2022/08/18

🇲🇻麦粒腫(ものもらい)

まぶたの分泌腺に起こる急性の化膿性炎

<麦粒腫(ばくりゅうしゅ)とは、まぶたの縁などが赤くはれて、痛む急性の化膿(かのう)性炎症。俗称で、ものもらいとも呼ばれます。

原因は、主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染です。まぶたの表面についている細菌が、まぶたの分泌腺(せん)である皮脂腺、瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)、アポクリン腺に入り、感染して化膿が生じます。

まつげの根元にある皮脂腺や、汗を出すアポクリン腺に感染した場合を外麦粒腫、特殊な皮脂腺の一つである瞼板腺(マイボーム腺)に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。

まぶたの不衛生、コンタクトレンズの汚れ、目をこする行為などが、細菌感染を引き起こす要因として挙げられます。また、風邪と同様に、季節の変わり目、寝不足や体調不良で疲れがたまっている時に、生じやすい性質があります。

初めは、まぶたに局所的な赤みが出現して、はれ、しばしば軽度の痛み、かゆみを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、はれ、痛みが強くなり、熱を持ったりすることもあります。まぶたの内側にできる内麦粒腫では、かなり痛みがありますが、まぶたの外側にできる外麦粒腫では、まばたきをした時に異物感がある程度です。

化膿が進むと、はれた部分が自然に破れて、うみが出ることがあります。うみが出てしまえば、その後症状は回復に向かい、多くは自然に治癒します。しかし、うみがたまって大きくなった時には、切開してうみを出す治療が必要になることも。

まれに、眼窩蜂窩織(がんかほうかしき)炎、敗血症など重い疾患を引き起こすことがあります。ものもらいの局所をいじらないようにして安静にし、早めに治療を受けることが大切となります。

熱が出た時は、入院治療が必要なこともあります。繰り返して再発する時は、ほかに糖尿病や免疫疾患がないかを調べる必要があります。

なお、「ものもらい」という俗称から伝染病のような印象を受けますが、普通に皮膚表面に存在する細菌によって起こるため、他人に伝染することはありません。

「ものもらい」は関東などの俗称で、大阪などにおける「めばちこ」、京都などにおける「めいぼ」「めぼ」、あるいは「めばち」、「めこじき」、「めかんじん」、「めんぼう」など、地方によってさまざまな呼び方をされています。

「ものもらい」、「めこじき」、「めかんじん」の呼び名は、かつての日本に他人から物を恵んでもらうと、この疾患が治癒するという迷信が存在したことに由来します。「めばちこ」は、この疾患の発症者が目をぱちぱちさせる様子に由来するのではないか、と推測されています。

麦粒腫の検査と診断と治療

麦粒腫(ものもらい)の多くは、そのまま安静にしておけば自然に治癒します。しかし、「ものもらいができたな」と思った時には、放置せずに薬剤師や眼科医に早めに相談をするのがお勧めです。「そのうちに」と放置しておいて、はれや、かゆみがひどくなると面倒です。

特に、化膿が悪化した場合には、まぶたの切開によってうみの排出を必要とすることがあるので、はれがひどい場合には、眼科を受診します。うみを出すために針などでつつくと、かえって悪化する原因になるので、注意して下さい。

医師による治療は、抗生物質が入った点眼液や眼軟膏(なんこう)の処方が主で、場合により抗生物質の飲み薬を服用することもあります。なお、麦粒腫用の市販薬も、販売されています。

治療を開始して2~3日で症状が軽くなり、4~5日すると治るのが普通です。この時期は、かゆくても、まぶたを触らないようにします。コンタクトレンズの装用も控えるようにします。かゆみが強い時は、目の周りを冷やすと少し落ち着きます。

手が汚かったり、栄養不足など、環境によっては再発することもあります。家庭でも、患部の清潔とバランスの取れた食事を心掛けます。

日常の麦粒腫予防対策としては、前髪が目に掛からないようにする、コンタクトレンズを不潔な指で脱着しない、目の周りをしっかりと化粧しない、花粉症でかゆくてもあまり目をこすらない、などが挙げられます。

🇲🇻挟まり症候群

スポーツ障害や老化で、肩関節の腱板に断裂とはれが起こった状態などの総称

挟まり症候群とは、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体などに、断裂とはれが起こった状態などの総称。インピンジメント症候群、ぶつかり症候群とも呼ばれます。

挟まり症候群は、ペンキ塗り、建築作業などの肉体労働やスポーツによって長年上腕を酷使してきた人達に多くみられるとされていて、腱板の断裂とはれは、肩甲骨と上腕骨がぶつかり、2つの骨の間に腱板が挟まることで発生します。

肩甲骨と上腕骨で構成される肩関節は、人間の体の中で最も可動域が広く、ある程度の緩みがあるため脱臼(だっきゅう)が多いのが特徴です。肩関節の中には、上腕骨頭が肩関節の中でブラブラしないように肩甲骨に押し付ける役割の4つの小さな筋肉、すなわち前方から肩甲下筋、棘上(きょくじょう)筋、棘下筋、小円筋があります。これらの筋肉が上腕骨頭に付く部分の腱は、それぞれ境目がわからないように板状に付着しているために腱板と呼ばれます。腱板は、回旋筋腱板、回旋腱板、英語のカタカナ表記でローテーターカフとも呼ばれます。

この腱板と、腱板に隣接する滑液包という少量の滑液を含む袋状の組織は、肩関節のさまざまな運動により圧迫、牽引(けんいん)、摩擦などの刺激を受けており、加齢とともに変性し、腱板と滑液包に炎症を生じやすくなります。また、腱板は40歳ごろから強度が低下し、断裂の危険性が高まります。重い物を持ったり、転倒による肩の打撲など軽微な外力が加わって断裂する場合もありますし、若年者ではスポーツ障害としてみられることもあります。

特に、肩先の骨である肩峰および上腕骨頭に挟まれた棘上筋の腱は、肩関節の挙上時には肩峰と烏口(うこう)肩峰靭帯(じんたい)によって圧迫を受けています。これらの要因により退行変性を起こしやすく、腱板の中では最も断裂を起こしやすいところです。

スポーツ障害としての挟まり症候群は、野球の投球、ウエートリフティング、ラケットでボールをサーブするテニス、自由形、バタフライ、背泳ぎといった水泳など、腕を頭よりも高く上げる動作を繰り返し行うスポーツが原因で起こります。

腕を頭より高く上げる動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩の関節や腱の一部と擦れ合うため、腱板の線維に微小な断裂を生じます。痛みがあってもその動作を続ければ、腱板が断裂してしまったり、腱板の付着部位の骨がはがれてしまうことがあります。

腕を頭より高く上げる動作や背中から回す動作を繰り返すと、上腕骨の上端が肩関節の反対側の骨である肩甲骨と擦れ合い、炎症を起こします。スポーツ選手では、激しい動きの際に肩を安定化させるインナーマッスルの機能が低下していると、挟まり症候群が発生します。加齢により肩甲骨の動きが悪くなることも一因。

挟まり症候群の症状としては、肩が痛む、肩が上がらない、ある角度で痛みがあるなど、自然軽快しにくい特徴があります。肩の痛みは当初、腕を頭よりも高く上げたり、そこから前へ強く振り出す動作の際にだけ生じます。後になると、握手のため腕を前へ動かしただけでも痛むようになります。

通常は、物を前方へ押す動作をすると痛みますが、物を体の方に引き寄せる動作では痛みはありません。炎症を起こした肩は、特に夜間などに痛むことがあり、眠りが妨げられます。また、腕を肩よりも高く上げた状態で肩峰を抑えると、痛みます。

手が後ろに回らなくなる、いわゆる四十肩、五十肩と診断され、長い間治らない人の中に、挟まり症候群が見逃されていることがあります。

挟まり症候群の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、MRI検査が有用です。また、いくつかの方向に腕を動かしてみて、特定の動き、特に腕を肩よりも高く上げる動作で痛みやピリピリ感を伴うことで、挟まり症候群と確定します。

スポーツなどによる疲労性のものでは、肩の痛み、特に運動時痛を伴います。広範囲断裂では、布団の上げ下ろしや洗濯物を干すなどの挙上障害などがあります。外傷によるものでは、受傷時に突然肩の挙上が不能となり、同時に肩関節痛を感じます。断裂が小さいと、挙上は除々に可能となる場合もあります。

整形外科の医師による治療では、腱板や滑液包に負担をかけている肉体労働やスポーツを控えて肩を休め、肩の筋肉を強化します。安静時や夜間の痛みが強い場合には、内服や外用の消炎鎮痛剤、関節内注射により和らげます。物を前方へ押しやる動作や、肘(ひじ)を肩より高く上げる動作を伴う運動は、すべて避けます。

肩の筋肉強化では、ゴムチューブによるカフ(腱板)エクササイズを行い、インナーマッスルを鍛え、肩の腱板のバランスを回復させます。カフエクササイズは肩関節の疾患において一般的な訓練となっており、ゴムチューブによる軽い抵抗、もしくは徒手による無抵抗にて、外旋や肩甲骨面上の外転などを行って、腱板の筋活動を向上させます。強すぎる抵抗は大胸筋や三角筋に力が入ってしまい、軽い抵抗に反応する腱板の働きを阻害してしまうので、十分注意する必要があります。

カフエクササイズでは、腕を体側に付けて、前腕を床と平行にしてゴムバンドを持ちます。肘を支点としてゴムバンドを引きながら、この腕を前方向、後ろ方向、横方向(手が体から離れる向きと、腕を胸の前に引き寄せる向き)に動かします。この運動は、肩の腱板のバランスを回復させ、腕を頭よりも高く上げる動きを含む動作中に上腕骨が肩甲骨にぶつからず、2つの骨の間に腱板が挟まらないようにする働きがあります。

損傷が特に重度な場合は手術も行われ、腱板が完全に断裂していたり、1年たっても完治しない場合が対象となります。手術では腱板が挟まらずに動かせるように、肩の骨から余分な部分を切除します。同時に、腱板の修復も行います。

🇲🇻はしか

はしかは麻疹(ましん)ともいい、麻疹ウイルスによって引き起こされる小児期に多い急性の感染症として知られていますが、近年は、10代、20代の若年者での感染が多く見られ、社会的にも関心を集めています。

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で、その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100パーセント発症します。一度感染して発症すると、一生免疫が持続するといわれています。

毎年、春から初夏にかけて流行が見られ、感染してから約10日後に発熱や、せき、鼻水といった風邪のような症状が現れて、2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と赤い発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると見なされています。

かつては小児のうちに、はしかに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。近年は2001年にあった以降、大きな流行がないことから、成人になるまで発症したことがない場合や、小児の時に予防接種をしたという場合でも、大人になって感染する例が目立ってきました。

ワクチンの予防接種が、有効です。また、はしかの患者に接触した場合、72時間以内にワクチンの予防接種をすることも、効果的です。接触後5、6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えられる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、医師とご相談ください。

🇱🇰橋本病(慢性甲状腺炎)

■甲状腺の病気の一つで、女性に多い

橋本病は、喉頭(こうとう)の前下部にある甲状腺(こうじょうせん)に慢性の炎症が起きている病気で、慢性甲状腺炎とも呼ばれている自己免疫性疾患です。九州大学の橋本 策(はるか)博士が明治45年、ドイツの医学誌に初めて発表した病気で、世界的にも有名なものです。

内分泌腺の一つである甲状腺に、慢性のリンパ球の浸潤による炎症があるために、甲状腺が腫大(しゅだい)したり、甲状腺機能に異常が起こります。男性の20倍と女性のほうが圧倒的に多くかかり、よく調べると、女性の10~20人に1人の割合でみられるほど、頻度の高い病気だということがわかってきました。

例外はありますが、橋本病の患者は大なり小なり、甲状腺がはれています。ただし、この内分泌腺の一つである甲状腺のはれが、首や喉(のど)に何か症状を起こすというようなことはありません。まれに甲状腺のはれがなく、委縮している場合もあります。

橋本病では、甲状腺のホルモン状態の違いから次の3つのケースに分けられ、甲状腺ホルモンの過不足があるケースにだけ症状がみられます。

●甲状腺ホルモン濃度がちょうどよいケース(甲状腺機能正常)

橋本病であっても、大多数の人は甲状腺ホルモンに過不足はありません。この場合は、橋本病が体に影響するということは全くありませんので、何か症状があっても甲状腺とは関係ありません。従って、治療の必要はありません。

しかしながら、将来、甲状腺の働きが低下して、ホルモンが不足することがあります。また、まれですが一時、甲状腺ホルモンが過剰になることもあります。

●甲状腺ホルモンが不足しているケース(甲状腺機能低下症)

甲状腺ホルモンが減少する病気の代表が、橋本病です。橋本病も甲状腺臓器特異性自己免疫疾患の一つで、体質の変化により、甲状腺を異物と見なして甲状腺に対する自己抗体(抗サイログロブリン抗体、抗マイクロゾーム抗体)ができます。

この抗体、すなわち浸潤したリンパ球が甲状腺を破壊していくため、甲状腺ホルモンが減少し、徐々に甲状腺機能低下症になっていきます。痛みもなく、本人の知らないうちに、少しずつ甲状腺が腫大します。

甲状腺ホルモンは体の新陳代謝に必要なホルモンですので、不足が著しかったり長く続いたりすると、下のような症状が現れます。自覚症状はないこともありますが、コレステロールの値が高くなったり、血圧が上がったり、心臓や肝臓の働きが悪くなることもあります。

 *顔や手足がむくむ   *食べないわりに体重が増える   *気力が低下する   *動作が鈍くなる   *皮膚が乾燥する   *声がかすれる   *寒がりになる   *始終、眠い   *毛髪が薄くなる   *物忘れがひどくなる   *ろれつが回らなくなる   *その他(便秘、貧血、月経過多)

これらの症状は他の原因でも起こりますから、こうした症状があるからといって甲状腺のホルモンが足りないとは限りません。

また、甲状腺機能低下症であっても、適量の甲状腺ホルモンを服用して血液のホルモン濃度が正常になっている場合は、何か症状があれば、他のことが原因です。

なお、「甲状腺機能低下症になると回復しない」といわれていましたが、数カ月のうちによくなることも少なくありません。

●甲状腺ホルモンが一時的に過剰になるケース(無痛性甲状腺炎)

甲状腺にたくわえられている甲状腺ホルモンが血液中にもれ出て、血中濃度が高くなることがあります。ふだん、甲状腺の働きが正常な人に、比較的急に起こります。産後数カ月以内に、ことによくみられます。バセドウ病(甲状腺機能亢進症)と間違われることもあります。

このケースは炎症が原因ですが、痛みがないので「無痛性甲状腺炎」といいます。長くても4カ月以内には自然に治りますが、その後、逆に甲状腺ホルモンが不足して、甲状腺のはれが大きくなることがあります。これも大抵は数カ月で治りますが、中には長く続いて甲状腺ホルモン剤の内服治療が必要になる人もあります。

●その他のケース

非常にまれですが、途中でバセドウ病に変化することがあります。血縁にバセドウ病の人がいる場合は、他の人よりなりやすい傾向があります。

悪性リンパ腫の中には甲状腺から発生するものがあり、橋本病の人は一般の人よりこうしたことが起こりやすいのですが、甲状腺から発生するものは治療に大変よく反応し、治りやすいという特徴があります。

■診断と治療法

●血液検査や細胞診

触診や超音波検査で、びまん性甲状腺腫を確認します。血液検査では、甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗体と抗甲状腺ペルオキシダーゼ抗体の2つが陽性になります。

自己抗体が陰性の人でも、甲状腺の生検や細胞診でリンパ球浸潤を認めれば診断が確定されます。甲状腺機能(FT3・FT4・TSH)は正常の人が多いですが、低下症になっている例もあります。

●甲状腺ホルモン薬の服用

橋本病患者で甲状腺の腫大が小さく、甲状腺機能も正常の場合は、治療は必要ありません。

甲状腺機能の低下がある場合には、不足している甲状腺ホルモン薬(チラージンS錠)を毎日内服します。はれも小さくなります。

甲状腺の腫大がひどい場合は、手術で甲状腺を切除する場合もあります。

●日常生活と食事

甲状腺ホルモンに過不足がなければ、生活上、留意することはありません。

食事も、ふだんどおりでけっこうです。海草類も普通に食べてかまいませんが、昆布を毎日食べたり、ヨードを含むうがい薬を毎日何度も使うと、甲状腺機能が低下することがあります。

海草に多く含まれるヨードは甲状腺ホルモンの原料ですが、橋本病の人の一部にヨードを取り過ぎると甲状腺ホルモンが作れなくなる人がいるからです。なお、甲状腺ホルモンを服用している人は、問題ありません。

🇱🇰破傷風

破傷風菌が傷口などから入って感染し、筋肉のけいれんを起こす疾患

破傷風とは、破傷風菌が傷口などから入って感染し、菌が作り出す毒素が神経を侵し、強い筋肉のけいれんを起こす疾患。

この破傷風菌は芽胞という硬い膜を有する細菌で、芽胞は乾燥状態では十数年生存可能で、抵抗力の強い性質を有します。酸素のない状態を好む嫌気性菌であり、地表から数センチ付近の世界中の土壌に広く分布しているので、砂粒や泥のついた古くぎ、木片などによる傷から侵入してきます。皮下などの組織で増殖して、放出する毒素は、人の神経の一部に接合して神経の興奮を持続的に引き起こすため、全身や顔面の筋肉のけいれんを引き起こします。

一般的には傷口から感染しますが、まれに出産時の不適切な臍帯(さいたい)処理により感染し、新生児破傷風あるいは妊婦の産褥(さんじょく)性破傷風として発症するケースや、消化管などの手術時に感染するケースもあります。

傷口から感染する破傷風は、特にアフリカ、東南アジア、中南米などの途上国で、不適切な傷の手当や予防ワクチンの不足などが原因となって、多くの発症者が出ています。日本では、1953年から破傷風トキソイドワクチンの任意接種が開始され、現在では三種混合ワクチン(ジフテリア、百日ぜき、破傷風)と二種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)の定期接種が実施されていますので、1950年ころは年間数千人いた発症者は年間50〜100人程度にまで減少しています。

現在の発症者は、予防接種を受けている若年層では少なく、予防接種を受けていない人や、予防接種による免疫が消失した高齢者で多くなっています。前回の接種から10年以上経過している人には、1回の追加接種が勧められます。

潜伏期間は3日〜3週間で、通常10日前後で発症します。一般に頭部、顔面の傷で起こる場合は、下肢の傷に比べて潜伏期が短い傾向があります。

症状は頭痛、全身倦怠(けんたい)感で始まり、やがて口が開けにくい、首筋が張る、寝汗をかくなどの症状が現れます。次いで口が開かなくなり、手足にもこの硬直感が広がります。そして顔面の筋肉がけいれんして、泣き笑いのような表情である痙笑(けいしょう)を示します。

けいれんが首や背中の筋肉に及ぶと、体が後ろへ弓なりに曲がる後弓反張(こうきゅうはんちょう)を起こします。筋肉のけいれんはわずかな刺激によって誘発され、頻回に起こると心臓が衰弱します。また、呼吸筋のけいれんが起こると、呼吸ができなくなって危険です。

発症後の治療は難しく、死亡率は一般に30パーセント以上で、高齢者ほど重くなります。また、一般的に感染から発症までの時間が短いほど、開口障害から全身けいれんまでの時間が短いほど、高い死亡率を示します。

破傷風の検査と診断と治療

破傷風は治療が遅れると全身けいれんを引き起こし死に至る感染症ですので、すぐに病院の救急部門、あるいは外科、内科を受診します。全身的な筋肉のけいれんが認められる場合は、救急車を呼びます。開口障害や痙笑の症状から、歯科や耳鼻科を受診するケースが多く、顎(がく)関節症などと誤診されることもありますので、注意が必要です。

診断は症状からつけられるもので、傷口からの破傷風菌の検出によるものは30パーセントにすぎません。

治療では、速やかに破傷風ヒト免疫グロブリン(抗毒素血清)を注射して毒素を中和し、ペニシリンを注射して残っている破傷風菌を減らします。さらに、傷口の消毒、壊死(えし)組織の切除、砂粒や金属片などの異物の除去、気道確保、抗けいれん剤の投与を行います。呼吸筋のけいれんにより呼吸ができない場合は、静かで暗い病室に入れて酸素吸入をします。なるべく強化看護病棟(ICU)での呼吸、血圧の管理が望まれます。神経に結合した毒素の作用が低下すると、回復に向かいます。

予防、あるいは外傷に際しての破傷風予防には、破傷風トキソイドワクチンによる予防接種をしますが、外傷の場合は破傷風免疫グロブリンの投与も考慮されます。

発展途上国など海外の流行地に滞在する際には、けがをしないように心掛けます。裸足で川遊びなどをしたり、誤って物を踏んだ時に足に傷を負ったり、運動中や交通事故、動物にかまれてけがを負った時などに、感染が多くみられるからです。万一、けがをした場合は、まず水で傷口を洗い流し消毒します。次いで、破傷風菌は空気に触れない状態を好む嫌気性菌であり、傷口がふさがると増殖しますので、不用意に傷を閉じたりせずに、早めに医師に相談します。

発展途上国の不衛生な医療施設では、抜歯や出産、手術などの医療行為で感染することもあります。長期に滞在する場合は、安心できる医療機関を確認しておきます。

🇱🇰バセドウ病

のどの下にある甲状腺の機能の高まりにより、甲状腺が膨れる疾患

バセドウ病とは、のどの下にある甲状腺(こうじょうせん)の機能の高まりにより、甲状腺が膨れる病気です。甲状腺機能亢進(こうしん)症の代表的な病気で、中年女性に多く、最近では若い女性にも増えてきています。バセドウ病はドイツ語圏での呼び名、英語圏ではグレイヴズ病というのが通常。

病にかかると、甲状腺ホルモンを必要な量より大量に作りすぎて、血液中に多く流れ、全身の新陳代謝を活発にさせるため、さまざまな症状が現れます。動悸(どうき)がしたり、異常に汗が出たり、手が震えたり、下痢をしたりします。眼球が飛び出して、やせてくる場合は、容姿が気になります。

イライラと落ち着かず、興奮しやすく、病的な不安や妄想を抱いたりすることもあるため、精神病と間違われることもあります。「びっくりバセドウ」の異名があるように、もともと情緒不安定で、感受性の強い人が精神的なショックを受けて、発症することがあります。

医師による治療では、初めは抗甲状腺剤を服用しますが、完治には長い期間を要します。薬の長期服用が困難な場合は、個人差や病気の状態などにより、手術(甲状腺亜全摘術)や、アイソトープ治療(放射性ヨード内服)が選択されます。

どの治療法を選ぶにしても、ポイントは甲状腺ホルモンを正常な量にコントロールすることです。ホルモン量が正常になれば、健康な人と変わらない生活ができます。

🟩WHO、サル痘の新名称公募 動物への偏見を避けるため変更検討

 世界保健機関(WHO)は17日までに、世界中で感染拡大が続いているウイルス感染症「サル痘」の新名称の公募を始めました。WHOは動物への偏見を避けるために名称変更を検討。報道官は動物福祉などの観点から、病名が不必要な悪影響や攻撃を引き起こすのを避けなければならないとしています。

 サル痘はウイルスが1958年にデンマークで実験動物のサルから発見され命名されたものの、自然界の宿主はアフリカに生息する齧歯(げっし)類とみられています。WHOは2015年、偏見を避けるため動物や国・地域などの固有名詞を病名に付さないという指針を出しています。

 サル痘は今年5月以降、従来継続的に流行していたアフリカ中西部以外で、感染が確認される例が続出。3万1000人を超す感染者と12人の死者が出ています。WHOは7月23日に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」に相当すると宣言。WHOとして最高度の警告を発することで、各国に警戒を訴えています。

 ブラジルでは8月に入って、サンパウロ州の自然保護区で、サルが故意に暴行を受けたり、毒を盛られたりする事件が報告されています。救助隊や活動家は、周辺地域でサル痘感染者が3人確認されたこととの関連を疑っています。

 ウイルスは動物から人間に感染するものの、WHOの専門家は、最近の感染拡大は人間同士の濃厚接触が原因とみています。

 WHOのファデラ・シャイーブ報道官は、「汚名を着せないような名前を強く望んでいる」と述べました。

 2022年8月18日(木)

🟥アフリカ連合、エムポックス緊急宣言終了 新規感染者数減少で拡大抑止

 アフリカ連合(AU)の疾病対策センター(CDC)は23日までに、エムポックス(サル痘)の拡大を受けて2024年8月に出した緊急事態宣言を終了した。22日付。2025年前半から後半にかけて新規感染者数の減少傾向が続き、拡大を抑止できたためとしている。  アフリカでは2024年に...