2022/08/27

🇳🇬睾丸炎(精巣炎)

細菌やウイルスの感染などで、睾丸に炎症が起こる疾患

睾丸(こうがん)炎とは、細菌やウイルスなどに感染することによって、男性の生殖器官である睾丸に炎症が起こる疾患。精巣炎とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸炎の原因のほとんどは、後部尿道からの細菌の感染によるものです。原因細菌は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌など。細菌の感染によって睾丸だけに炎症が起こることはまれで、その多くは細菌性の副睾丸炎(精巣上体炎)が波及して睾丸にも炎症が起きます。

また、流行性耳下腺(せん)炎(おたふく風邪)を起こすムンプスウイルスの血行感染によって起こることがあり、思春期以降に流行性耳下腺炎にかかった人の10〜30パーセントが睾丸炎も発症します。両方の睾丸に炎症を起こすと、後遺症として無精子症など男性不妊の原因になることがあります。

そのほか、外傷で睾丸が強く打たれた時に、睾丸炎が起こることもあります。

症状は、急激な寒けと震えがきて、高熱が出ます。陰嚢は赤くなってはれ上がり、熱感を持ち、睾丸も大きく硬くなり、強く痛みます。圧痛も激しく腹部まで及びます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎を発症した4〜7日後に、急激な睾丸の痛みとはれが起き、発熱や倦怠(けんたい)感などが現れます。通常、排尿に関する症状はありません。

睾丸炎の検査と診断と治療

睾丸炎(精巣炎)を発症したら、できるだけ睾丸へのダメージを少なくするため家で安静にし、陰嚢をつり上げて固定し、さらに冷湿布をすると痛みは軽くなります。 男性不妊になるのを予防するために、やはり一度は泌尿器科の専門医を受診しておいたほうが安心です。

医師の側は、睾丸の症状から簡単に診断できます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎の先行と、咽頭や精液からのウイルス分離や、血液中のウイルスに対する抗体の値が初回より2回目の測定で上昇することで、確定診断できます。尿中に、うみや細菌は認められません。

治療としては、全身の安静、陰嚢の固定や冷湿布とともに、大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が原因の時は抗生物質を強力に投与します。

ムンプスウイルスが原因の時は、抗生物質は有効ではないため、熱を抑えるための消炎鎮痛剤を投与します。1週間程度で炎症は治まりますが、長期化したり両側に炎症を起こすと、睾丸の中の精子のもとになる細胞が死んでしまい、睾丸が委縮し、不妊症の原因になってしまいます。20〜30パーセントに起きると見なされます。

🇨🇲睾丸過剰症

男性の睾丸が3個以上存在する先天性奇形

睾丸(こうがん)過剰症とは、男性の下腹部に睾丸、すなわち精巣が3個以上存在する状態の先天性異常。多睾丸症、精巣過剰症、多精巣症とも呼ばれます。

泌尿器系と生殖器系には、その胎生期の複雑な発生過程のために多くの先天性異常が生じやすく、男性の生殖器官である睾丸、すなわち精巣についても数、形態、位置、機能などの異常が知られています。睾丸過剰症も、比較的まれにみられる先天性異常です。

睾丸は本来、陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生していますが、睾丸過剰症では真ん中にある陰嚢縫線で区切られた左右の陰嚢内に、過剰な睾丸を含めて2個の睾丸が重複して存在します。左の陰嚢内に2個存在することが多く、右の陰嚢内に2個存在することもありますが、左右両側の陰嚢内に2個存在することはまれです。

過剰な睾丸はほとんどが陰囊内に存在しますが、睾丸の下降が不十分で陰嚢内に位置せずに途中でとどまっている停留睾丸(停留精巣)などに合併して、脚の付け根の鼠径(そけい)部に存在することもあります。

過剰な睾丸が発生する理由として、胎生6週で構成される生殖隆起(生殖堤)の分割過程での異常、生殖隆起の重複、胎生5週で構成される胎芽期の腎臓(じんぞう)に相当する中腎の部分的な退化の3つが考えられています。

睾丸過剰症は、睾丸(精巣)、精液の通り路である精管(輸精管)、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸(精巣上体)の関係から6型に分類されています。

第1型は、睾丸、精管、副睾丸を重複するもの。第2型は、重複する一方が睾丸、副睾丸のみで精管を有しないもの。第3型は、重複する一方が睾丸、精管のみで副睾丸を有しないもの。第4型は、重複する一方が睾丸のみで副睾丸、精管を有しないもの。第5型は、重複する睾丸に副睾丸が付着し、これに続く1本の精管を共有するもの。第6型は、重複する睾丸、副睾丸が1本の精管で連結されているもの。このうち、第5型が最も多いとされています。

睾丸過剰症には、停留睾丸(停留精巣)のほか、鼠径ヘルニア、陰囊水腫(すいしゅ)、精索水腫、精巣捻転(ねんてん)、睾丸(精巣)腫瘍(しゅよう)、奇形腫、胎児性がんなどを合併することがあります。

睾丸過剰症を発見された年齢は、2歳から49歳と幅広いものの、平均年齢は20歳で若年者に多くなっています。幼少時は、停留睾丸、鼠径ヘルニアなどほかの疾患の治療時に発見されることが多く、幼少時以降では無痛性陰囊内腫瘤(しゅりゅう)を主訴として受診した際に、診断されることが多くなっています。

睾丸過剰症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず陰嚢の触診による腫瘤の触知を図ります。超音波(エコー)検査を行うと、睾丸と等信号の像が得られ、陰囊水腫、精索水腫との鑑別が可能となります。悪性腫瘍の可能性もあるため、 CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行い、骨盤内病変の有無を調べることもあります。

最終的には、過剰な睾丸に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行う生検も含め、手術で摘除した組織の病理組織診によって、確定します。

鑑別すべき疾患としては、悪性腫瘍のほか、睾丸腫瘍、副睾丸腫瘍、精液瘤などがあります。

泌尿器科の医師による治療では、ほとんどの場合は診断も兼ねて、過剰な睾丸を手術で摘除します。過剰な睾丸が小さい場合はもちろん、特に、陰囊外の鼠径部に存在する過剰な睾丸は、がん化の危険性を考慮し手術で摘除するべきと考えられています。

また、陰囊内にあり妊孕(にんよう)性を期待できるものに関しても、生検で悪性・異型性を認めるもの、解剖学的には精路を認めても造精能を欠くもの、超音波検査で悪性所見を認めるもの、あるいは本人に過剰な睾丸の摘除の希望がある時、定期的な経過観察が望めない時は、手術で摘除するのが一般的です。

生検で過剰な睾丸が睾丸実質であり、悪性腫瘍でないことを確認した後に温存した場合は、慎重を期した定期的な診察と超音波検査が必要になります。

🇹🇩睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

睾丸(こうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染することによって起こる疾患。精巣結核とも、結核性精巣炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

>肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、副睾丸(精巣上体)、睾丸(精巣)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の睾丸結核は、結核菌が睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、炎症を起こして、精巣などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、睾丸結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、睾丸と、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸との境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には睾丸と副睾丸を破壊することもあります。初めは片方の睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である睾丸結核の頻度は低下しています。

睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、副睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、睾丸や前立線などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、睾丸がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇹🇩睾丸腫瘍(精巣腫瘍)

睾丸にはれ物ができ、がんであることが多い疾患

睾丸腫瘍(こうがんしゅよう)とは、男性の生殖器官である睾丸に、はれ物ができる疾患。悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、精巣腫瘍とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。睾丸腫瘍の頻度としては10万人に1〜2人の非常に珍しい疾患ですが、好発年齢は0~10歳、20~40歳、60歳以上の3つのピークがあります。

睾丸腫瘍は、セミノーマ、胎児性がん、卵黄嚢(のう)腫瘍、奇形腫、絨毛(じゅうもう)がんと呼ばれるものに区分されます。これらのいずれも成人にはみられますが、セミノーマが最も多く、全体の約半数。乳幼児にみられるのは、卵黄嚢腫瘍と奇形腫。

がんでは進行が速く、リンパ管や血管を通じて容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命にかかわることがあります。しかし近年では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになりました。転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治りますが、進行した状態では治療が困難な場合もあります。

なぜがんができるのか、本当の原因はまだわかっていません。ただ、停留精巣や精巣発育不全などの疾患を持っている人、胎児期に母親がホルモン剤投与を受けた人は、睾丸のがんになりやすいと見なされています。

症状で最も多いのは、痛みのない睾丸のはれです。時には、痛みを伴うこともあります。一般に、痛みもなく、熱もないために放置しておくと、陰嚢の中の睾丸の一部が硬くゴツゴツしたり、全体的にはれて大きくなってきます。かなり進行すると、腹部が膨らんだり、せきが出て胸が苦しくなるなど睾丸腫瘍の転移による症状が現れます。

睾丸腫瘍の検査と診断と治療

睾丸のはれ物に気付いた場合には、恥ずかしがらずに泌尿器科の専門医を受診します。

医師による診断では、ほとんどの場合、触っただけで判断できます。判断に迷う場合は、懐中電灯を当てて中身が詰まっているかどうか調べたり、超音波で腫瘍の内部を検査します。診断が確定すれば、血液検査で腫瘍マーカーを調べ、がんが他の臓器に転移していないかどうかを全身のCTやアイソトープを使った検査で詳しく調べます。

治療では、まず腫瘍ごと睾丸(精巣)を取り除きます。陰嚢を切開せず、おなかの下のほうに傷ができる高位除精巣術と呼ばれる方法です。睾丸は左右一対ありますから、片方を摘出しても、もう一方が正常に機能していれば、男性ホルモンや精子を産生する能力が低下したり、勃起(ぼっき)能が衰えるような後遺症はありません。

睾丸を摘出した後、疾患がまだ全身に広がっていない時は、一般に再発予防の治療が行われます。医療機関によっては、摘出した後、定期的な精密検査のみの場合もあります。このような治療法で転移がない場合には、9割以上治ります。

すでにリンパ節や肺、肝臓、骨、さらに脳などに転移している場合は、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種の抗がん剤による治療が追加されます。1回5日間の点滴を3〜4週間おきに繰り返す方法で、3〜4回行うことが標準的。成人に最も多いセミノーマの場合は、放射線治療も有効です。このような治療で転移があるような進んだがんでも、7〜8割が完治します。

なお、転移が見付からないような初期のがんでも、将来2〜3割に転移が現れるため、予防的な抗がん剤投与や放射線治療を行う場合もあります。

🇨🇫口腔異常感症

はれなどの異常が口腔内に存在しないのに、痛み、しびれ、乾燥感などの異常を感じる疾患

口腔(こうくう)異常感症とは、はれや炎症などの異常が口腔内に存在しないのに、痛み、しびれ、乾燥感、知覚過敏、違和感、異物感などの異常を感じる疾患。中でも多いのは、舌の表面には外見上の異常がないのに、舌に痛み、しびれなどを感じる症状で、これを特にに舌痛(ぜっつう)症といいます。

発症者の多くは女性で、年齢的には更年期を迎える40歳代、50歳代に多いのが特徴です。主に舌の先端や側面に、ヒリヒリした痛みや、焼けるような痛み、しびれ、違和感が現れ、長期間続きます。食事がおいしくない、本来の味がしないなどの味覚異常などを併発していることも、しばしばあります。

舌の痛みやしびれは我慢できないほどではないものの、1日中気になって 舌に意識が集中したり、精神的に緊張したりした時に、症状が出やすいようです。口の中が痛いので、イライラしたり、他のことをやる気がそがれたりすることもあります。

食事や会話には支障がないことが多いものの、食べ終わった後や長電話の後に、また午前中よりも夕方から夜にかけて舌の痛みやしびれが悪化する傾向があります。痛む部位が移動することもあり、唇や口蓋(こうがい)にヒリヒリした痛みが現れることもあります。ガムやアメなどを口に入れておくと、少し痛みが紛れることがあります。

不眠、肩凝り、頭痛など自律神経症状を伴うことが多い傾向もあります。

この口腔異常感症は歯科治療の後に発症することがしばしばあり、入れ歯や歯列矯正具が口に合わず物理的な刺激によって痛みが出たり、歯の治療に用いる金属のアレルギーが原因になっていることもあります。

また、別の原因として、生体内の微量金属である鉄、亜鉛、銅やビタミンB12が欠乏しても、舌の表面が荒れやすくなり、舌の痛みなどを生じやすくなります。 味覚異常を伴っている場合には、血液中の亜鉛欠乏が一因となっている場合もあります。

更年期の女性に多いことから、ホルモンのアンバランスや自律神経の変調なども関係があるとも考えられています。

2002年以降の研究では、ドライマウス(口腔〔こうくう〕乾燥症)も原因になっていると考えられています。ドライマウスでは、唾液(だえき)の分泌量の低下により口の中が乾燥します。口の中の乾燥は症状の進行程度により舌にも悪影響を及ぼし、舌の乾燥、舌の表面のひび割れ、味覚障害などさまざまな症状となって現れます。カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛、口角炎も認められます。シェーグレン症候群からもたらされるドライマウスもあります。

薬物の服用によっても、ドライマウスが生じます。従来から、口腔異常感症の原因の大半は心身症あるいは心気症とされてきた関係で、舌の痛みに対する不安を取り除く心理面の治療として、精神安定剤(抗不安剤)、抗うつ剤、向精神剤などが処方されるケースが一般的でした。これらの薬物は、精神面での不安を和らげる効果があるものの、かえって症状が進行するケースもあります。

精神安定剤、抗うつ剤などには、唾液腺(せん)を支配している神経に作用し、唾液分泌量を低下させる作用があることが知られており、ドライマウスの症状が現れることもあります。

口腔異常感症の原因の大半は現在、心身症あるいは心気症と考えられています。日常生活でストレスを抱えている時に発症することがありますし、ストレスを抱えている時に行った歯科治療を契機に発症することがあります。これは心身症と考えられます。

舌の痛いことにとらわれて、舌をいつも観察しては片時も舌の痛みから解放されず、舌がんノイローゼにまでなるような場合は、舌が気になることが疾患で、舌そのものが悪いわけではありません。これは心気症と考えられます。この口腔異常感症が原因で、舌がんになることはありません。

舌の痛みなどを自覚した場合、できるだけ早期に口腔内科、あるいは歯科心療科、心療歯科のような専門機関を受診して、検査を受けることが勧められます。現在のところ、診療する医療機関が割合少ないため、適切な診断と治療がされていないケースが非常に多くなっています。

口腔異常感症の検査と診断と治療

口腔内科などの医師による診断では、まず、視診で口腔内の検査をして、はれや炎症などの原因となる疾患がないかを確認します。また、問診では食事で症状が増強しないか、消失するかを確認します。

安静時と刺激時の唾液量を測定し、唾液腺機能を調べます。血液検査で鉄、亜鉛、銅などの微量金属やビタミンB12の値も調べます。口腔内菌検査は、食事などの影響を受けない早朝の唾液を検体としますが、真菌の一種であるカンジダ菌の増殖の有無には、とりわけ注意します。

心因的要因は問診の際に感じ取れますが、いろいろのアンケートを行って、より客観的に診断します。診断に苦慮する際は軽い精神安定剤(抗不安剤)を少量使用し、症状の変化をみることもあります。

口腔内科などの医師による治療では、検査で異常があった場合は、その治療を行います。入れ歯などの刺激が一因なら、改善する必要があります。微量金属やビタミンの不足の場合は、亜鉛製剤などで不足した物質を補充することで容易に症状は改善します。

舌の痛みやしびれ、乾燥感などの原因となるようなはれや炎症などは見付からず、神経のまひも認められず、血液検査でも特に異常値が認められない場合は心身症と見なし、薬物療法と心理療法などを行います。

最も有効な治療法は抗うつ剤を中心とした薬物療法で、不眠や不安を伴う場合は睡眠導入剤や精神安定剤を併用します。漢方薬が有効なこともあります。抗うつ剤には、その作用機序から三環系、選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬(SNRI)などがあります。

抗うつ剤を服用すると、早ければ4日から5日目、遅くても1週間から10日くらいで、舌の痛みが緩和していきます。理想的に治療が進展していけば、3週間から4週間後には痛みは7割方改善していきます。胃腸の調子が少し悪くなる場合もあるものの、軽い整腸剤を併用すればすぐに治まります。

効果が十分得られたら、そのまま数カ月は抗うつ剤の服用を続けて再発を防ぎますが、半年から1年くらいは続けたほうがよい場合が多いようです。年単位で継続しても、きちんと通院していれば特に副作用などの問題は心配ありません。しかしながら、抗うつ剤の鎮痛効果には個人差があります。

心気症の場合は、口腔内に舌がんなどの疾患のないことを根気よく説明し、必要以上に口の中を鏡で見たり、指で触ったりしないようにと説明します。症状が治まらない際は、軽い精神安定剤を用います。

ドライマウス(口腔乾燥症)の場合は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて用います。薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、ドライマウス自体が改善する場合もあります。

シェーグレン症候群からもたらされるドライマウスでは、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

日常生活上の注意としては、体内の鉄のほか、亜鉛の低下でも起こりやすくやすくなるので、偏食を避けることが重要です。口腔異常感症は、唾液量の低下もその要因の1つですが、唾液量の低下に引き続いて起こりやすいカンジダの増殖も重要で、歯磨き、うがいなどで口腔内を清潔に保つことを心掛ける必要があります。

🇨🇫口腔カンジダ症(鵞口瘡)

カンジダ菌の感染で、口の粘膜が白い苔状物で覆われる疾患

口腔(こうくう)カンジダ症とは、口腔内に常在するカンジダ菌という真菌によって、主として斑点(はんてん)状の白い苔(こけ)のようなものが生じる疾患。急性偽膜性カンジダ症とも呼ばれ、以前は鵞口瘡(がこうそう)とも呼ばれていました。

乳幼児や老人に多い疾患ですが、生後間もない健康な乳児にみられるものは、放置しておいても自然に消えます。成人がかかることもあります。

原因は真菌(かび)の一種のカンジダ菌の感染で、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。誘因としては全身の衰弱、抗生物質の長期連用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)、免疫抑制剤、抗がん剤などの使用、がんの放射線治療、ビタミン欠乏、全身疾患による免疫機能の低下が挙げられます。

カンジダ菌は酵母菌(イースト)の一種で、元来、人間の口腔粘膜や腸管の中に住んでいます。これが誘因があってたまたま増殖すると、口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症になるのですが、このカンジダ菌は水虫などを起こす白癬菌とは異なって、体の内部に侵入する力があります。そのため、免疫機能の低下がある時には、全身に増殖して、重篤な疾患になることがあります。

口腔カンジダ症の最初は、口腔粘膜、舌、歯肉が赤くはれ、表面が白い斑点状の苔状物の膜で覆われます。この苔状物の膜は軟らかくて、こするとすぐはがれ、はがれたところは赤くただれます。普通、痛みは軽度ですが、舌のズキズキする痛み、違和感、味覚異常を伴うこともあります。熱などの全身症状は、ほとんどありません。

適切な処置をすれば、比較的早くよくなりますが、まれには進行して咽頭(いんとう)から食道、肺に広がって、カンジダ性肺炎を生じることもあります。

口腔カンジダ症の検査と診断と治療

口腔カンジダ症が味覚異常の原因になっていることもありますので、口の中を清潔に保ち、消毒力のあるうがい薬を使ってみます。それで舌などの口腔内の違和感が治らない場合、また全身状態が悪い場合には、食道や肺に広がることがあるので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

医師は病状から診断しますが、カンジダ菌が証明されれば確定します。証明のためには、KOH検査(皮膚真菌検査)と培養検査が行われます。KOH検査では、綿棒で皮膚の表面をこすり、それを水酸化カリウム溶液で溶かして、顕微鏡で観察します。5分もあれば結果が出ますが、カンジダ菌の種類の特定までは困難です。培養検査では、クロモアガー・カンジダ培地などで培養します。検査に時間がかかりますが、菌の種類を特定できます。

治療においては、抗真菌剤の外用が主体で、殺菌性消毒剤による口すすぎも有効です。外用剤では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダ菌に対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤があります。口腔カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

なお、抗真菌剤の外用剤は近年、たくさんの新しい薬剤が開発されかなり有効ですが、中には白癬菌にだけ効き、カンジダ菌には効きにくい薬剤もありますので、注意が必要です。

症状が強い場合には、抗真菌剤の内服を行います。内服剤では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。特殊な内服剤として、口腔・食道カンジダ症用で、ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード)ゲルがあります。1日1〜2本を4回に分けて内服しますが、口腔カンジダ症では病変部に塗るだけでも有効です。

🇬🇶口腔乾燥症

唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾く疾患

口腔(こうくう)乾燥症とは、唾液(だえき)の分泌量が少なくなって唾液の質に異常を来し、口の中やのどが渇く疾患。ドライマウスとも呼ばれます。

ストレスやうつ病による影響が主な原因ですが、さまざまな原因が考えられます。アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、血圧を下げる降圧剤、鎮痛剤、抗パーキンソン剤など多くの薬の副作用でも起こります。

自分の免疫細胞が唾液腺(せん)や涙腺を攻撃してしまうシェーグレン症候群でも、口や目が渇きます。糖尿病や更年期障害、腎(じん)障害、唾液腺障害、口腔周囲の筋力の低下、食習慣、放射線が関係することもあります。

保湿や抗菌作用がある唾液が足りないと、食べ物の味がよくわからない味覚障害、水分の少ない食品が飲み込めないなどの嚥下(えんげ)障害、口の中がネバネバするなどの不快感、口腔の粘膜の乾燥、夜間の乾燥感といった症状が現れます。さらに、義歯の不適合、装着時の痛み、カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛(ぜっつう)や口角炎も認められます。

虫歯の多発や悪化、歯周病、舌苔(ぜったい)の肥厚、舌表面のひび割れ、口内炎や口臭、食事がとれない摂食障害、会話時に話しづらいなどの発音障害を引き起こすこともあります。

口腔乾燥症の検査と診断と治療

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による診断では、安静にして自然に出てくる唾液を15分間採取し1・5ミリリットル以下だと、口腔乾燥症の可能性が高いと判断します。

原因により対処は異なりますので、原因を明らかにします。血液検査や画像検査で、シェーグレン症候群などの判別もできます。

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による治療は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて処方します。

薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、口腔乾燥症自体が改善する場合もあります。

あごをよく動かして食べ物をかむことも大切。ほおや唇の内側など、口の中に広がっている唾液腺を刺激するマッサージも有効です。舌を転がして押し付けたり、指を入れて軽くこすったりします。口腔筋機能療法も、筋力を強化させ唾液分泌を促進させる効果が期待できます。

シェーグレン症候群からもたらされる口腔乾燥症では、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

>なお、シェーグレン症候群で全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド剤や免疫抑制剤などを含めて適した治療を受けるべきです。

🟩「百日せき」急増、今年の累計患者数が4100人に 昨年1年間を上回る

 子供を中心に感染し激しいせきが続く「百日せき」について、全国の医療機関から今年、これまでに報告された患者の数は4100人と昨年1年間の累計4054人を上回りました。乳児が感染すると重症化することがあり、専門家は「生まれて2カ月になったら速やかに定期接種のワクチンを打つことが重...