2022/08/18

🇵🇬バソプレシン感受性尿崩症

バソプレシンの分泌低下により、体内の水分が過剰に尿として排出される疾患

バソプレシン感受性尿崩症とは、体内の水分が過剰に尿として排出される疾患。中枢性尿崩症、下垂体性尿崩症とも呼ばれます。

利尿を妨げる働きをするバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌量の低下で、体内への水分の再吸収が低下するために、多尿を呈します。バソプレシン(抗利尿ホルモン)は大脳の下部に位置する視床下部で合成され、神経連絡路を通って下垂体(脳下垂体)後葉に運ばれて貯蔵され、血液中に放出されます。このバソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌低下による尿崩症が、バソプレシン感受性尿崩症です。

一方、バソプレシン(抗利尿ホルモン)の分泌は正常でも、その腎(じん)尿細管における作用障害に由来して、腎臓が反応しなくなる尿崩症は、腎性尿崩症です。

バソプレシン感受性尿崩症のうち、バソプレシン(抗利尿ホルモン)を産生する視床下部や下垂体後葉の機能が腫瘍(しゅよう)や炎症、外傷などで障害されたものが続発性尿崩症、このような原因のはっきりしないものを特発性尿崩症といいます。また、遺伝子異常が報告されている家族性尿崩症もあります。

続発性尿崩症の病因では、頭蓋咽頭(ずがいいんとう)腫などの腫瘍が多くみられます。下垂体後葉などに非特異性慢性炎症がみられる下垂体後葉炎が病因となっているものもあります。

症状はいずれの年代でも、徐々にあるいは突然、発症します。発症すると、脱水状態になるため、のどが渇いて過剰に飲水するといった症状が現れ、多尿を呈します。1日に排出される尿量は3~15リットルと、通常の2倍~10倍にもなります。ひどい時には、1日30リットル〜40リットルになることもあります。

薄い尿の大量排出は、特に夜間に著しくなります。水をたくさん飲むために、食べ物があまり取れず、体重は減少します。

続発性尿崩症では、口渇、多飲、多尿に加えて、原因となる疾患の症状を示します。腫瘍が原因の場合、腫瘍が拡大すれば頭痛、視野障害、視床下部・下垂体前葉機能低下症状などを示します。

下垂体前葉機能低下の程度が強く、高度の副腎皮質刺激ホルモンの分泌不全を伴うと、尿量は減少し、尿崩症の症状ははっきりしなくなります。この場合、副腎皮質ホルモンを補充すると多尿がはっきりしてきます。

一般に、口渇中枢は正常であるため、多尿に見合った飲水をしていれば脱水状態になることはありませんが、続発性尿崩症で口渇中枢も障害されている場合は、重症の脱水を来すことがあります。

1日3リットル以上の著しい多尿や口渇、多飲などの症状がみられた際には、糖尿病や腎疾患、心因性多飲症とともに尿崩症である可能性があります。内科か内分泌科、頭部外傷や脳手術の既往歴がある人は脳外科か脳神経外科の専門医と相談して下さい。

バソプレシン感受性尿崩症の検査と診断と治療

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、まず多飲、多尿を示す糖尿病、腎疾患を除外する必要があります。これらが除外された後、心因性多飲症などとの鑑別が必要になります。

心因性多飲症は、精神的原因で強迫的または習慣的に多飲してしまう疾患です。血漿(けっしょう)浸透圧と血中のバソプレシン(抗利尿ホルモン)を測定して、鑑別診断に用います。鑑別が難しい場合、水制限試験を行います。水分摂取の制限を行っても、バソプレシン感受性尿崩症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えることはありませんが、心因性多飲症では尿浸透圧が血漿浸透圧を超えて濃縮がみられます。

バソプレシン感受性尿崩症では、下垂体後葉にバソプレシン(抗利尿ホルモン)の枯渇を反映する変化がみられます。また、続発性尿崩症の原因となる脳腫瘍などの疾患の検索にも有用です。

バソプレシン感受性尿崩症と腎性尿崩症の区別は、利尿ホルモンの合成類似体であるバソプレシン剤の投与によって、尿が濃縮されるかどうかで調べます。尿が濃縮されるのがバソプレシン感受性であり、反応しないのが腎性です。

内科、内分泌科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、バソプレシン感受性尿崩症には補充療法として、バソプレシン剤や、デスモプレシン剤を点鼻液、あるいはスプレーとして用います。1日2〜3回使用すると尿が濃縮され、尿量は普通並みに減少します。そのほか、注射製剤も使用できます。

意識がなくなったり、胃腸障害で水が飲めなくなった時には、速やかに点滴静脈注射をして水分を補給します。腫瘍が原因で続発性尿崩症が起こった時には、手術をして腫瘍を取り除きます。

🇵🇬ばち指

爪が肥大化、変形して指先を丸く包むような状態

ばち指とは、爪(つめ)の成長が著しくて湾曲度を増し、手指や足指の指先を丸く包むような状態。

ばち状指とも呼ぶほか、古代ギリシアの医学者であるヒポクラテスが発見したことにちなんでヒポクラテス爪、あるいは時計ガラス爪、時計皿爪とも呼びます。

見た目は、爪の甲が時計の風防ガラスのようになります。さらに変化が強くなると、指の先端も肥大してきて、爪の付け根が隆起してへこみがなくなった状態になり、見た目は、太鼓を打ち鳴らす棒であるばちのような感じになり、爪が手のひら側へ湾曲します。

こういう状態は、爪の甲が乗っている皮膚である爪床のすぐ下にある軟らかい組織が、指の先端で隆起した場合にみられます。このような隆起が起きる原因は不明ですが、血管の成長を刺激するムコ多糖類が沈着するために、軟部組織が肥厚して引き起こされる可能性があります。

このばち指の症状自体に痛みなどはありませんが、多くは重大な疾患の症状として現れます。症状の進行は、まず親指、人差し指から始まり、やがてほかの指でも起こるようになります。

ばち指が起こる代表的疾患としては、肺の慢性疾患である肺がん、肺膿瘍(のうよう)、気管支拡張症、肺気腫(きしゅ)、肺結核などのほか、チアノーゼを伴う先天性心臓疾患および亜急性心内膜炎、甲状腺(せん)機能高進症、肝硬変、潰瘍(かいよう)性大腸炎などが挙げられ、それらの一症状として現れます。

ほかに、内臓の疾患と関係のない特発性のもの、厚皮骨膜症の一症状として現れる遺伝性のものもあります。片側だけの爪が肥大化し、変形した場合は、その側の大きな血管に異常があることがあります。

思い当たる疾患がないのに症状が出た場合は、どこか悪いところがあるというサインかもしれないので、呼吸器科、内科などで診てもらうことが勧められます。

ばち指の検査と診断と治療

呼吸器科、内科などの医師による診断では、指の先端の第1関節(DIP関節)の高さで比べる指骨深さ比率を用います。例えば、手の親指の爪を横から見て、爪と指の第1関節の角度が約160度くらいなら正常な指ですが、爪の付け根にへこみがなくなり、爪と指の角度が大きくなって180度以上、つまり爪のある指頭の部分が下向きに曲がった状態なら、ばち指と判断します。

呼吸器科、内科などの医師による治療では、原因となっている疾患を治すことを最優先します。ばち指というのは可逆性で、慢性に経過する呼吸器疾患などの原因疾患が治れば、正常な指に戻ることもあります。

🇵🇬パチンコ依存症

パチンコ依存症とは、パチンコによって得られる精神的高揚に強く捕らわれ、自らの意思でやめることができなくなった状態を指します。精神医学的には病的賭博(とばく)という精神障害の一種のことであり、一般的にはギャンブル依存症の一種に相当します。

現在、パチンコ依存症の人は、推定100万人以上といわれています。 健全な範囲では一過性の娯楽としてパチンコを行うのに対し、パチンコ依存症では行う状態を維持するために借金までして行い続けることが問題視されます。症状が進むとパチンコでできた借金をパチンコで勝つことにより清算しようとするなど、合理的ではない考えを抱き、実行したりという問題行動が繰り返されます。

パチンコ依存症になる理由として多いのは、打っている時や勝った時の精神的高揚や快楽感が癖になってしまい、負けても負けても一時の快楽を追い求めることを繰り返し、知らぬ内に深みにはまってしまうというものです。パチンコの大当たりの時には、脳から脳内麻薬とも呼ばれる、大量のβ-エンドルフィン、ドーパミンなどの神経伝達物質が分泌されるため、一種の薬物依存に近い状態に陥ることにより、理性が弱まって大金を浪費しまうともいわれています。

パチンコ依存症になる人は、熱中しやすい性格で、自分の過ちを認めたがらないという傾向があるともいわれ、抑圧された感情をうまく吐き出せず、パチンコで発散している人も多いといわれています。

このパチンコ依存症により、若年者が勉学意欲や勤労意欲を喪失しニート化するケースや、借金をしてまでパチンコにのめり込むあまり多重債務に陥るケース、借金苦から逃れるために自殺にまで陥るケースがあります。道徳心が希薄になり、詐欺や横領などの犯罪に走るケースも散見されます。

近年では、高齢者のパチンコ依存症が増加しています。高齢者の場合、孤独や退屈を紛らわすために始めたパチンコが唯一の趣味になっていることが多く、依存症であることを自覚できていないケースが目立つとされています。

また、依存状態にある本人のみならず、家族もトラブルに巻き込まれることがあり、家庭不和から離婚に発展するケースもあります。

パチンコ依存症の結果、深刻な借金苦に陥るケースが跡を絶たないのには、日本では破産法により浪費や賭博(とばく)など射幸行為をしたことによる負債では破産が認められず、弁済の義務を放棄することができないといった事情もあります。

消費者金融の有り様と併せて社会問題視(クレサラ問題)されたことから、2005年ころから東京都遊技業協同組合などの業界団体でも、パチンコ依存症に対する注意の呼び掛けや、問題解消のためのカウンセリングの紹介といった事業が始められました。

2006年からは日本全体の業界団体である全日本遊技事業協同組合連合会でも同様の取り組みを開始しており、パチンコ依存症は治療を要する病気であるとともに、業界団体としても救済を必要とする問題と位置付けて5年間分の運営費1億円を負担、同依存症に対する研究を進めるほか、専門相談員の育成にも乗り出しています。

パチンコ依存症にならないためには、遊びの範囲内で抑えることが大切です。勝つ時もあれば負ける時もあるのがパチンコであり、負ける時のほうが圧倒的に多いのだということを認識したいものです。

近年、パチンコ業界は娯楽の多様化や、古臭いイメージによる若者離れ、高くなったギャンブル性と依存性が指摘され、ピークの参加人口からは年々減少し2007年に過去最低水準にありましたが、再び参加人口が増えつつあります。一方、市場規模は年々縮小し続け、現在過去最低水準にあります。

パチンコ店は娯楽を提供する性質のサービス業である以上、必要とする利益を差し引いた金銭が客に再分配されているにすぎません。長期的にパチンコを行うということは、それだけ当たり外れが平均化され、よほどのまぐれなどが続かない限り、客の側からすれば利益を上回る支出が出るのが必定。

パチンコに関する自己分析をし、自己の症状を認識することも大切です。パチンコ業界団体ウェブサイトなどで簡易チェックリストが用意されていますので、これを利用して自己の状態を客観的に認識することも可能です。

外出先でも現金を手にできるキャッシュカードやクレジットカードを持ち歩かないことも、パチンコ依存症にならないために有効です。パチンコ店に近付かないようにすること、何か熱中できる趣味を見付けることも効果があります。

🎾バックハンドテニス肘

テニスのバックハンドストロークの繰り返しなどで、利き腕の肘の外側に起こる障害

バックハンドテニス肘(ひじ)とは、テニスのストロークの繰り返し動作などで慢性的に衝撃がかかることによって、利き腕の肘の外側に炎症や痛みが起こる関節障害。医学的には上腕骨外側上顆(じょうわんこつがいそくじょうか)炎と呼ばれ、俗にはテニス肘とも呼ばれます。

上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。

バックハンドテニス肘は、中年以降のテニス愛好家に生じやすく、利き腕の反対側に飛んできたボールをワンバウンドで打つバックハンドストロークで、肘の親指側の突起部である上腕骨外側上顆に炎症や痛みが発生します。ボールがラケットに当たる時の衝撃が、上腕骨外側上顆への回外筋群や伸筋群の付着部に繰り返し加わることによって、微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

バックハンドテニス肘の発生頻度については、若年層で少なく、30歳代後半から50歳代に多いことがわかっています。

また、テニスに限らずゴルフなど他のスポーツや、長時間のパソコン操作などによる手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

症状としては、バックハンドストロークのたびに肘の外側に、疼痛(とうつう)が現れます。テニス以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の外側から前腕にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

この関節障害は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。しかし、テニスを始めたばかりの初心者であっても、症状を発症する可能性がないわけではありません。むしろ初心者の場合は、筋を痛めたような感覚、もしくは筋肉痛などと思い込み、痛みを抱えたままプレーを続けることで、症状を悪化させてしまうことに注意が必要となります。

男性と比べると筋力の弱い女性や、まだ体が完成していない子供にも、バックハンドテニス肘は多く発症する傾向にあります。これは、ゲーム中に強いサーブやボレーを打ちたいという思いから力みが生じて、フォームのバランスを崩し、関節に無理のあるフォームでのラリーが続くことが原因の一つになっています。

そして、スポーツ競技としては比較的長時間のゲームとなるテニス競技では、片手で軽く持てるラケットの重さも徐々にフォームの悪化を招く要因となります。

バックハンドテニス肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の外側の上腕骨外側上顆を押すと圧痛が認められ、手首を甲側に曲げる動きで肘の外側に運動痛を生じます。

また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘外側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、バックハンドテニス肘と確定診断します。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(テニスバンド)で押さえること。2つ目は、肘を伸ばし手首を曲げて筋肉を伸ばすストレッチング、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤の痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が6カ月ほどで治ると考えられます。しかし、痛みがよくならない難治性のバックハンドテニス肘では、手術を行う場合もあります。手術方法としては、伸筋腱(けん)起始部解離術、伸筋筋膜切開術、輪状靭帯(じんたい)や関節包の部分切除術、関節内の滑膜切除術などがありますが、成績にはっきりした差は認められていません。

バックハンドテニス肘は再発性が極端に高い障害で、一度発症すると数年後、もしくは数カ月後に再発してしまうことも多くみられます。再発予防も含めた予防法としては、ラケットのガットを緩めにするなどのラケットの選択や、フォームの改良、テニスで使用する部位の筋肉強化や手首の筋力強化、前腕のストレッチング、サポーターの活用、テニス後の肘のアイシングなどが挙げられます。

🇵🇬乳腺症

生理周期に同調する症状

乳腺(にゅうせん)症とは、女性ホルモンのバランスが崩れることで、乳腺に起こるさまざまな病変の総称。

30~40歳代でよく見られる良性疾患で、乳がんや乳腺炎のようにはっきりとした病気ではありません。

生理前に乳腺が張る、乳房が痛むという経験は、女性なら誰でも経験があることでしょう。乳腺症も、女性ホルモンの影響を強く受けて起こりますので、月経周期に応じて症状が変化します。すなわち、卵巣からのホルモン分泌が増える生理前になると症状が強くなり、生理が終わると自然に和らぎます。

症状は乳房のしこりや痛み、乳頭分泌など多様ですが、多くは正常な体の変化で、通常は治療の必要はありません。

20歳代の女性の乳房では、妊娠、授乳に備えて、ほどんどが乳汁を分泌する乳腺組織で占められていますが、閉経後の女性の乳房では、役割を終えた乳腺組織が脂肪組織に置き換わります。

30歳代から40歳代の女性の乳房は、その間の過渡期で、乳腺組織と脂肪組織が混じった状態にあります。また、乳腺内に増殖をしている部分と、委縮、線維化している部分が混在するようになり、大小さまざまな硬いしこりを感じるようになるのです。

同時に、20歳代の時には、乳腺や周りの組織に弾力性があって、乳腺が生理前に張って、生理が終わると元に戻る変化に対応しますが、加齢とともに、乳腺の変化を痛みとして感じるようになるのです。

乳腺症の中には、ごくまれにがんに移行しやすいタイプもあり、乳がんとの区別が重要です。症状が多様なだけに、素人判断は危険です。乳房にしこりや痛みを感じたら、まず外科医に診てもらうように。原因が不明なら、乳がんを専門とする医療機関で精密検査を受ける必要があります。

半数以上の人は薬で症状が軽減

乳房のしこりや痛みで医師の診察を受けると、乳がんの可能性も考慮し、触診、マンモグラフィー(乳房のレントゲン撮影)、超音波などで検査します。

明らかな乳腺腫瘍(しゅよう)が認められず、がんでないことを確かめた上で、2~3カ月間様子を見て、症状が生理周期と同調した場合に、乳腺症と診断されます。

痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。強い痛みが5~6カ月ほど続くようなケースでは、薬物療法が行われます。男性ホルモンの働きをする薬や、女性ホルモンの一種であるエストロゲン(卵胞ホルモン)の働きを抑える抗エストロゲン薬、鎮痛薬などの飲み薬が処方され、2~3カ月使うと効果が現れます。

薬物療法は根本的な治療法ではありませんが、半数以上の人で症状は軽減します。まれに、副作用として太ったり、肝臓に障害を起こしたり、血栓ができやすくなったりする人もいます。

乳腺症と乳がんの確実な区別が難しい場合には、針を刺して細胞を吸引し、顕微鏡で観察する検査(細胞診)や、局所麻酔をしてから乳腺の一部を切り取り、顕微鏡で調べる検査(乳房生検)などが行われます。

顕微鏡で見ると、増殖性病変として腺症、乳頭腫症などが認められ、委縮性病変としては線維症、嚢胞(のうほう)症、アポクリン化生などが認められます。前者の増殖性病変が認められた場合は、乳がん発症のリスクが高くなりますので、専門医の診察を受けて精密検査を行うことになります。

🇰🇮乳腺線維腺腫

思春期から20歳代の女性に多くみられる乳房のしこり

乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)とは、女性の乳房内の乳腺が増殖することで形成される良性のしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)。

乳腺の分泌腺が増殖するタイプ、乳腺周囲の線維組織が増殖するタイプ、両者が混在しているタイプとがあります。

はっきりとした原因はまだわかっていないのですが、思春期以降に発症することが多いので、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが何らかの発症原因になっていると考えられます。思春期に小さな線維腺腫が形成され、次第に増大して20歳前後にはっきりと触れる腫瘤として自覚されることが多いようです。

線維腺腫の発育速度には個人差が大きいために、症状を自覚する年齢も10歳代後半から40歳前後までと幅広くなっています。また、片側に多発することも、両側に発症することもあります。

乳がんと同様に、痛みを伴わないしこり、すなわち乳房腫瘤として発症します。乳がんと比べれば軟らかく、弾力性に富むことが多いといわれていますが、線維腺腫が乳がんに進行することはほとんどありません。

しこりの大きさは、小豆大からうずらの卵大のことが多いものの、時には鶏卵大になることもあります。形は、球状や卵形が多く、時にはしこりの縁がくびれたような切れ込みになっていることもあります。

しこりの表面は滑らかで、普通の消しゴムぐらいの硬さです。しこりと周囲との境界がはっきりしていて、触るとしこりが乳腺の中でコロコロと動くのが特徴です。

しこりは、1個だけでなく、いくつもできることがあります。押しても痛みはなく、しこりに触れて、偶然、気が付くことが多いようです。

経過を観察すると、しこりの大きさは多少増大しますが、時間の経過とともに際限なく増大することはなく、急速に増大することもありません。大多数は、閉経期をすぎると自然退縮します。

しこりに気が付き、母親など近い家族に複数の乳がんの経験者がいる場合は、婦人科、乳腺科、産婦人科を受診し、念のために乳がんなどの悪性疾患ではないか確認することが勧められます。

乳腺線維腺腫の検査と診断と治療

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による診断では、視診、触診、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。

若い女性は乳腺の密度が濃いため、マンモグラフィーでは診断しにくいことが多く、超音波検査のほうが腫瘤の特徴を映し出すことができます。

鑑別診断で重要なのは、限局性の乳がんです。厳密には触診だけで区別することは困難で、マンモグラフィーや超音波検査でも区別が難しいことがあるので、乳房のしこりに針を刺し、しこりの細胞を微量採取して病理学的に細胞を調べる穿刺(せんし)細胞診や、局所麻酔をしてからしこりの一部を切り取り、顕微鏡で調べる針生検を行うことがあります。

婦人科、乳腺科、産婦人科の医師による治療では、小さなしこりの場合には、穿刺細胞診などで良性の腫瘤であることを確認し、その後、年1、2回の定期な診察で、経過を観察していきます。

明らかに美容上の問題となるほど大きなしこりの場合や、経過を観察して急速に大きくなった場合には、手術をして、しこりを切除することもあります。

手術は、局所麻酔をして乳房の皮膚を数センチ切開し、しこりを切除して取り出すだけですので、外来で受けられます。手術により、乳房に変形が残ることはありません。

🇰🇮乳腺嚢胞

乳腺から分泌された液体が乳管にたまり、袋状になる状態

乳腺嚢胞(にゅうせんのうほう)とは、女性の乳房全体に張り巡らされ、乳腺で作られた母乳を乳頭へ運ぶ管である乳管の中に分泌液がたまって袋のような状態になり、乳房のしこりとして認められる疾患。乳腺嚢腫(のうしゅ)とも呼ばれます。

乳腺症の一つのタイプで、厳密には疾患ではなく、加齢やそのほかの要因によって起こる良性のしこりです。30歳~40歳代の女性に多くみられ、閉経して60歳くらいになるとほとんどみられなくなります。

生理周期に合わせて卵巣から分泌される女性ホルモンである卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で、乳腺は拡張と増殖と委縮を繰り返しますが、これが何年も続くことで乳房に病変が生じることがあります。その一つが乳腺嚢胞であり、加齢によって生じる自然な変化ともいえます。

乳房の両側、または片側に、1個から複数個のしこりができます。しこりの大きさはさまざまで、数ミリ程度のものもあれば10センチ以上のものもあります。しこりは、乳腺から分泌された液体が乳管の中の一カ所にたまり、その部分が袋状になって膨らんだ状態のため、乳房に触ると丸くて、押すと軟らかい感じがします。ツルツルしていて凹凸はないことが多く、痛みもありません。

生理前や排卵の時は卵胞ホルモン(エストロゲン)の影響で、しこりが大きくなったりすることもあります。乳管の中にたまる分泌液が多くなると、膨満して痛みを感じることもあります。

自覚症状があまりないので、小さなしこりの場合は見落とされることも多く、大きくなって初めてしこりがあることに気付く場合も少なくありません。乳がん検診を受けた際に、乳腺嚢胞があると指摘された場合は、乳腺科、乳腺外科などを1年に1回は受診し、検査をしてもらうことが勧められます。

受診して良性のしこりと診断されれば、放置しておいても問題はありません。乳腺嚢胞はがんに移行することがほとんどないためですが、まれに、嚢胞内の壁にがんが潜んでいる可能性があります。これを嚢胞内乳がんと呼び、嚢胞内に分泌液をためながらがん細胞が増殖し、しこりが大きくなっていきます。

嚢胞内乳がんの発見の遅れにつながらないためにも、定期的に受診し、検査を受けることが大切です。

また、1カ月に1回は、入浴の際に時々乳房を手のひらで洗うなど、自己触診することが勧められます。具体的には、乳房を手の指の腹で触り、しこりの有無をチェックします。指をそろえて、指の腹全体で乳房全体を円を描くように触ります。乳房の内側と外側をていねいにさすってみましょう。調べる乳房のほうの腕を下げたポーズと腕を上げたポーズで、左右両方の乳房をチェックします。

自己触診で新しくしこりを発見し、自然に消えない場合は、次の検査まで待たずに受診することが勧められます。

乳腺嚢胞の検査と診断と治療

乳腺科、乳腺外科などの医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、乳管内の分泌液の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、超音波(エコー)検査などを行います。

乳腺科、乳腺外科などの医師による治療では、超音波(エコー)検査によって良性の乳腺嚢胞と診断されれば、正常な乳腺とほぼ変わらないため放置しておいても問題はなく、経過観察します。小さなしこりの場合は自然消滅することも多いので、しばらく経過をみた結果で治療が必要ない場合もあります。

しこりが大きい、または複数個あって気になる場合は、細い針を刺して乳管内の分泌物を吸引することもあります。ただし、吸引していったんしこりがなくなっても、再び乳腺から分泌された液体が乳管の中にたまったり、違う個所の乳管にたまったりすることもあります。分泌液を吸引した後もしこりが残っていたり、12週間以内に再発した場合は、がんの可能性もあります。

また、細い針で乳管内の分泌液を吸引した際に、液体が茶褐色をしていたり、血液が混ざっている場合も、がんの可能性があるため分泌液にがん細胞が含まれていないか検査をします。がん細胞が見付かった場合は、手術によってしこりを切除します。

🟥アフリカ連合、エムポックス緊急宣言終了 新規感染者数減少で拡大抑止

 アフリカ連合(AU)の疾病対策センター(CDC)は23日までに、エムポックス(サル痘)の拡大を受けて2024年8月に出した緊急事態宣言を終了した。22日付。2025年前半から後半にかけて新規感染者数の減少傾向が続き、拡大を抑止できたためとしている。  アフリカでは2024年に...