2022/08/17

🇫🇯虫垂炎

盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、腹部の痛みを感じる疾患

虫垂炎とは、盲腸の先端にある虫垂に炎症が起こり、上腹部の鈍痛、右下腹部の激痛を感じる疾患。俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれています。

盲腸は大腸の始まりの部分で、先端から少し上に小腸が大腸につながる回盲部があり、小腸で消化された便が回盲弁から大腸に入り、上行結腸に向かって移動します。虫垂は盲腸の先端に突起している部分で、直径1cm以下、長さ5~10cm程度のミミズのような細い管状のものです。

虫垂炎は俗に盲腸、盲腸炎とも呼ばれていますが、盲腸炎は実際のところ、虫垂炎の炎症が盲腸にまで及んだもののことをいいます。従って、正しくは虫垂炎と盲腸炎とは異なるものの、虫垂炎がひどくなってから発見された場合は、症状が進んで盲腸炎になっている可能性は十分にあります。

虫垂炎の根本的な原因は、現在も不明とされています。一般的に有力視されているのは、暴飲暴食、胃腸炎、便秘、過労などによって、虫垂内部のリンパ組織が増殖したり、体内で作られた糞石(ふんせき)といわれる結石が虫垂にたまったりすると、虫垂の中が狭くなって血行障害を引き起こし、そこに細菌やウイルスが感染することで炎症を起こすという説です。家族内の体質が誘因となると考えられていますが、まだ確実なことはわかっていません。

炎症を起こすと突発的に腹痛が起こるのが特徴で、最初は上腹部の不快感や鈍痛を感じ、その後に右下腹部の激痛を感じ、その場所が限定されてきます。へそから右の腰骨までの線上の外側3分の1の部分を押すと痛みを覚え、この痛みが限定された部分を圧痛点と呼びます。圧痛点には、マックバーネー圧痛点、ランツ圧痛点、キュンメル圧痛点があります。

そのほか、発熱、食欲減退、吐き気、便秘、嘔吐(おうと)などがみられ、歩いたり飛んだりすると右下腹のつれるような痛みが走ります。症状が悪化すると、虫垂に穴が開いて、うみが横隔膜や骨盤内にでき、全身にも高熱が生じて脈が速まり、血圧も低下してショック状態となります。最悪の場合は、死亡することがあります。

消化管の外科的な疾患としては最も多いものの一つで、10~20歳代の青少年期に多く、全体的には約5パーセントの人がかかると推定されます。

虫垂炎の検査と診断と治療

腹部が痛むなど異変を感じた場合は、早めに医療機関を受診するようにします。虫垂炎の専門科は、消化器科か外科。初期症状だけでよくわからないという場合は、とりあえず内科、子供であれば小児科を受診してもよいでしょう。発症後放置して、治療が遅れてしまうと、虫垂の穿孔(せんこう)や腸管の癒着、腹膜炎を併発する可能性があります。

医師の側では、まず症状、病歴、生活習慣などについて問診し、腹部を触診して痛みの場所を明らかにし、腹膜炎の併発がないかを調べます。腹膜炎がある場合の特徴は、患部を押さえた手を離すと痛みが響いたり、触っただけでおなかが硬くなったりします。

ほかに発熱の確認と、血液検査で白血球数や血清アミラーゼが高値であることを確認をします。炎症が進行したものでは、腹部超音波検査や腹部CT検査で虫垂の形態的な変化を確認するほか、糞石がないか、腹水がたまっていないか、卵巣嚢腫(のうしゅ)などがないかを確認することがあります。

初期で軽度の場合には、抗生物質の投与などの内科的治療も行われますが、虫垂炎は再発の可能性が高いため、ほとんどは外科的手術により、虫垂の摘出を行います。従来は右下腹部を数cmに渡って切開する開腹手術をしていましたが、近年では腹腔(ふくくう)鏡で手術をすることも可能になっています。

腹腔鏡での手術は、傷が極めて小さく、退院までの日数も短縮できます。しかし、炎症の激しい虫垂炎や過去に腹部の手術を受けたことがある人には向いていません。疾患の状態によって、開腹手術と腹腔鏡手術のどちらを選択するかが決まってきます。

手術後の食事は、炎症の程度によって異なります。炎症が軽症の場合は、術後翌日から水分を取り、おならが出れば流動食の食事を開始します。炎症が重症の場合でも、術後2~4日程度で食事を開始することができます。

虫垂の穿孔が起こり、 炎症が注意の周囲の臓器や周囲に及び、腹膜炎を起こしている場合には、おなかを大きく切開する開腹手術が必要で、治療にも長い期間が必要になります。虫垂周辺の膿汁(のうじゅう)や腹水を取り除き、おなかの中を十分洗浄して、腹腔内の浸出液を体外に誘導し排出するための管を入れて起きます。管を入れる時は、傷口を縫い合わせず、開いたままで治します。管をいつ抜き取るかは、状態によって異なりますが、通常開いた傷が治癒するまで2~3週間を要します。 

🇲🇭中枢神経系原発リンパ腫

中枢神経系の脳、脊髄、髄膜や眼球の中に悪性リンパ腫ができる疾患

中枢神経系原発リンパ腫(しゅ)とは、中枢神経系の脳、脊髄(せきずい)、脳の外側を覆っている髄膜、眼球などの中に悪性リンパ腫ができる疾患。

リンパ腫は、リンパ系に悪性腫瘍、すなわちがんが発生する疾患です。リンパ系は免疫系の一部で、リンパ液、リンパ管、リンパ節、脾臓(ひぞう)、胸腺(きょうせん)、扁桃(へんとう)、骨髄から構成されています。このリンパ系は、蛋白(たんぱく)質を豊富に含むリンパ液の流れを体に循環させ、バクテリア、ウイルス、老廃物などを集めます。これらをリンパ管を通して、リンパ節に運び、リンパ節の中のリンパ球という感染と戦う細胞でろ過して取り除きます。リンパ液は静脈の毛細血管に吸収され、老廃物などは最終的には体から排出されます。

リンパ球の集団の一部の細胞が悪性化し、それが中枢神経系の内部でリンパ腫を引き起こすものと考えられています。しかし、リンパ節のような組織の存在しない中枢神経系や眼球内に、悪性リンパ腫が発生する原因は、わかっていません。

中枢神経系原発リンパ腫は、脳、脊髄、髄膜のいずれかより発生します。また、その位置が脳に非常に近いことから、眼球からも中枢神経系原発リンパ腫が発生することがあり、これは眼内リンパ腫と呼ばれます。

この中枢神経系原発リンパ腫にかかる危険因子としては、膠原(こうげん)病、免疫不全疾患、臓器移植、加齢などによる免疫不全、ヘルペスウイルスの仲間であるエプスタイン・バーウイルス感染などがあります。

脳に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち脳リンパ腫が前頭葉、後頭葉、脳深部、脳幹などに生じると、脳腫瘍によって、頭蓋(とうがい)内の圧力が高まるために起こる頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などの症状が起こります。

脳腫瘍ができた部位によっても症状が異なり、前頭葉に腫瘍があると知能低下(認知症)や失語症、性格変化、尿失禁など、後頭葉に腫瘍があると視野障害など、脳幹に腫瘍があると運動まひ、眼球運動障害などが生じます。

数日から何週間単位で進行する亜急性を示すものが多く、一度症状が出たら悪化するのは早いと考えなければなりません。

眼球内に中枢神経系原発リンパ腫、すなわち眼内リンパ腫が生じると、視野の中に虫が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかったように見える霧視、光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)感、視力の低下、眼痛、充血など自覚症状が起こります。

眼内リンパ腫が生じた場合には、中枢神経系にも生じていることもあり、中枢神経系の症状が先に出てくる場合と、目の症状が先に出てくる場合とがあります。目の症状が先行した場合は、8割近くが数年以内に中枢神経系にもリンパ腫を生じ、多彩な神経症状を生じます。

脊髄に中枢神経系原発リンパ腫が生じると、首や背中や下肢の痛み、骨格筋が委縮して筋力が低下するミオパチー、膀胱(ぼうこう)直腸障害などが起こります。

中枢神経系原発リンパ腫の検査と診断と治療

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の診断では、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、腫瘍を形成する白っぽい病変として描出され、造影剤を用いると多くの場合、はっきりわかります。

腫瘍を形成する病変は、前頭葉、側頭葉、小脳、脳深部に多く認められ、脳の中に2個以上のリンパ腫が同時にできる多発例もしばしば認められます。

脳にだけリンパ腫ができたのか、脳ではない体のどこかに発生したリンパ腫が脳に転移したのかを区別するのは、困難です。

検査が終わってリンパ腫が疑われた場合は、すぐに定位脳手術という方法で腫瘍の一部分を切り取り、顕微鏡で調べる検査である生検を行います。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の診断では、まず、一般的な眼科の検査を行います。検査をすると、眼球の内容の大部分を占めるゼリー状の透明な組織である硝子体(しょうしたい)の混濁が認められたり、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているのが認められたり、両者が混在して認められたりします。

硝子体の混濁が認められた時は、硝子体手術という方法で硝子体を切除することによって、眼内のリンパ腫細胞を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。いわゆる細胞診と呼ばれる診断法ですが、眼内の混濁がなくなることで視力の向上も期待できます。

硝子体の混濁が認められず、網膜の下の眼底に腫瘍の塊が生じているような場合には、硝子体手術によって網膜下の組織を採取し、これを病理検査することによって眼内リンパと確定します。

また、中枢神経系の病変の有無を調べるために、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を併用して行います。これらの検査を行い、脳のリンパ腫である中枢神経系原発悪性リンパ腫が疑わしい場合は、血液内科、脳神経外科などの医師と連携して診断を確定します。

脳神経外科、脳腫瘍外科などの医師による脳リンパ腫の治療では、メトトレキセートという抗がん剤を投与した後に、脳全体に放射線を照射する方法を行います。この方法が最も良い治療成績を示し、平均的な生存期間は3年以上になると報告されていますが、集中管理できる施設でしか行うことができません。

脳腫瘍ができた部位によりますが、腫瘍の切除手術は行いません。脳リンパ腫の場合、周囲組織との境目が明確でないため完全切除は難しく、大きく切除すると脳機能に多大な影響を与えかねないためです。

残念ながら、いずれの治療法を選択しても再発率や死亡率は高いものです。

一方、眼科などの医師による眼内リンパ腫の治療では、眼内リンパ腫に対する局所的な治療を行うとともに、中枢神経系原発悪性リンパ腫や全身性の悪性リンパ腫に対する治療も考慮します。

局所的な治療としては、放射線を眼部に照射する方法と、メトトレキサートを眼内に注射する方法があります。前者の放射線療法は、連日の照射治療を2週間程度続けることになります。後者の注射による薬物療法は、週に1、2回、その後は月に1回のペースで半年から1年間程度続けることになります。

いずれも治療方法として有効といわれていますが、どちらがよいかということは判断が分かれており、また、副作用も比較的重くなっています。

🇹🇻中枢性思春期早発症

性腺刺激ホルモンの影響を受けて性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴が早く起こる疾患

中枢性思春期早発症とは、下垂体(脳下垂体)から性腺(せいせん)刺激ホルモンであるゴナドトロピンが分泌され、それにより性腺からの女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、二次性徴の成熟が通常の思春期よりも2〜3年程度早い年齢で起こる疾患。

真性思春期早発症、脳性思春期早発症、ゴナドトロピン依存性思春期早発症とも呼ばれます。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が、思春期の開始です。この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣( 睾丸〔こうがん〕)が4ミリリットル以上の大きさになった時が、思春期の開始です。この精巣の発育が9歳未満で起こった時、中枢性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

この中枢性思春期早発症は、脳内視床下部よりも中枢にある成熟時計と呼ばれる体内時計により、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン〔GnRH〕または 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕)の分泌が高進し、これが下垂体からの性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピン(黄体形成ホルモン〔LH〕および卵胞刺激ホルモン〔FSH〕)の分泌を促進し、さらにこのゴナドトロピンが女性の性腺である卵巣からの女性ホルモンであるエストロジェンの分泌、男性の性腺である精巣からの男性ホルモンであるテストステロンの分泌を促進することで引き起こされ、二次性徴が早く起こります。

また、中枢性思春期早発症は、胚芽腫(はいがしゅ)・過誤腫・星状細胞腫などの脳腫瘍(しゅよう)や脳炎後遺症、水頭症などによる器質性思春期早発症と、明らかな原因が認められない特発性思春期早発症の2つに大きく分けられます。

女子に起こるものの多くは、原因不明の特発性思春期早発症ですが、男子に起こるものは、脳腫瘍などによる器質性思春期早発症が多くみられます。

女性ホルモンであるエストロジェン、または男性ホルモンであるテストステロンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。女子に男子の約3〜5倍多く、起こります。

原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛、視野狭窄(きょうさく)などが起こることがあります。

未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

中枢性思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性腺刺激ホルモンや性ホルモンの分泌状態、頭部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳腫瘍などの病変の有無、腹部超音波(エコー)検査で副腎や卵巣の腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

ホルモン検査では、性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇が認められるとともに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)負荷試験( 黄体形成ホルモン放出ホルモン〔LHーRH〕テスト)では、性腺刺激ホルモンの思春期レベルの反応が認められます。また、骨年齢が促進し、成長率も高くなります。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、GnRHアナログ(LHーRHアナログ)という薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

器質性思春期早発症の場合、脳腫瘍が原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。手術により切除が難しい場合は、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を行います。

しかし、過誤腫が原因であれば、腫瘍そのものによる圧迫症状などがなければ、薬物療法を行います。また、脳炎後遺症、水頭症が原因であれば、薬物療法を行います。

🇳🇷中枢性尿崩症

抗利尿ホルモンの分泌低下により、体内の水分が過剰に尿として排出される疾患

中枢性尿崩症とは、体内の水分が過剰に尿として排出される疾患。バソプレシン感受性尿崩症とも呼ばれます。

抗利尿ホルモン(バソプレシン)の分泌量の低下で、体内への水分の再吸収が低下するために、多尿を呈します。抗利尿ホルモンは大脳の下部に位置する視床下部で合成され、神経連絡路を通って脳下垂体後葉に運ばれて貯蔵され、血液中に放出されます。この抗利尿ホルモンの分泌低下による尿崩症が、中枢性尿崩症です。

一方、抗利尿ホルモンの腎尿細管における作用障害に由来し、抗利尿ホルモンに腎臓が反応しなくなる尿崩症は、腎性(じんせい)尿崩症です。

中枢性尿崩症のうち、抗利尿ホルモンを産生する視床下部や脳下垂体後葉の機能が腫瘍(しゅよう)や炎症、外傷などで障害されたものが続発性尿崩症、このような原因のはっきりしないものを特発性尿崩症といいます。また、遺伝子異常が報告されている家族性尿崩症もあります。

続発性尿崩症の病因では、頭蓋咽頭(ずがいいんとう)腫などの腫瘍が多くみられます。下垂体後葉などに非特異性慢性炎症がみられる下垂体後葉炎が病因となっているものもあります。

症状はいずれの年代でも、徐々にあるいは突然、発症します。発症すると、脱水状態になるため、のどが渇いて過剰に飲水するといった症状が現れ、多尿を呈します。1日に排出される尿量は3~15リットルと、通常の2倍~10倍にもなります。ひどい時には、1日30リットル〜40リットルになることもあります。

薄い尿の大量排出は、特に夜間に著しくなります。水をたくさん飲むために、食べ物があまり取れず、体重は減少します。

続発性尿崩症では、口渇、多飲、多尿に加えて、原因となる疾患の症状を示します。腫瘍が原因の場合、腫瘍が拡大すれば頭痛、視野障害、視床下部・脳下垂体前葉機能低下症状などを示します。

脳下垂体前葉機能低下の程度が強く、高度の副腎皮質刺激ホルモンの分泌不全を伴うと、尿量は減少し、尿崩症の症状ははっきりしなくなります。この場合、副腎皮質ホルモンを補充すると多尿がはっきりしてきます。

一般に、口渇中枢は正常であるため、多尿に見合った飲水をしていれば脱水状態になることはありませんが、続発性尿崩症で口渇中枢も障害されている場合は重症の脱水を来すことがあります。

1日3リットル以上の著しい多尿や口渇、多飲などの症状がみられた際には、糖尿病や腎疾患、心因性多飲症とともに尿崩症である可能性があります。内科か内分泌科、頭部外傷や脳手術の既往歴がある人は脳外科か脳神経外科の専門医と相談して下さい。

中枢性尿崩症の検査と診断と治療

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、まず多飲、多尿を示す糖尿病、腎疾患を除外する必要があります。これらが除外された後、心因性多飲症などとの鑑別が必要になります。

心因性多飲症は、精神的原因で強迫的に多飲してしまう疾患です。血漿(けっしょう)浸透圧と血中の抗利尿ホルモンを測定して、鑑別診断に用います。鑑別が難しい場合、水制限試験を行います。水分摂取の制限を行っても、中枢性尿崩症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えることはありませんが、心因性多飲症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えて濃縮がみられます。

中枢性尿崩症では、下垂体後葉に抗利尿ホルモンの枯渇を反映する変化がみられます。また、続発性尿崩症の原因となる脳腫瘍などの疾患の検索にも有用です。

中枢性尿崩症と腎性尿崩症の区別は、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤の投与によって、尿が濃縮されるかで調べます。尿が濃縮されるのが中枢性であり、反応しないのが腎性です。

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、中枢性尿崩症には補充療法として、バソプレシン剤や、デスモプレシン剤を点鼻液、あるいはスプレーとして用います。1日2〜3回使用すると尿が濃縮され、尿量は普通並みに減少します。そのほか、注射製剤も使用できます。

意識がなくなったり、胃腸障害で水が飲めなくなった時には、速やかに点滴静脈注射をして水分を補給します。腫瘍が原因で続発性尿崩症が起こった時には、手術をして腫瘍を取り除きます。

🇸🇧高安病

大動脈とその主要な分枝に狭窄を生じる特異な血管炎

高安(たかやす)病とは、大動脈とその主要な分枝に狭窄(きょうさく)を生じる特異な血管炎。疾患名は最初の報告者の名前に由来していますが、手首の動脈の脈が触れないことがよくあるために脈なし病、あるいは大動脈炎症候群とも呼ばれています。

この高安病は若い女性に多く、特に日本ではかつてから頻度が高かったために、明治の末期から学者の間で注目され、1908年に欧米に報告されたものです。現在でも、日本が世界で最も発症者が多いといわれ、インド、中国などのアジア諸国でもみられるほかに、メキシコ、南アフリカなどでも少なくないようです。

日本での発症者の約9割は女性で、発症年齢は20歳代が最も多く、次いで30歳代、40歳代の順。特定疾患であり、医療費は公費負担助成の対象となります。

原因は不明ながら、自己免疫機序が関与しているという説が有力です。炎症のために、動脈にひきつれができて壁が厚くなり、内腔(ないくう)が狭くなったり、詰まったりするために起こります。

炎症が起きる場所については、主に脳や腕に血液を送る動脈に起きると、かつては考えられていました。動脈造影法といった検査技術の進歩した最近では、炎症は大動脈全体と、そこから枝分かれしている腹部の内臓や腎(じん)臓の動脈、さらには肺動脈にも及ぶことがわかっています。時には、動脈が拡張して動脈瘤(りゅう)を作ることもあります。

最初の急性期は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重減少などの症状から始まることもあります。発症が潜在性で気付かないことも多く、健康診断で「脈なし」を指摘されて、初めて診断されることがしばしばあります。その後、慢性の経過をたどるようになると、動脈の炎症がどの血管に起こったかによって、さまざまな症状が現れてきます。

脳へいく血管である頸(けい)動脈が狭くなったケースでは、視力が低下したり、めまい、立ちくらみ、頭痛などが起こります。また、頸動脈を圧迫したり、上を向く姿勢をとったりすると、めまいや気が遠くなるような感じの発作が生じます。まれに、脳梗塞(こうそく)や失明などが起こることもあります。鎖骨下動脈が狭くなったケースでは、上肢のしびれ感、脱力感、冷感、重い物を持つと疲れやすいなどの症状が起こります。

腹部の大動脈が狭くなったケースでは、上下半身で血圧の著しい差がみられ、上半身は血圧が高いのに下半身では血圧が低くなります。この状態では、足の動脈に脈が触れなくなって、少し歩くとふくらはぎが張って重くなったり、痛んだりする間欠性跛行(はこう)の症状が出ることもあります。腎臓へいく動脈が詰まったケースでは、血圧を高くする物質が血液中に増えるために、高血圧になります。

高安病の検査と診断と治療

内科、ないし循環器科の医師による診断では、腕の動脈に狭窄があると、血圧に左右差が認められます。狭窄による血管雑音は、頸部、鎖骨上窩(じょうか)などで聞かれます。血液検査では、赤沈(血沈)高進、CRP陽性、高ガンマグロブリン血症など通常の炎症反応がみられます。

X線検査では、大動脈の拡大や石灰化が認められます。血管造影検査では、動脈の狭窄、閉塞、拡張、動脈瘤などの病変部位や程度がわかり、高安病の診断に最も有用です。心エコーや心臓カテーテル検査では、心臓合併症の有無を調べます。

急性期には、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が用いられます。CRP、赤沈を指標とした炎症反応の強さと臨床症状に対応して、投与量を加減しながら、継続的あるいは間欠的に投与します。慢性期には、血栓予防のため抗血小板薬や抗凝固薬を用います。

内科的治療が困難と考えられる場合で、特定の血管病変に起因することが明らかな症状がある場合には、外科的治療が考慮されます。頸動脈狭窄による脳虚血症状、腎動脈や大動脈の狭窄による高血圧、大動脈弁閉鎖不全、大動脈瘤などが、主な手術対象になります。

大動脈炎症候群はある程度までは進行しますが、その後は極めて慢性の経過をとるのが通常で、多くは長期の生存が可能です。しかし、脳への血流障害や心臓の合併症を生じた場合や、高血圧が合併する場合は、厳重な管理が必要になります。また、血管炎が再発することもあります。

💦多汗症

全身や局所に、汗が異常に分泌する症状

多汗症とは、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、わきの下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。

人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのかは分類が難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることですので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。

局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。

これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経とは、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているものです。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは関係なく汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出し悪循環に陥ってしまいます。

全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。

例えば、脳の発汗中枢を刺激するような腫瘍(しゅよう)や、炎症、外傷によって起こることもあります。バセドウ病、糖尿病、アルコール中毒などに伴うこともあります。さらに、内服している薬の副作用が原因で、多汗症の症状が現れることもあります。

多汗症の検査と診断と治療

多汗症の治療としては、原因となる疾患がある場合は、これを取り除くことが先決です。

局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。

手足の多汗症に限りますが、交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。手術のメリットは効果に永続性があるということ、デメリットは神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、手のひらなどから汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。

手足の多汗症、わきの下の多汗症に限りますが、イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した多汗症の部位に、弱い電流を流して発汗を抑制するもので、個人差がありますが効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。治療を止めると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。

このイオン浸透療法は病院で行われる治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。

わきの下の多汗症に限りますが、皮膚を切り取ったり、削る手術を形成外科で行う方法もあります。頭部の多汗症には有効な手術などはありませんが、心理療法が効果を発揮することもあります。

日常生活では、汗かきを気にせず、精神的な安静を得ることが、薬による治療よりも大切なことです。かいてしまった汗の不快感を軽減するために、日頃から清潔に気を配るようにします。シャワーを浴びる回数を増やしたり、着替えの準備をしておいたり、いつでも汗をふけるようにタオルやウェットティッシュなどを携帯しておくなどの対策も、多汗症による不快感を予防するためには欠かせません。

🇵🇬多形滲出性紅斑

水っぽい紅斑が手足、ないし全身に多発する皮膚病

多形滲出(しんしゅつ)性紅斑(こうはん)とは、手足の関節の背面に、あるいは全身にできる水っぽい紅斑。

紅斑とは、血管が広がり、充血したために起こるもので、日焼けや軽いやけどの赤みも含みます。多形滲出性紅斑では、親指の頭くらいの円形から卵円形の紅斑が二重の輪郭を示し、辺縁が少し盛り上がり、中央がくぼんだ形をしたものや、平らなもの、紅斑の上に水疱(すいほう)やびらんを伴うものなどがあります。中心に白っぽい部分が残り、弓などの標的のような形になるのが特徴です

この多形滲出性紅斑は、大きく3つのタイプに分けられます。

第1は、手の甲から肘(ひじ)にかけてと、足の甲から膝(ひざ)にかけて、左右対称性に紅斑が生じる軽症のタイプです。かゆみはあるものの、全身的な症状はほとんどありません。若い女性に多くみられ、普通は2〜3週間で治りますが、春、秋に決まって数年間再発することもあります。

第2は、紅斑が全身の皮膚の広い範囲に生じるやや重症のタイプです。紅斑が広がって環状となり、時には隣接した紅斑と一緒になって地図状となることがあります。発熱や口腔(こうくう)粘膜の症状を伴う場合もあります。

第3は、口内炎や結膜炎など粘膜の病変を伴い、生命をも脅かす最も重症なタイプです。スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)とも呼ばれ、発熱とともに紅斑が現れ、水疱やびらんを伴います。口、目、陰部などの粘膜にも、高度のびらんがみられます。皮膚のびらんが体表面積の30パーセントを超えると、中毒性表皮壊死(えし)融解症とも呼ばれます。

多形滲出性紅斑は、アレルギー性の疾患と考えられていますが、その原因はさまざまです。感染症、薬剤による影響、内臓の疾患が関係することもあります。

紅斑が四肢に限られる軽症型では、感染アレルギーが考えられています。単純ヘルペスウイルスとの関連が明らかなケースもあります。全身に紅斑が多発するやや重症のタイプや、最重症のタイプのスティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、薬剤が原因のことが多いとされています。肺炎マイコプラズマが原因と考えられるケースや、原因がわからないケースもあります。

多形滲出性紅斑の検査と診断と治療

紅斑が四肢だけで、発熱や粘膜症状がなければ、近くの皮膚科専門医を受診します。紅斑が広範囲に多発し水疱やびらんのある場合や、発熱や目の充血、唇、口内、陰部のびらんを伴う場合は重症と考えられますので、速やかに入院可能な総合病院の皮膚科を受診します。

やや重症型の多形滲出性紅斑やスティーブンス・ジョンソン症候群が疑われる場合は、皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を緊急に行い、診断を確定する必要があります。麻疹や水痘(すいとう)などのウイルス感染症との区別が難しい場合にも、病理検査が役立ちます。

多形滲出性紅斑の原因が薬剤であれば、疑わしい薬剤を中止するだけで快方に向かいます。原因がほかのものでも、軽症では塗り薬と内服薬で軽快しますが、重症な場合は副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の内服が必要なこともあります。

病理検査の結果、スティーブンス・ジョンソン症候群の早期であれば、十分量の副腎皮質ステロイド剤の点滴注射が行われます。すでに広範囲の皮膚がびらんの状態であれば、重症のやけどに準じた治療になります。スティーブンス・ジョンソン症候群、中毒性表皮壊死融解症では、死亡を免れても失明を含む目の後遺症を残すことがあります。

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 アフリカ連合(AU)の疾病対策センター(CDC)は23日までに、エムポックス(サル痘)の拡大を受けて2024年8月に出した緊急事態宣言を終了した。22日付。2025年前半から後半にかけて新規感染者数の減少傾向が続き、拡大を抑止できたためとしている。  アフリカでは2024年に...