2022/08/22

🇰🇾生理的老人性難聴

加齢に伴って進行する難聴で、両耳で大きな違いなく進行

生理的老人性難聴とは、加齢に伴って進行する難聴。生理的現象の一つとして起こってくる聴力の低下であり、老人性難聴とも呼ばれます。

人間の聴力は20歳くらいが最も鋭敏であり、その後は次第に低下し、20歳代から30歳代で聴力の老化が始まるといわれています。耳の聞こえが悪くなってきたと自覚するのは50歳くらいで、それまでは聴力の低下を気付くことなく過ごしています。これを無自覚性の難聴といいます。

通常、50歳を超えると聴力が急激に低下し、60歳以上になると日常会話の面で不便になり始めます。しかし、生理的老人性難聴の進行状況は個人差が大きいので、40歳代で聞き取りを補助する補聴器が必要になる人もいれば、80歳代を超えてもほとんど聴力が低下しない人もいます。

若いころから日常的に大きな音で音楽を聞き続けていたり、大きな騒音を日常的に感じていると、早く生理的老人性難聴になってしまいがちといわれています。

生理的老人性難聴による聴力の低下は、4000ヘルツを中心とした高音域から発生し、徐々に500〜2000ヘルツの会話音域、100ヘルツ以下の低音域へと広がっていきます。従って、早期には難聴の自覚がなく、耳鳴りだけを感じる場合があります。高音域ほど聞き取りにくいため、電話のベルや、ドアのチャイムが聞こえにくくなります。

会話音域の聞こえが悪くなり、日常会話に支障が出るようになって、初めて難聴に気付きます。ただ単に日常会話が聞き取りにくくなるだけでなく、会話は聞こえても何をいっているかがわからず、聞き間違いや聞き返しが多いなどという状態が、しばしばみられます。これは言葉を聞き取る能力である語音弁別能の低下のために生じ、生理的老人性難聴の特徴です。

一方の耳だけではなく、両側の耳で大きな違いがなく進行していくのが、一般的です。男性は女性よりも、難聴の程度が高くなる傾向があります。

加齢に伴い、内耳の蝸牛(かぎゅう)にあって音を感じ取る有毛細胞という感覚細胞が委縮したり、数が減少したり、内耳から脳へと音を伝える神経経路や中枢神経系に障害が現れたり、内耳の蝸牛の血管の障害が起こったり、内耳内での音の伝達が悪くなったりします。これらの原因が一つまたは複数組み合わされて、音が聞こえにくくなり、言葉を聞き取る能力も悪くなる生理的老人性難聴が発生すると考えられています。

体質も関係し、内耳の血流が悪くなるような動脈硬化、腎臓(じんぞう)病、糖尿病といった慢性の疾患は、生理的老人性難聴を進行させる可能性があります。

加齢に伴って聴力が低下したと自覚したら、早い段階で耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。難聴になると周囲の情報が耳から入ってくることが少なくなる結果として、脳まで老化させてしまう危険性もあります。あまりにも聞き取りづらいようなら、生活環境なども考えて自身に合った補聴器の装着を考えなくてはなりません。

なお、難聴の程度に応じて身体障害者福祉法による補償、例えば補聴器の購入費補助が行われています。申請書類の記入は、耳鼻咽喉科で行われています。

生理的老人性難聴の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼓膜の診察と純音聴力検査、語音明瞭度検査を行い、生活環境を考慮して補聴器を必要とするかどうかを判断します。聴力検査では、高音域が聞こえにくくなることから始まる感音難聴を示し、進行すると中低音域の聴力も低下します。

難聴の度合は一般的に、500〜2000ヘルツの会話音域の聴力低下に応じて、平均聴力レベルが20デシベルまでを、ささやき声もよく聞こえる正常聴力として、40デシベルまでを、小声が聞きにくい軽度難聴、70デシベルまでを、普通の声が聞きにくい中度難聴、70デシベル以上を、大きな声でも聞きにくい高度難聴、90デシベル以上を、耳元での大きな声でも聞こえない重度難聴、100デシベル以上を、通常の音は聞こえない聾(ろう)に分けます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、聴力をよくする決め手となる治療法はありません。コミュニケーション障害への対策として、補聴器の装用が勧められますが、本人に難聴の自覚があまりなく、使用されないことも多いようです。

補聴器は、ポケットに本体を入れる箱形、耳たぶにかける耳掛け型、耳の穴に入れてほとんど外からはわからない耳穴型などがあります。使用時にピーピーという音が発生するハウリングが起こることがなく、自分で簡単に操作できるものが勧められます。ハウリング予防のためには、個人の耳の形に合わせたイヤーモールドと呼ばれる耳栓を作るのが有効です。

残念ながら、補聴器を使用したとしても完全に元通りの聴力が戻ってくるとは限らず、依然として聞き取りづらい状態が続くこともあります。補聴器を有効に使用するためには、ある程度の聴覚訓練が必要です。

老化を防ぐために、日常の健康管理と精神安定に気を付けることはいうまでもありませんが、耳に悪影響を与える騒音や薬剤の使用は、できるだけ避けるようにします。

🇰🇾清涼飲料水ケトーシス

継続して大量に清涼飲料水を摂取することで、血糖値が上昇し、倦怠感や昏睡などが起こる疾患

清涼飲料水ケトーシスとは、ペットボトルに入った清涼飲料水やスポーツドリンクなどを大量に飲み続けることによって、糖尿病の悪化した状態が起こる急性疾患。この清涼飲料水ケトーシスは軽症の場合を指し、重症の場合は清涼飲料水ケトアシドーシスと呼びます。俗には、ペットボトル症候群と呼ばれます。

継続して大量に、糖分の多いジュースなどの清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、清涼飲料水ケトーシスが発症します。

症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠(けんたい)感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡(こんすい)に陥るケースもあります。

発症者の多くは10~30歳代の男性ですが、高齢者にも起こり得ます。発症する人には血縁者に糖尿病のある場合が多く、本人も糖尿病の遺伝素因を持っていると考えられます。 また、特に発症しやすいのは肥満体型の人で、この糖尿病予備軍と呼ばれる人はインスリンの働きが悪く、よりリスクが高まります。

もともと糖尿病の遺伝素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が糖質を多量に摂取していると血糖値が高くなります。すると、高血糖によるのどの渇きから、さらに清涼飲料の摂取が進むという悪循環が形成されます。

肥満が男性ほど多くなく、人前で清涼飲料水をあまりがぶ飲みしない女性より、男性の方が圧倒的に多くなっており、年々増えています。清涼飲料水ケトーシスが報告され始めたのは、ペットボトルと自動販売機が普及し、清涼飲料水を飲みやすくなった1980年代半ばからです。

一般的な清涼飲料水は、1リットル当たり100グラム前後の糖分が含まれていると考えられます。角砂糖1個が5グラムとすると、1リットルの清涼飲料水をがぶ飲みすると、角砂糖20個をかじっているのと同じことになります。また、スポーツ飲料やフルーツ果汁の入った野菜ジュースなどにも、糖分は入っています。

のどが非常に渇く、多量の水分を欲する、急激な体重減少といった異常に気付いたら、早めに医療機関を受診することです。

医師による治療では、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

日常の予防法としては、日ごろから、糖分を取りすぎなようにすることです。糖尿病患者の場合は1日当たりの砂糖摂取量は10グラム以下が目安とされ、糖分を含む飲料水を控えますが、そうでない人は知らずにたくさん飲んでしまう可能性があります。暑い日が続き、冷たい飲み物がおいしい夏場の水分補給には、水やミネラルウォーター、お茶などの、糖分の入っていない飲み物に変えることが勧められます。

🇰🇾赤芽球癆

再生不良性貧血の中の特殊なタイプで、赤血球だけが減るために起こる貧血

赤芽球癆(せきがきゅうろう)とは、強い貧血を起こす疾患。極めて珍しい疾患です。

この赤芽球癆は、再生不良性貧血に分類され、その中で特殊なタイプとされています。再生不良性貧血は、骨髄にある血液細胞の源に当たる造血幹細胞が何らかの原因によって減るために、赤血球だけでなく、白血球や血小板も減るのが特徴です。赤芽球癆では赤血球だけが減り、白血球と血小板は正常範囲にあるという違いがあるにもかかわらず、再生不良性貧血に分類されているのは、造血幹細胞の異常によって引き起こされるためです。

赤血球、白血球、血小板などの血液細胞は骨髄で作られますが、赤血球は造血幹細胞から赤血球系幹細胞、前赤芽球、赤芽球、網赤血球という段階を経て、成熟した赤血球になります。赤芽球癆では骨髄において、赤血球の元になる赤芽球や、若い赤血球である網赤血球が傷付けられて極端に減り、赤血球だけが作られなくなります。赤血球は全身に酸素を運ぶ働きがあり、赤血球が減るほど息切れなどの症状が強く出ます。

赤芽球癆は、急性赤芽球癆と慢性赤芽球癆に大きく分類されます。急性赤芽球癆は、パルボウイルスB19などのウイルス感染や、チアンフェニコール 、ジフェニルヒダントインなどの薬剤の服用によって、赤血球系前駆細胞が障害されて発症します。幼児に一過性発疹(ほっしん)のリンゴ病を引き起こすパルボウイルスB19の感染によって発症する赤芽球癆では、赤血球寿命の短い溶血性貧血の場合に強い貧血を呈します。

慢性赤芽球癆のほうは、ダイアモンドブラックファン貧血とも呼ばれる先天性赤芽球癆と、後天性赤芽球癆に分類されます。

慢性赤芽球癆のうち、ダイヤモンドブラックファン貧血は重要な造血器である骨髄に先天的な障害があるために、血液中の赤血球が減少して起こります。常染色体劣性遺伝をする、まれな疾患で、強い貧血を起こします。赤血球が減るほど、息切れ、動悸(どうき)、めまい、ふらつきなどの症状が強く出ます。母指または他の指の骨の異常、および低身長を伴うこともあります。通常は乳児期に発症しますが、成人期に発症することもあります。

慢性赤芽球癆のうち、後天性赤芽球癆は免疫機構をつかさどる胸腺(きょうせん)に腫瘍(しゅよう)を併発することが多いことから、自分のリンパ球が赤血球系幹細胞を攻撃する自己免疫疾患の一種と考えられています。胸腺に腫瘍を併発する例では、重症筋無力症を併発することもあり、脱力や眼瞼(がんけん)下垂などの症状がみられます。

医師による赤芽球癆の診断では、針を刺す骨髄穿刺(せんし)によって骨髄液を採取して、赤芽球が極端に少なくなっていることを確認します。胸部X線、胸部CT検査で、胸腺腫を認めることもあります。

貧血が重篤な場合は、症状を改善するために輸血が必要になることがあります。これは応急処置でしかなく、治療としては再生不良性貧血の中等症や重症の場合と同様に、免疫抑制療法が行われます。

最も多く使われる薬は免疫を抑制するシクロスポリンで、これを服用することで70~90%パーセントの人は改善されます。また、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)などを組み合わせて使うこともあります。

ウイルス感染以外では、薬をやめるとしばしば再発しますので、血液内科の専門医のもとで、副作用にも気を配りながら根気よく治療を続けます。一方、薬剤性赤芽球癆の場合は、原因と見なされるすべての薬剤の服用を中止します。中止が困難な薬剤の場合は、ほかの作用機序の異なる薬剤へ変更を試みます。

感染性や薬剤性の場合は通常、免疫抑制療法を行うことで1~3週間以内に改善傾向が認められます。

胸腺腫を伴う赤芽球癆の発症者は胸腺摘出後に改善するので、胸部CT検査を用いて病変の存在を検索し、外科的治療が検討されます。

ダイアモンドブラックファン貧血とも呼ばれる先天性赤芽球癆の治療では、骨髄移植が有効で、骨髄移植した子供の90パーセント以上が成功しています。そのほか、薬物療法として、蛋白(たんぱく)同化ホルモン剤や、ステロイド剤が併用されます。ステロイド剤のメチルプレドニゾロンの大量使用や、免疫抑制療法も行われています。その際には、薬の副作用や感染症、合併症に十分注意します。

🇬🇮脊髄炎

脊髄の炎症で、手足の運動障害や感覚障害を発症

脊髄(せきずい)炎とは、感染や免疫反応が切っ掛けとなって、脊髄に炎症の起こる疾患の総称。手足の運動障害や、感覚障害を引き起こします。

脊髄は頸(けい)髄、胸髄、腰髄、仙髄からなりますが、狭い場所に神経が集中しているため、小さな障害でも重い後遺症を残すことが懸念されます。脊髄炎の原因は、原因が不明な特発性、ウイルス、細菌、寄生虫などの感染による感染性あるいは感染後性、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病あるいは類縁疾患に合併するもの、多発性硬化症、急性散在性脳脊髄炎などの自己免疫性などに分類されます。

正確な頻度は不明ですが、ウイルス感染に関連して発症するものが多いと見なされています。原因ウイルスとしては、帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルス、単純ヘルペスウイルス、風疹(ふうしん)ウイルス、麻疹(ましん)ウイルス、サイトメガロウイルス、ポリオウイルスなどが知られており、急性脊髄炎を発症します。

一方、成人T細胞白血病ウイルス(HTLV—1)は、慢性の経過を示すHTLV—1関連脊髄症(HAM)を起こします。エイズウイルスなども、徐々に起こってくる脊髄炎を起こします。

原因細菌としては、結核や梅毒を始め化膿(かのう)菌が知られています。

急性脊髄炎では、脊髄は横断性に、すなわち水平面全体に損なわれます。傷害された脊髄の部位に相当する部分に運動障害と感覚障害がみられ、加えて膀胱(ぼうこう)直腸障害を生じます。胸髄が損なわれる頻度が高く、急に両下肢がまひし、主に胸から下にビリビリするしびれ感が起こります。背中や腰に痛みを感じることもしばしばで、排尿、排便の感覚がなくなり、たまりすぎたり、漏らしたりします。頸髄が損なわれると、四肢にまひと感覚異常が生じます。症状は急速に進行し、数日でピークに達します。

障害が横断性でなく、部分的である場合もあります。例えば、運動神経の通っている脊髄の前方部分だけが損なわれると、運動障害だけが現れます。

HTLV—1関連脊髄症では、慢性進行性の両足のまひが特徴で、痛みやしびれ、筋力の低下によって歩行障害を示します。同時に、自律神経症状がみられ、特に排尿困難、頻尿、残尿感、便秘などの膀胱直腸障害は初期より多くみられます。その他、進行例では皮膚乾燥、起立性低血圧、インポテンツなども認められます。

脊髄炎の検査と診断と治療

急性脊髄炎では、まず感覚障害の分布を参考にして脊髄MRIを行い、脊髄の腫脹(しゅちょう)や病変部を確認します。次に、髄液検査によって炎症の存在を確認します。髄液では、蛋白(たんぱく)の量や細胞の数が軽度に増加しています。病因を調べるためには、ウイルス抗体価、髄液細菌培養、膠原病および類縁疾患のチェックなどが必要です。

HTLV—1関連脊髄症(HAM)では、慢性進行性の両足のまひや排尿障害、感覚障害などの症状と、血清および髄液で抗HTLV—1抗体が陽性であり、ほかに原因となる疾患がないことを確認します。髄液検査では、軽度のリンパ球性細胞の増加、軽度から中等度の蛋白増加のほか、核の分葉したリンパ球を認めることがあります。脊髄MRIでは、胸髄を主にした著しい脊髄委縮が認められます。

急性脊髄炎の治療では、安静を守った上、抗ウイルス薬や、アレルギー反応を抑えるために副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を投与したりします。頸髄障害による呼吸不全がみられた時は、呼吸管理も必要になります。排尿障害に対しては、膀胱カテーテルの留置が必要になる時も多く、慢性期になっても自己導尿を行う場合もあります。薬物療法は1カ月程度で終了し、早期から積極的にリハビリテーションを行います。

HTLV—1関連脊髄症の治療では、自己免疫反応の関与が推定されているため、ステロイド療法やインターフェロン療法を行います。

脊髄炎では、寝たきりとなって、床擦れや膀胱炎などの合併症が起こりやすいので、これを予防するためにエアーマットを使用し体位の変換を頻回に行います。関節の曲げ伸ばしができなくなる拘縮を防ぐため、歩行訓練など早期からのリハビリテーションが大切です。

🇬🇮脊髄空洞症

脊髄または延髄の中心部に空洞を生じる疾患

脊髄(せきずい)空洞症とは、先天異常あるいは外傷によって、脊髄または延髄の中心部に空洞を生じる疾患。空洞には脳脊髄液がたまって、脊髄を内側から圧迫するために、いろいろな神経症状、全身症状を呈します。

男女差はなく、20〜30歳代の発症が多くみられますが、あらゆる年齢層に起こります。空洞のできる詳しいメカニズムは、まだよくわかっていません。

脊髄空洞症を原因によって大きく分類すると、小脳の下端が脊椎(せきつい)のほうに垂れ下がったようにめり込んでくるキアリ奇形に伴うもの、脊髄の周囲に炎症が起こり、髄膜に癒着を起こした癒着性くも膜炎に伴うもの、脊髄腫瘍(しゅよう)に伴うもの、外傷などに伴うもの、原因が不明な特発性のものがあります。

症状の現れ方は、空洞の大きさや長さによって異なります。頸髄(けいずい)に発生することが多いため、最初は手の小さい筋肉に委縮が起こり、次第に腕のほうに進行していきます。筋肉の委縮のために、手の指の筋力は低下し、細かい作業ができなくなります。腕に帯状の温度覚と痛覚の消失も起こりますが、触覚、振動覚、位置覚などの深部感覚は正常です。これを解離性知覚障害と呼んでいます。

進行すると、知覚障害の範囲も広がってきます。また、腕ばかりでなく足にも、しびれ、筋肉の委縮、脱力、突っ張りがみられ、歩行障害、排尿や排便の障害が出てきます。これを痙(けい)性まひと呼んでいます。知覚障害のために、やけどをしても熱さを感じない、外傷をしても痛みを感じないことが多くなります。栄養神経という組織の栄養を保っている神経も侵されるために、潰瘍(かいよう)、皮膚の委縮、発汗障害なども示してきます。

空洞が延髄に及ぶと、顔面の感覚障害や嚥下(えんげ)障害が起こります。このため食事の際に飲み込みが悪くなったり、飲み込んだ水分が誤って気管に入ることがあります。脊椎破裂、頭蓋(とうがい)異常、内反足、頸椎(けいつい)癒合、脊椎側弯(そくわん)などを伴っていることも、しばしばみられます。

進行は極めて緩やかで、数十年に渡って慢性に経過し、時に症状が進行した後、停止あるいは改善することもあります。脊髄空洞症を発症しても、天寿を全うする人が多く、晩年まで仕事の可能な人も少なくありません。

脊髄空洞症の検査と診断と治療

頸椎のMRI検査が役に立ち、これでほぼ診断が付きます。MRI検査では、特殊な撮り方をすると脊髄液の流れを画像化することができ、これも診断や治療方法を決める際に有用です。また、脊髄腫瘍に合併するタイプの脊髄空洞症では、造影剤を用いたCT検査が行われます。

しびれなどの知覚障害の症状に対しては、薬剤による対症療法が行われます。頸椎の一部を切除したり、空洞を切開する外科的手術も行われます。

キアリ奇形に伴う脊髄空洞症の場合は、大後頭孔減圧術と呼ばれる外科的手術が行われます。頭から首に移行する大孔部という部分で脊髄周辺の空間を広げて、脊髄液の流れをよくする手術であり、多くのケースでは空洞が縮小して、症状も軽快します。しかし、症状がある程度以上進行してしまった後で手術をしても、有効でないケースが多くなります。

なお、脊髄空洞症では、空洞が延髄などの脳幹部に及んだり、併発するキアリ奇形により脳幹部が圧迫されたり、舌下神経まひにより舌の委縮を来す場合、食事の際に飲み込みが悪くなったり、飲み込んだ水分などが気管に誤って入ることがありますので、水気のあり滑らかな食品、とろみ食など飲み込みやすい食品を選択し、水分、栄養補給に注意をする必要があります。

🇬🇮脊髄係留症候群

脊髄が脊椎の足側につなぎ止められ、下肢運動障害、排尿障害が起こる状態

脊髄(せきずい)係留症候群とは、脊髄が脊椎の足側につなぎ止められ、神経が引き伸ばされることで、下肢運動障害や排尿障害が起こる状態。

脊椎(せきつい)の中を通る中枢神経である脊髄は、脳の延髄から連続していて、首、背中、腰の部位にあります。腰の部位で徐々に細くなり、大人では多くの人が第1腰椎と第2腰椎の間くらいで終わっています。

この脊髄が細くなった先端部分を脊髄円錐(えんすい)と呼びます。さらに、脊髄円錐の先端から終糸(しゅうし)と呼ばれるひも状の組織が伸びており、これが骨盤につながる仙骨まで伸びて、その末端で脊髄を緩やかに固定しています。

脊髄円錐の位置は新生児では第3腰椎あたりにありますが、神経である脊髄に比べると骨である脊椎のほうが成長とともに大きくなるため、脊髄と脊椎の長さの差が大きくなります。脊髄は脳と連続しているために、成長とともに脊椎の頭側に上がっていき、身長の伸びが止まるころには第1腰椎と第2腰椎のあたりに落ち着くのです。

この脊髄円錐の先端から足側に伸びる終糸が、非常に太くなっていたり、終糸に脂肪腫(しゅ)ができたりすることがあります。あるいは、脊髄円錐のあたりに生まれ付き脂肪腫ができていることもあります。

このような先天的な異常があると、成長に伴って頭側に上がっていくはずの脊髄が、脊椎の足側の仙骨につなぎ止められることになります。成長とともに脊髄が足側に引っ張られて引き伸ばされる度合が増し、これに伴って下肢運動障害や、排尿障害などの神経症状を示すようになります。

小児期にあまり目立った症状がなくても、身長が一気に伸びる成長期のころに脊髄が引き伸ばされる度合が強くなって、神経症状が目立ってくることもあります。

さらには、大人になってからの脊椎の加齢変化によって神経症状が生じることもあります。あるいは、腰部や臀部(でんぶ)に打撃を受けた外傷により、素因として持っていて発症を免れていた神経症状が生じることもあります。

生まれ付き脊椎が形成不全を起こしていて、本来なら脊髄が通る脊柱管の中にあるべき脊髄が外にはみ出して、癒着や損傷を起こしている二分脊椎でも、脊髄係留症候群の神経症状を現すこともあります。

脊髄係留症候群の症状としては、下肢運動障害、痛みなどの感覚障害、排尿・排便障害があります。

両下肢の運動障害として、歩きにくくなる、転びやすくなる、足がまひして動かない、足の変形、左右の足が非対称、足が細いなどがみられます。

感覚障害として、靴ずれやその部位の潰瘍(かいよう)、腰を曲げた際などの腰痛、下肢痛、下肢から足のしびれなどがあります。

排尿・排便障害として、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして、尿を漏らしたり、便秘になったりすることもあります。性機能障害が起こることもあります。

脊髄係留症候群の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、小児外科の医師による診断では、脊椎部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、病変を詳しく観察します。

また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

整形外科、形成外科、小児外科の医師による治療では、症状が全くなくたまたま脊髄係留症候群が発見されたような場合、一般的には経過観察を行い、予防的手術は行いません。

成長期に差し掛かった時期に下肢運動障害や排尿障害が出てきた場合、脊髄をつなぎ止めている部位を手術で切断し、脊髄の引き伸ばしを緩めます。終糸に脂肪腫が付着しているケースでは、手術の予後がよいといわれています。

逆に、癒着が強かったり脊髄を巻き込んでいるケースは、難しい手術となり、手術の後かえって神経まひがひどくなることもあります。また、症状が出てから時間が経つと、手術しても改善は難しく、特に排尿障害が改善しにくいといわれています。

一方、神経症状があまりなくて、高齢になってから脊柱管狭窄(きょうさく)症などほかの疾患で初めて撮影した腰椎部のMRI検査で、たまたま脊髄係留症候群が発見されたような場合、手術は必要ありません。

🏴󠁧󠁢󠁥󠁮󠁧󠁿脊髄脂肪腫

脊髄の通っている部位に脂肪腫が発生して不具合が生じ、脊椎骨が完全に作られない状態

脊髄脂肪腫(せきずいしぼうしゅ)とは、先天的な脊椎(せきつい)骨の形成不全の部位に一致して、脊髄が正常に形成されない場合に、異常部位に脂肪組織が付着し、それが皮膚や筋肉などの周囲組織に連続している状態。

一般的には、腰背部に皮下脂肪腫、母斑(ぼはん)、皮膚陥没、異常毛髪などの皮膚異常が認められます。

成長とともに、付着した脂肪腫によって固定された脊髄が引っ張られて引き伸ばされ、脂肪腫自体の肥満による脊髄の圧迫によって、両下肢運動障害、痛みなどの感覚障害、排尿・排便障害が起こります。

脊髄脂肪腫は幼少期に発生することが多く、小児期にあまり目立った症状がなくても、身長が一気に伸びる成長期のころに脊髄が引き伸ばされる度合が強くなって、障害が目立ってくることもあります。

両下肢の運動障害として、下肢の筋力が低下する、歩きにくくなる、転びやすくなる、足がまひして動かない、足の変形、左右の足が非対称、足が細いなどがみられます。

感覚障害として、靴ずれやその部位の潰瘍(かいよう)、腰を曲げた際などの腰痛、下肢痛、下肢から足のしびれなどがあります。

排尿・排便障害として、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして、尿を漏らしたり、便秘になったりすることもあります。性機能障害が起こることもあります。 症状が一度出現すると、その改善率はあまりよくありません。

しかし、これらの障害が出る前に乳幼児の腰背部の皮膚の異常で疑われて、脊髄脂肪腫と診断されることが多いようです。中には、脊椎骨の形成不全を伴ったりするため、成長とともに脊椎側湾症になることもありますが、水頭症などの脳の異常は伴わないことがほとんどです。

脊髄脂肪腫の検査と診断と治療

脳神経外科、整形外科、形成外科、小児外科の医師による診断では、脊椎部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行い、病変を詳しく観察します。

また、自・他動運動検査、肢位、変形、感覚などの検査を行い、どの脊髄レベルまでが正常であるかを調べます。

脳神経外科、整形外科、形成外科、小児外科の医師による治療では、腰背部の皮膚の症状のみで発見され神経症状がない場合、手術をするかしないかは多様な意見があります。予防的手術をしないで経過観察を行った場合に、いったん症状が出ると、手術をしても症状を改善することは難しいという問題もあります。

一般的には、脊髄脂肪腫が発見されたのが生後6カ月までの場合には、少し体が大きくなるのを待って手術を計画します。すでに生後6カ月をすぎていた場合には、体調のよい時を選んで入院と手術の計画を立て、可能なら生後1年までには全身麻酔下で手術を行い、脊髄と付着した脂肪組織を切り離し、不要な脂肪組織を摘出します。生後1年以上になると、組織が硬くなって手術がやりにくくなるからです。

成長期に差し掛かった時期に両下肢運動障害や排尿・排便障害が出てきた場合も、全身麻酔下で手術を行い、脊髄と付着した脂肪組織を切り離し、不要な脂肪組織を摘出し、脊髄の引き伸ばしを緩めます。

脊髄と尾骨とをつなぐ糸のような組織である終糸(しゅうし)に脂肪腫が付着している終糸脂肪腫と呼ばれるものでは、手術の予後がよいといわれています。逆に、癒着が強かったり脊髄を巻き込んでいる脂肪脊髄髄膜瘤(りゅう)と呼ばれるものでは、難しい手術となり、手術の後かえって神経まひがひどくなることもあります。

また、症状が出てから時間が経つと、手術しても改善は難しく、特に排尿障害が改善しにくいといわれています。

🟥広島で被爆した在外被爆者訴訟、国に賠償命じる判決 広島地裁

 広島で被爆した後に朝鮮半島へ移り住み、健康管理手当が受けられなかった在外被爆者の遺族が国に賠償を求め、請求権が消滅したかどうかが争われた裁判で、広島地方裁判所は、時効が成立するとした国の主張は権利の乱用だとして、国に賠償を命じる判決を言い渡した。  戦後、海外に移り住んだ在外...