2022/08/27

🇧🇫口囲皮膚炎(酒さ様皮膚炎)

副腎皮質ホルモン外用剤の副作用で、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れる皮膚病

口囲(こうい)皮膚炎とは 鼻を中心として両ほおが赤くなる酒さ(赤鼻、赤ら顔)に似た症状が現れる酒さ様皮膚炎のうち、口の周囲にのみ症状が現れる状態。

比較的長期間に渡って、顔に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使用したことによる副作用が主な原因で、20歳ぐらいから中年にかけての女性の顔面に多くみられます。

口囲皮膚炎では、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れます。酒さ様皮膚炎では、毛細血管が拡張して赤ら顔になるほか、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。火照りやぴりぴり感を伴い、中にはかゆみを感じる人もいます。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤の使用をやめると、一時的にさらに症状が悪化するために、中止することができないと、ますます悪化していきます。

この口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎は、顔以外の皮膚ではあまりみられません。強力な副腎皮質ホルモン剤、特に構造式でフッ素を含有する副腎皮質ホルモン軟こうを外用した時に起こるとされますが、それ以外の副腎皮質ホルモン軟こうでも起こることがあります。化粧品を始め、シャンプーやリンスでかぶれた際に、市販の副腎皮質ホルモン剤が入ったかぶれ止めの薬を顔に長期間、連用するなどは、注意したほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎の発症者で、顔の湿疹(しっしん)に連用して起こる場合もあります。副腎皮質ホルモン軟こうには、血管収縮作用があるために、外用時は赤みが除かれ肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎になりかねません。女性が化粧品の下地クリームとして長期間、連用して起こる場合もあります。

口囲皮膚炎の検査と診断と治療

症状を自覚した時は、皮膚科を受診します。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎を治療するために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟こうを用いて発症した場合は、掛かっている医師に相談します。

治療の基本は、副腎皮質ホルモン軟こうの外用を中止すればよいのですが、実際には難しさがあります。外用を中止すると、数日後から、口囲皮膚炎では口の周囲の赤い吹き出物、酒さ様皮膚炎では顔面の赤み、はれがますます強くなり、火照り感が強く、我慢できなくなるほどに悪化します。この状態がひどい時は、3週間から2カ月くらい続くこともあり、その後は次第に症状が消えていきます。

問題はこの悪化する時期をどう治療するかで、外出もできないと訴える発症者もいます。精神的苦痛や不安を伴うので、入院するのも選択肢に入ります。徐々に効果の弱い副腎皮質ホルモン軟こうに変えていくとか、全身的に副腎皮質ホルモンの内服を行って炎症を抑え、徐々にその量を減らす方法もありますが、この方法では軽快するまでに、かなり長期間を要することがあります。

軽いケースでは、テトラサイクリンなどの抗生物質とビタミンB2の内服で、症状が改善されます。アトピー性皮膚炎がある場合は、副腎皮質ホルモン軟こうの代わりに、タクロリムスという免疫抑制剤の軟こうを用いたりします。

口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎を予防するためには、顔にはなるべく副腎皮質ホルモン含有軟こうを使用しないことです。かぶれやアトピー性皮膚炎で炎症症状が強く、どうしても顔にこの軟こうを使わなければならない時は、できるだけ短期間に抑え、症状が軽快すれば、早めに副腎皮質ホルモンを含まない軟こうに変えます。そのためには、外用剤でも必ず皮膚科専門医の指示に従って、使用する必要があります。

日常生活では、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇹🇬高LDLコレステロール血症

動脈硬化に関係が深いLDLコレステロールが高いタイプの脂質異常症

高LDLコレステロール血症とは、動脈硬化に関係が深いLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高いタイプの脂質異常症。

血液中に含まれる脂質成分であるLDL(低比重リポ蛋白〔たんぱく〕)が血液中に140mg/dl以上と多く存在する状態で、LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し動脈硬化を起こすため、虚血性疾患のリスクを非常に高めるとされています。

脂質異常症は、血液の中を流れる脂質成分である総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセライド)が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態が継続する疾患。2007年以前は、高脂血症と呼ばれていました。

脂質異常症は、動脈硬化症などの危険因子の一つです。動脈硬化は血管壁が分厚くなり、血管の柔軟性が失われた状態で、血管が損傷したり、血液の流れが滞ったりして、最後には脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など、命にかかわる重大な病気を引き起こす可能性があります。

コレステロールには、肝臓で作られたコレステロールを体中の細胞に運ぶ働きをするLDLに包まれたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをするHDL(高比重リポ蛋白)に包まれたHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。

どちらも大切な役割を果たしていますが、脂質が多すぎる食事などにより、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が必要以上に増えると、血管壁に必要以上にコレステロール がたまり、動脈硬化が進みやすくなります。

悪者と思われがちなコレステロールは、実は体にとって重要なものです。コレステロールは細胞膜やホルモン、脂肪の消化を助ける胆汁酸などを作り出すのに欠かせません。また、中性脂肪もエネルギーの貯蔵庫であり、中性脂肪を蓄えた脂肪細胞には、衝撃から内臓を守るクッション役、寒さや暑さから身を守る断熱材などの役割があります。

しかし、不適切な食生活や運動不足などによって、体内のコレステロールや中性脂肪が過剰になると、血管の健康が損なわれます。必要なものであっても、多すぎれば問題を起こすので、適量を保つことが大切 。

近年、日本人のコレステロール値が高くなった原因として挙げられるのは、食生活の欧米化と運動不足です。日本人のコレステロール値はもともと低かったのですが、ここ半世紀ほどの間に食生活がかつての魚や野菜中心の和食から、脂質の多い肉中心の食事に変わりました。食事における三大栄養素のバランスをみると、脂質の占める割合が大きく増えています。

同じような食事、生活習慣でも、高LDLコレステロール血症になりやすい人となりにくい人がいます。女性ホルモンにはHDLコレステロール(善玉コレステロール)を上げる作用があり、若い女性は男性よりも高LDLコレステロール血症になりにくいのですが、閉経を過ぎるとLDLコレステロール値が高くなります。

ストレスも、値を高める原因の一つ。ストレスが加わると、体内では闘うための準備として、血中に糖や脂肪、カルシウムなどのミネラルが分泌され、血糖値やHDLコレステロール(悪玉コレステロール)、血圧などが上がります。

また、親や祖父母、兄弟姉妹など血のつながった家族に脂質異常症や動脈硬化症の人がいる場合も、高LDLコレステロール血症になるリスクが高くなります。

動脈硬化、さらには冠動脈疾患や脳卒中などに至らないようにするには、LDLコレステロールを適切にコントロールすることが重要です。LDLコレステロールが高い状態のままでいると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡の危険度は上がる一方です。

総コレステロールが160〜179mg/dlの人を基準にした場合、200〜219mg/dlの人では約1・4倍、220〜239mg/dlの人では約1・6倍、240〜 259mg/dlの人では約1・8倍、260mg/dl以上の人では3・8倍と4倍近くまで高くなります。

高LDLコレステロール血症は放置しておくと、血管の動脈硬化が徐々に進行していくものの、初期の段階では体の自覚症状は全くないために、血液検査で初めてわかることがほとんどです。無症状であっても正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談して下さい。内科、ないし内分泌・代謝科が、担当の診療科です。

高LDLコレステロール血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

脂質異常症の診断基準では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が120〜139mg/dl以上を境界域高LDLコレステロール血症とするほか、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上を高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症) 、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl以下を低HDLコレステロール血症とします。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法、運動療法、薬物療法を行ない、LDLコレステロール値を下げます。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の管理目標値は、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患を持っている人の場合、最もリスクが高いと判断し、同じ疾患を繰り返さないように、100mg/dl未満と一番厳しく設定します。また、年齢、性別にかかわらず、糖尿病や慢性腎臓(じんぞう)病、非心原性脳梗塞、末梢(まっしょう)性動脈疾患などの疾患を持っている人の場合、冠動脈疾患を起こすリスクが高いため、120mg/dl未満に設定します。

○男性45歳・女性55歳以上○高血圧○喫煙○家族に冠動脈疾患がいる○低HDLコレステロール血症という主要危険因子を3個以上持っている人の場合、120mg/dl未満に設定します。主要危険因子を1から2個持っている人の場合、140mg/dl未満に設定します。主要危険因子を持っていない人の場合、160mg/dl未満に設定します。

いずれの場合も、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値は40mg/dl以上、中性脂肪(トリグリセライド)値は150mg/dl未満を目指します。

食餌療法では、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

運動療法では、積極的に運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、高LDLコレステロール血症の改善法、予防法として効果的です。

食事療法、運動療法、生活習慣全般の見直しで十分な値までLDLコレステロール値が下がらない場合、もしくは危険因子が多く、冠動脈疾患を起こすリスクが高い場合には、薬物療法を併用します。

主に、一般にスタチンと呼ばれているHMG‐CoA還元酵素阻害薬を使います。この種類の薬は、コレステロールの合成を抑制するものです。そのほかにも、コレステロールの吸収阻害剤や、レジンと呼ばれる陰イオン交換樹脂やプロブコール、ニコチン酸誘導体を使います。

🇬🇭後外側裂孔ヘルニア

横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔の臓器が胸腔へ脱出

後外側裂孔(こうがいそくれっこう)ヘルニアとは、横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔(ふくくう)内の臓器が胸腔内に入り込んだ状態。先天性の横隔膜ヘルニアの一つで、ボックダレック孔ヘルニア、胸腹裂孔ヘルニア、後外側ヘルニアなどとも呼ばれます。

先天性の横隔膜ヘルニアの中でも、穴の位置や大きさによってはほとんど症状や障害を起こさないものがありますが、後外側裂孔ヘルニアは横隔膜の後ろ外側に穴があるタイプで、多くは生まれた直後から呼吸困難など生命にかかわる重大な症状を来します。新生児2000〜3000人に1人の割合で、認められています。

横隔膜は、肺の下に位置していて胸腔と腹腔を区切る膜で、上のほうは胸膜、下のほうは腹膜で覆われています。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜である横隔膜が上下することによって、呼吸ができます。

胎児が母胎にいる時、次第に横隔膜が形成されてきて、妊娠2カ月半ころにはしっかりと横隔膜が胸腔と腹腔を区切るのですが、何らかの原因で横隔膜の後外側孔(ボックダレック孔:解剖学者の名前)がきっちりと閉じ切らないことがあります。このころは、腹腔の外に一度出ていた腸などの臓器が腹腔の中に戻って来る時期で、穴があると臓器が胸腔に入り込むことになり、横隔膜が閉じようとしても脱出した臓器がじゃまをして閉じられなくなってしまいます。

小腸、大腸、胃、脾(ひ)臓,肝臓などたくさんの臓器が胸腔に入り込むと、穴の開いていない側の肺も圧迫され、肺の発達が両側とも障害され、生まれてからひどい呼吸困難を来すこととなります。横隔膜にできる穴はどちらの側にも発生しますが、左側が75パーセントと多く、時には片側の横隔膜がほとんどできていないこともあります。

症状の程度は、発症の時期により異なります。胎児の場合はへその緒から酸素をもらっているので平気なのですが、出生後は自分で呼吸しなければならないため、多くの場合は重症の呼吸不全、高度のチアノーゼを伴った多呼吸が認められます。胸部は膨らんで盛り上がり、逆に、うまく空気が回らない腹部はへこんでいるのも特徴です。呼吸障害が強く、出生直後から人工呼吸管理が必要になります。

特殊な例としては、出生直後には呼吸器症状は示さず、年長になってから、風邪をひいて強いせきをした時や腹部を打撲した時に発症する場合があります。これを遅発性といい、速やかに手当てを受ければほぼ助かります。

後外側裂孔ヘルニア検査と診断と治療

先天性で後外側裂孔ヘルニアを持って生まれてくる場合、大抵は胎児が母胎の中にいるうちに、産科や産婦人科の医師が胎児超音波検査で気付きます。この場合は周産期センターに妊婦を搬送し、新生児科医、小児外科医の立ち会いのもとに帝王切開で出産し、直ちに治療を開始します。

成長すればするほど脱出した臓器が胎児の肺を押しつぶし、危険な状態になっていくからで、出生直後から人工呼吸管理を行った上で、体の血液循環を安定させ、できるだけ早期に、手術に耐えられるようになった時点で速やかに、生育時に閉じ切れなかった横隔膜を閉じる手術が行われます。

すべての医療機関で可能な方法ではないものの、人工肺(ECMO)という特殊装置を用いて新生児の血液循環を改善させてから、手術が行われることもあります。横隔膜の欠損が大きい場合は、人工膜を使用して横隔膜の形成手術が行われます。

しかし、最高の環境で早期に手術が行われても、生存率は芳しくないのが実情です。出生後24時間以内の発症例は予後が悪く、救命率は約50パーセント程度と見なされています。出生後1日以上を経過してから呼吸障害などで後外側裂孔ヘルニアが見付かった場合や、生後たまたま他の疾患の検査時に見付かった場合は、肺の発育が良好なため、治療成績は格段に良好です。

年長になってから発症する遅発性の後外側裂孔ヘルニアでは、小児科や小児外科医、消化器外科の医師による治療で100パーセント救命されます。

🇳🇪高カイロミクロン血症

血液中にカイロミクロンが異常に蓄積し、時に急性膵炎を発症する疾患

高カイロミクロン血症とは、中性脂肪に富む軽くて大きなリポ蛋白(たんぱく)であるカイロミクロンが血液中に異常に増加し、黄色腫(しゅ)や、時に急性膵(すい)炎を発症する疾患。脂質異常症(高脂血症)の一つです。

脂質異常症(高脂血症)は大きく5つに分類され、その中ではⅠ型脂質異常症(高脂血症)でカイロミクロンの増加を呈し、V型脂質異常症(高脂血症)でもカイロミクロンとVLDL(超低比重リポ蛋白)の増加を呈し、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を示します。

カイロミクロンは中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であり、トリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dl以上の高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)では、カイロミクロンが増加して高カイロミクロン血症を伴うことが多くなります。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)は、原発性高カイロミクロン血症、家族性高トリグリセライド血症とも呼ばれ、常染色体劣性遺伝を示すまれな疾患で、100万人に1人が発症するといわれています。

その原因は、中性脂肪を分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下であり、それにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損に加え、この分解反応に必要なアポリポ蛋白C-Ⅱ、アポリポ蛋白A-Ⅴ、GPIHBP1、LMF1の先天的欠損、さらにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の阻害物質(インヒビター)の存在が挙げられます。

V型脂質異常症(高脂血症)は、成人期に発症し、原因不明です。リポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損、アポリポ蛋白C-Ⅱなどの先天的欠損を認めません。

発症の要因とされるのは、過食、チーズや卵などの酪農製品の取りすぎ、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などのほかの疾患、利尿剤やβ遮断薬などの治療薬に含まれる物質、エストロゲンやステロイド補充によるものなどが挙げられます。

高カイロミクロン血症では、血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dlを超えると、急性膵炎の発症リスクが高まり、発症例ではほとんどが2000mg/dlを超えているとされます。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)では、小児期から脂肪摂取後の膵炎による上腹部痛を繰り返します。また、肝臓や脾(ひ)臓のはれが起きます。皮膚には、黄色腫という小さなピンクがかった黄色い皮疹(ひしん)ができます。

トリグリセライド(中性脂肪)が4000mg/dlを超えると、網膜血管が白色ピンク状に見える網膜脂血症を示します。

高カイロミクロン血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中の総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。食後12時間以上の空腹時に採血します。

血液検査では、中性脂肪(トリグリセライド)の値が基準の値を大きく上回る場合や、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準の値を下回る場合に、治療の対象とすることを確定します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)の場合、薬物療法の効果は限定的であるため、食餌(しょくじ)療法を中心に、運動療法も行ないます。

食餌療法では、1 日の脂肪摂取を15~20g 以下、または総カロリーの15%以下、食後でも血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1500mg/dlを超えない程度にまで、食事での脂肪摂取を制限します。極端な制限が行われるため、ご飯やパンの量を1・2~1・5倍程度食べることにより、1日のエネルギー量を確保することになります。カイロミクロンの生成を抑える中鎖脂肪酸(MCT)製品を使うことも、治療および予防に有効です。

運動療法では、積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、治療のスピードを早め、症状の悪化を予防するのに効果的です。

V型脂質異常症(高脂血症)の場合、成人の発症の要因とされる過食、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などの是正を行い、薬物療法としてフィブラート系薬物のベザフィブラートやフェノフィブラート、およびオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)製剤やドコサヘキサンエン酸(DHA)製剤を用います。

急性膵炎の発症、重症度により、生命予後は左右されます。

🇧🇯口角炎

さまざまな原因により、唇の両端である口角部が切れたような状態になる炎症性疾患

口角炎とは、唇の両端である口角部が切れたような状態になる炎症性疾患。口角びらん、口角亀裂(きれつ)とも呼ばれ、俗にカラスの灸(きゅう)とも呼ばれます。

口角部の皮膚から粘膜にかけて赤くなり、次いで亀裂が生じて出血してただれ、潰瘍(かいよう)となります。そのうち、かさぶたで覆われます。普通は、左右の口角部に同時に生じることが多いようです。

大きく口を開けると痛みがあり、かさぶたがはがれて出血したりしますが、一般には2週間程度で治ります。

しかし、長期化して数カ月も治らないケースや、再発を繰り返すケースもあります。

直接的には、持続的な唾液による湿潤、連鎖球菌やブドウ球菌などの細菌の感染、真菌の一種であるカンジダ菌などの感染が原因となって、口角炎が起こります。

高熱の出る疾患、ビタミンB2やビタミンB6やニコチン酸などのビタミン欠乏、貧血や糖尿病などの重症の慢性疾患による衰弱など、全身的な疾患が誘因になることもあります。

また、胃腸などの消化器官の不調、体調の乱れ、ストレス、口腔内の不衛生が誘因になることもあります。

原因が複数あるため自分で見極めるのが危険なケースもあること、全身的な疾患が誘因となって長期化、再発化しているケースもあることから、症状がひどい場合は皮膚科、内科、歯科口腔(こうくう)外科などを受診することが勧められます。

口角炎の検査と診断と治療

皮膚科、内科、歯科口腔外科の医師による診断では、どの疾患がもとにあって発症したのかを調べます。病変部の皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検は、もとの疾患が何かを知る上で有用です。

皮膚科、内科、歯科口腔外科の医師による治療では、もとの疾患があればそれを治すことが先決です。そうでないと、いったん治っても再発を繰り返します。

全身的にはビタミン剤や鉄剤の服用が有効であることが多いのですが、糖尿病によって抵抗力が低下している場合には、抗菌剤(抗生物質)や抗真菌剤の入った軟こうを口角に塗ったりもします。

細菌やカンジダ菌の感染が原因になっている場合も、抗菌剤や抗真菌剤の入った軟こうを口角に塗ります。

また、1週間くらいは大きく口を開けないように注意して生活することも必要です。心身の安静とバランスのとれた食事を心掛け、口唇と口腔内の清潔保持に努めることも必要です。

🇧🇯高カリウム血症

血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態で、重大な障害を生じる危険性も

高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態。普通は、腎臓(じんぞう)が十分なカリウムを排出しないことが原因で起こります。

カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に重大な障害が生じます。

血液中のカリウム濃度は正常値の範囲が通常、3・5~5・0mEq/lと狭く、その範囲内に維持しなければなりません。体は、取り込んだカリウムの量と失った量を一致させることで、そのバランスを保ちます。食物や電解質を含んだ飲料から取り込み、主に尿と一緒に排出されることで失い、消化管や汗からも失います。健康な腎臓は、食事からの摂取量の変化に合わせて、カリウムの排出量を調整できますが、限界を超えると徐々に血液内に蓄積され、高カリウム血症を生じます。

軽度の高カリウム血症の原因として最もよくみられるのは、腎臓への血流を減らす薬や、腎臓が正常な量のカリウムを排出するのを阻害する薬の使用です。このような薬には、トリアムテレン、スピロノラクトン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬があります。

アジソン病も、高カリウム血症の原因になります。アジソン病になると、腎臓を刺激してカリウムを排出させるホルモンのアルドステロンを副腎が十分に分泌しなくなります。この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して、重度の高カリウム血症を引き起こすことがあります。

多量のカリウムが細胞から急に放出された時にも、高カリウム血症は生じます。細胞からカリウムが突然放出されるのは、衝突事故による外傷に伴う広範囲の筋組織の破壊、重度のやけど、コカインの多量吸入などが原因です。カリウムが細胞から血液中に急激に移動すると、腎臓に過度の負担を与え、その結果、生命にかかわる高カリウム血症になります。

軽度の高カリウム血症は、ほとんど症状を起こしません。普通は、定期的な血液検査を受けた際に発見されるか、心電図の変化に医師が気付いて初めてわかる程度です。

血液中のカリウム濃度が5・5mEq/l以上になると、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などの症状が現れます。血液中のカリウム濃度が7~8mEq/lを超えると、危険な不整脈が現れ、心臓が止まる危険性が生じます。

高カリウム血症に気付いたら、早めに内科の専門医を受診し、精密検査と治療を行う必要があります。

高カリウム血症の検査と診断と治療

内科の医師による診断では、血液中のカリウム濃度を測定します。合併している疾患からカリウム濃度上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、副腎皮質ホルモンの測定などが併せて行われ、詳しい原因も診断されます。

軽度の高カリウム血症であれば、食事によるカリウムの摂取量を減らすか、腎臓がカリウムを排出するのを阻害する薬の服用を中止するだけで、治療としては十分です。腎臓が正常に機能していれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、アルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。

重度の高カリウム血症には、迅速な治療が必要不可欠です。消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。

さらに迅速な治療が必要な場合は、カルシウム、ブドウ糖、またはインスリンを点滴で投与します。カルシウムはカリウム濃度そのものは下げませんが、高濃度のカリウムの影響から心臓を数分間、保護する働きがあります。ブドウ糖とインスリンは、カリウムを血液中から細胞へ移動させ、血液中のカリウム濃度を下げます。

こうした方法で効果がない時や腎不全を起こしている場合は、透析を行って余分なカリウムを取り除く必要があります。

🇳🇬交感性眼炎

片方の目のぶどう膜が損傷する外傷や手術を受けた後、1カ月以上経過してから、反対側の健康な目にも炎症が起こる疾患

交感性眼炎とは、片方の目の虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜からなるぶどう膜が損傷するような外傷や手術を受けた後、1カ月以上経過してから、反対側の健康な目にも炎症が起こる疾患。

ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、果物のぶどうの色をしていて、形もぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つの部分で構成されています。

虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが交感性眼炎ですが、外傷や手術を切っ掛けとして、色素細胞が免疫系にさらされることにより色素に富んだぶどう膜に対する自己免疫反応として引き起こされ、多くの場合、外傷や手術を受けてから1カ月から2カ月を経て症状が現れます。

色素細胞に対する自己免疫反応という意味では、原田病と呼ばれる日本人を含め、アジア系の人種で頻度の高いぶどう膜炎と同じ病態であり、経過も似ていますが、外傷や手術が切っ掛けになる点で区別されます。

交感性眼炎の症状としては、原田病と似ており、発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。

目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなど、通常、両目に現れます。一般的に脈絡膜炎を認め、しばしばその上に滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

目のけがをした後は、眼科医の指示に従って、受傷していない目の定期的なチェックも必要で、異常を感じた場合は速やかに眼科医の診察を受けて下さい。早期治療を行わないと、視力が回復力しない場合もあります。

交感性眼炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、原田病と呼ばれるぶどう膜炎と基本的に同じ検査を行います。

眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

ほかに血液検査を行うと、白血球の増大、赤沈の高進、CRP(C反応性蛋白〔たんぱく〕)陽性化などの炎症性の反応がみられます。また、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中で、DR4またはDR53を持った人によく発症することも原田病と似ています。

眼科の医師による治療は、原田病の治療に準じて、目に永久的な障害が出るのを防ぐため早期に開始します。治療の中心は、炎症を鎮めるためのステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の大量点滴投与です。

ホルモンの一種であるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。免疫抑制薬を使うこともあります。

穿孔(せんこう)性の目の外傷を受けた人で、HLAーDR4またはHLAーDR53など遺伝的素因を持つ場合には、十分な経過観察が必要です。

重篤な交感性眼炎を起こした片方の目の視機能の回復が全く期待できない場合には、もう片方の目に交感性眼炎が起こる危険性を最小限にするために、眼球摘出や眼球治療の外科手術を行うこともあります。

🟩アメリカ、はしかで2人目の子供が死亡 感染者約650人に

 アメリカ南西部で発生した、はしか(麻疹)の流行により、2人目の子供が死亡したと、当局が6日に発表しました。感染者は約650人に上っています。  テキサス州の医療機関、UMCヘルスシステムの幹部は、最近はしかと診断された学齢期の子供が亡くなったことを明らかにしました。基礎疾患は...