用性委縮となり、スカートを身に着けることができなくなります。

捕捉性ニューロパチーの検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による正中神経まひの診断では、神経伝導検査と筋電図検査を行うことで、正中神経の障害の程度や正確な障害部位が評価できます。

手根管症候群による正中神経まひの場合は、手首の手のひら側を打腱器などでたたくとしびれ、痛みが指先に響きます。これをティネル様サイン陽性といいます。手首を手のひら側に最大に曲げて保持し、1分間以内にしびれ、痛みが悪化するかどうかをみる誘発テストを行い、症状が悪化する場合はファレンテスト陽性といいます。母指球筋の筋力低下や筋委縮も診ます。

神経伝導検査と筋電図検査を行い、手根管を挟んだ正中神経の伝導速度を測定します。正中神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が、手根管症候群では長くなります。知覚テスターという機器で感覚を調べると、手根管症候群では感覚が鈍くなっています。腫瘤が疑われるものでは、エコーやMRIなどの検査を行います。

首の病気による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害、手指のほかの腱鞘炎との鑑別も行います。

整形外科、神経内科の医師による治療では、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服薬、塗布薬、運動や仕事の軽減、手首を安静に保つための装具を使用した局所の安静、腱鞘炎を治めるための手根管内腱鞘内へのステロイド剤注射など、保存的療法が行われます。

保存的療法が効かない難治性のものや、母指球筋のやせたもの、骨折や脱臼などの外傷や腫瘤によるものなどは、手術が必要になります。以前は手のひらから前腕にかけての大きな皮膚切開を用いた手術が行われていましたが、現在はその必要性は低く、靭帯を切って手根管を開放し、神経の圧迫を取り除きます。手根管の上を4~5cm切って行う場合と、手根管の入り口と出口付近でそれぞれ1~2cm切って内視鏡を入れて行う場合とがあります。

とりわけ母指球筋のやせたものは、手術を含めた早急な治療が必要となります。母指球筋のやせた状態が長く続くと、手根管を開放する手術だけでは回復せず、腱移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。

整形外科、神経内科の医師による尺骨神経まひの診断では、損傷した神経の位置の特定するために、神経伝導試験を行います。親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮や鉤爪変形、両手の親指と人差し指で紙をつまみ、紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療は通常、筋肉の硬直を防ぐために理学療法で治療します。肘の圧迫や長時間の肘の屈曲など、明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善と局所の安静で軽快することが多い傾向にあります。ビタミン剤の内服も有効と考えられます。

筋委縮を起こしている場合や、骨折や腫瘤などよって肘関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。

整形外科、神経内科の医師による橈骨神経まひの診断では、上腕の中央部の傷害で下垂手を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。

知覚神経が傷害されていれば、チネルサインと感覚障害の範囲で、傷害部位の診断が可能です。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものに対しては、局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具、運動療法などの保存療法を行います。薬剤内服では、発症早期にメチルコバラミンや副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤などを服用することが有用です。予後はおおむね良好で、多くの場合1~3カ月で完治します。

3カ月ほど様子を見て全く回復しないもの、まひが進行するもの、骨折などの外傷で手術が必要なもの、腫瘤のあるものでは、手術が必要になります。神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱移行手術が行われます。

整形外科、神経内科の医師による腓骨神経まひの診断では、下垂足を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。

腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアや坐骨神経障害との鑑別診断が、必要なこともあります。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものは、保存療法を行います。保存療法には、圧迫の回避・除去、局所の安静、薬剤内服、運動療法などがあります。症状が軽く、足を組むなどの明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善で軽快することがほとんどです。

3カ月ほど様子を見て回復しないもの、まひが進行するものでは、手術が必要になります。骨折などの外傷や腫瘤によるものは、早期に手術が必要です。

神経損傷のあるものでは、神経剥離、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱移行手術が行われます。下垂足のままだと、歩くことも困難で日常生活を送るのにも非常に不便ですから、足首を固定する距腿(きょたい)関節固定術が行われることもあります。

🇲🇳ボタロー管開存症(動脈管開存症)

本来は自然閉鎖されるボタロー管が残った先天性心臓病

ボタロー管開存症とは、出生により本来は自然閉鎖されるボタロー管が残った先天性心臓病。イタリアの外科医ボタロー(1530〜1571)が発見した疾患で、動脈管開存症とも呼ばれます。

胎児の時のボタロー管、すなわち動脈管は開いていて、肺動脈から大動脈に血液を送る重要な役目を持ち、胎盤からもらった酸素の多い血液が下半身へ通っていきます。出生によって肺が呼吸をすると、肺動脈から肺静脈へと血液が回り、ボタロー管は自然閉鎖する仕組みになっています。

本来は自然閉鎖されるボタロー管が出生後も残ったボタロー管開存症では、大動脈圧が肺動脈圧より高くなるため、心臓を出て大動脈へ行った血液がボタロー管を通って、再び肺動脈へと流れ込むことになります。そのぶんの血液は、肺血管と左心房、左心室を空回りします。結果として、左心室の負担と肺動脈圧の上昇が起こり、肺高血圧は右心室の肥大や拡大を招きます。

ボタロー管開存症の症状としては、運動時の息切れ、動悸(どうき)があり、感染(細菌)性心内膜炎にかかりやすくなります。

ボタロー管開存症の検査と診断と治療

出生時におけるボタロー管の開存は、生後1日から7日くらいではプロスタグランジン合成阻害剤により、閉鎖する場合もあります。この方法で閉鎖しない場合は通常、外科的手術が行われます。

手術は通常、人工心肺を用いないで、ボタロー管を切り離したり、しばって血行を止める結紮(けっさつ)により行われます。心臓を切開して内部を見ながら行う開心術を必要とせず、開胸術、すなわち胸腔(きょうくう)切開術のみによってできるので、成績も極めて良好です。ボタロー管開存症では、左のわきの下から胸腔にメスを入れ、ボタロー管を切断するか、しばります。

また、ボタロー管が細い場合には、心臓カテーテル法によって、ボタロー管を人工栓で閉塞(へいそく)する方法がとられることもあります。

子供の場合の手術は、比較的短期間の入院ですむことがほとんどで、予後も非常に良好。通常、ほかの子供たちと同様に生活していけると見なされています。手術を実施する時期は1歳から7歳くらいまでがよいのですが、重症例では新生児でも行われます。

🇲🇳勃起障害(ED)

精神的、ないし身体的な原因で満足な性行為が行えない状態

勃起(ぼっき)障害とは、性的な刺激を受けても、陰茎の形や大きさが不足したり、勃起を射精時まで維持できなかったりして、満足な性行為が行えない状態。勃起不全、ED(Erectile Dysfunction)、インポテンツ(性交不能症)とも呼ばれます。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにグアノシン一リン酸(サイクリックGMP)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、勃起障害です。

勃起障害は心因性(機能性)の障害と、身体的(器質性)の障害に大別することができますが、大部分は前者です。

心因性(機能性)障害は、基本的には体に異常がないものの、精神的な原因で勃起の障害を来します。具体的には、不安、ストレス、心の病、性器や性行為能力への不信、家の構造上の問題などが原因となります。勃起が起こるには基本的に性的な刺激が必要で、精神的ストレスなどがある時はいくら刺激を受けても、勃起を起こす大脳中枢神経、自律神経、ホルモン系などに悪影響を及ぼし、勃起のメカニズムが正常に作用しなくなります。

身体的(器質性)障害では、糖尿病によるものが著しく増加しています。そのほか、脊髄損傷、脳障害、動脈硬化、高血圧、泌尿器疾患、内分泌機能障害、薬の副作用が、原因となっています。内分泌機能障害の一つには、男性ホルモンの低下が挙げられます。

勃起障害の検査と診断と治療

現在のところ、勃起障害には絶対的な解決策は存在しません。 状態が緊急を要したり、症状が重い場合は、医師へ相談することも選択肢の一つです。

医師による心因性(機能性)障害の場合の治療は、カウンセリング、性的教育などが主体となりますが、薬物療法を用いることもしばしばあります。

身体的(器質性)障害の場合は、陰圧式勃起補助具の使用や、陰茎プロステーシスの海綿体内埋め込み手術などがありますが、保険診療では認められていません。

勃起障害の治療薬としては、厚生労働省にも認可されているバイアグラ(クエン酸シルデナフィル)や、レビトラ(バルデナフィル)が有名です。バイアグラの作用は、勃起のメカニズムのうちでサイクリックGMPの代謝を抑制します。このことで海綿体平滑筋の弛緩(しかん)が増強されるために、勃起も増強されます。つまり、勃起の増強剤であり、決して万能の薬ではありません。

勃起に関する神経や血管の完全障害の人には、バイアグラは全く効果がありません。また、心臓病でニトログリセリンなどの血管拡張剤を使用している人では、死亡ケースも出ており使用できません。動脈硬化の強い人や高齢者などの使用にも、十分な注意が必要です。専門の医師にも相談の上、使用することが大切となります。

なお、生活習慣の改善、禁煙・禁酒の実行、性行為時のちょっとしたアイデアで、勃起障害を解決したというケースもあります。

🇹🇼閉経後膣委縮症

閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態

閉経後膣委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。膣委縮症とも呼ばれます。

生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、閉経後膣委縮症です。

女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。

それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。

委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。

エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。

閉経後膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。

閉経後膣委縮症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。

明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。

近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。

軽度の閉経後膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

閉経後膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。

外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。

🟥インフルエンザ感染者、2週連続増加 1医療機関当たり11・33人

 厚生労働省は23日、全国約3000の定点医療機関から12~18日の1週間に報告されたインフルエンザの感染者数は計4万3027人で、1医療機関当たり11・33人だったと発表した。前週比1・07倍で、2週連続の増加となった。全国平均で警報レベルとされる1医療機関当たり30人を下回...