2023/05/29

🟧作り笑いの「笑いヨガ」で糖尿病患者の血糖値低下 福島県立医科大学が研究

 グループで笑顔を作りながら発声し、深い呼吸を促す運動療法「笑いヨガ」。福島県立医科大学などの研究チームは、笑いヨガが糖尿病患者の血糖値を継続的に下げる効果があるとの研究成果を発表しました。論文が国際科学誌に掲載されました。

 研究チームは、大阪大学医学部附属病院糖尿病センターに受診している、生活習慣の影響が大きい「2型糖尿病」の患者42人について、笑いヨガのプログラムに参加するグループと、不参加のグループに分類。プログラムでは12週間の期間中に計8回、1時間の笑いヨガと30分の健康講座を実施しました。

 直近1~2カ月の血糖状態を示す「ヘモグロビンA1c」を両グループで比較すると、参加したグループの平均値は7・07%から6・82%に低下した一方、不参加のグループの平均値は7・19%から7・26%とほぼ横ばいでした。

 近年の研究では、ヘモグロビンA1cが5年間にわたり7%未満だと、糖尿病の合併症になるリスクが大幅に減るとされています。

 研究チームの大平哲也・福島県立医科大学教授(疫学)は、「プログラム参加者の継続率、出席率はともに高く、笑いヨガが血糖管理の有効かつ続けやすいアプローチであることが示せた」としています。

 福島県立医科大学は6月15日まで、笑いヨガの健康教室の参加者を募集しています。体力の衰えやフレイル(要介護手前の状態)の可能性を感じる50歳以上が対象。フレイルの改善効果を調べるため、6月、9月、12月に身体測定などの検査を行います。前半コース(7~9月)か後半コース(9~11月)の各10回で、いずれか指定されたほうに参加します。参加費は無料で定員は70人。申し込みは同大疫学講座(024・547・1343)へ。

 2023年5月29日(月)

🟧認知症リスクを判定できる新評価尺度「JーMCI」を開発 日本老年精神医学会

 認知症の早期診断につなげようと、日本老年精神医学会は本人や家族が13の質問に答えることで、認知症のリスクを判定できる新たな評価尺度を開発しました。

 日本老年精神医学会が新たに開発したのは、認知症のリスクを判定する「JーMCI」という評価尺度です。

 認知症は早期の診断や治療が重要とされていて、リスクのある人を早い段階で受診につなげることが課題となっています。

 新たな評価尺度は、認知症の症状のうち重要な特徴を13の質問として抽出し、本人や家族などが「はい」か「いいえ」で回答するもので、認知症の前段階とされる「MCI=軽度認知障害」のリスクも調べることができるということです。

 本人が回答する際には自分の症状を軽く評価する傾向があることなどから、正確な判定ができるように調整されているということで、学会によりますと実際の患者などに参加してもらい検証したところ、認知症のリスクがある人の90%以上を見分けることができたということです。

 今月から一部の健康診断の会場などで活用が始まっているということで、今後、ウェブサイトなどで利用できるようにすることを検討しているということです。

 日本老年精神医学会の朝田隆理事は「リスクのある人を見付け出すスクリーニングに役立ててもらい、早期受診を促したい」と話していました。

 2023年5月29日(月)

2023/05/28

🟧東京都内の梅毒患者、今年に入って1422人 過去最多ペースで増加 

 性感染症の「梅毒」と診断された東京都内の患者数が、過去最多のペースで増えています。今年に入って1422人(5月21日時点)に達し、年間の患者数が最多だった昨年の同時期(1188人)より約2割多くなっています。東京都は検査態勢を強化して、注意を呼び掛けています。

 東京都によると、昨年の年間患者報告数は3677人で、現在の調査方法となった1999年以来、最多で、前年の1・5倍、2年前の2・3倍と右肩上がりに増えています。性別や年代別でみると、男性は年代にばらつきがあるものの、女性は約7割が20歳代でした。

 梅毒は全国的にも増加傾向で、国立感染症研究所によると、14日時点の報告数は5164人と、前年同期より4割以上増えています。性的な接触で感染する疾患ですが、患者の中には、性風俗店の利用歴や勤務歴がない人が3割程度おり、市中で感染が広がっている可能性があるといいます。

 典型的な初期症状は、性器や口内のしこりです。ただ、痛みを伴わないため気付かない人も多くいます。数週間で症状がいったん消えた後、しばらくして全身に発疹ができ、放置しておくと内臓や神経に異常が現れることもあります。

 妊娠中の女性が感染すると、胎盤を通じて胎児が感染する「先天梅毒」が起こることがあります。死産や障害を持って生まれるリスクが高まり、流産や早産になることもあります。

 日本性感染症学会理事長の高橋聡・札幌医大教授は、「感染者の増加とともに、先天梅毒が増える可能性がある。梅毒は治る病気なので、気になる症状や不安があったら、ためらわずに検査を受けてほしい」と話しています。

 東京都は「新宿東口検査・相談室」(新宿区、03・6273・8512)や「多摩地域検査・相談室」(立川市、080・2022・3667)などで、匿名で受けられる予約制の無料検査を実施してきました。患者の急増を受け、来月、区立を含む計8カ所の保健所で臨時の検査日を設けることを決定。医療従事者向けの研修会も開催します。

 性感染症に詳しい「プライベートケアクリニック東京」(新宿区)の尾上泰彦院長は、「今や梅毒は誰でも感染する可能性のある病気。治療薬があるので、不安があればすぐに検査してほしい」と呼び掛けました。

 2023年5月28日(日)

🟧中国本土のクルーズ船が博多に寄港、コロナ禍後初 6月以降本格化も

 中国の船会社が運航するクルーズ船「ブルードリームスター」(約2万5000トン、全長約180メートル)が28日午前、福岡市博多区の博多港に寄港しました。福岡市によると、中国本土発のクルーズ船が日本に寄港するのは約3年ぶりで、新型コロナウイルス禍で受け入れを停止してからは初めて。本格的に再開すれば、国内の観光業回復に弾みがつくと期待されます。

 ブルードリームスターは午前8時ごろ着岸。午前9時ごろ、和太鼓の演奏に歓迎されながら、入国審査を終えた私服姿の家族連れなど利用客が「中央ふ頭クルーズセンター」から出てきました。約35人ずつのグループに分かれ、岸壁に用意された観光バス8台に分乗しました。

 ブルードリームスターは中国・上海を出発し、博多港に28日夜まで停泊し、上海に帰還。中国本土―日本間のクルーズ船による往来回復に向けたテストケースとなる見込み。

 中国政府は感染を徹底して抑え込む「ゼロコロナ政策」のため、海外への団体旅行を禁じてきたものの、今年2月に一部解禁しました。現状では日本は対象国に含まれていないものの、今後対象となる可能性があり、関係者によると、中国では6月以降、日本へのクルーズ船再開が本格化するといいます。

 2023年5月28日(日)

🟧仕事引退したら心疾患の発症リスク減少 35カ国で10万人調査、京大など

 仕事を引退すると心筋梗塞(こうそく)などの心疾患の発症リスクが下がるとの研究結果を、京都大と早稲田大、アメリカのハーバード大の研究チームが26日発表しました。運動する機会の増加などが影響した可能性があるといいます。現役を続ける高齢者は積極的な対策が必要なことを示しており、論文が国際科学誌に掲載されました。

 研究チームは、退職した人と、高齢になっても働き続ける人とでどちらが心疾患にかかりやすいか調べるため、日本を含む35カ国の疫学調査を活用。50~70歳の男女約10万人分のデータを比較し、加齢や健康状態が発症リスクに与える影響を統計学的手法で調整しました。

 その結果、退職した人のほうが現役を続けた人より発症リスクが2・2ポイント、ウォーキングなどの運動が不足するリスクも3ポイントそれぞれ低くなりました。仕事のストレスから解放されたり、運動する時間が生まれたりするためとみられるといいます。

 脳卒中や高血圧、糖尿病については、退職した人と現役を続けた人の間で明確な差はありませんでした。

 仕事の引退と心疾患の関係ではこれまで、アメリカの研究で関連はみられないという結果が出ていました。一方、ヨーロッパでは引退すると心疾患リスクが上がるという報告が複数あり、「引退は少なくとも心疾患リスクを引き下げることはない」「長く働いたほうがよい」と考えられていました。研究チームは今回、定説を覆した形です。

 佐藤豪竜(こうりゅう) ・京都大助教(社会疫学)は、「各国で年金の支給開始年齢や定年が引き上げられているが、引退の遅れは必ずしも健康によいとはいえない」とした上で、「就労を続ける場合、運動する機会を意識的に設けることが重要だ」と指摘しました。

 川崎良・大阪大教授(公衆衛生学)は、「多国籍で大規模かつ、 精緻(せいち)に研究した点で大変貴重な知見だ。高齢者の就労に関する議論には、労働力の確保だけでなく、健康をどう維持するかという視点も求められる」と話しました。

 2023年5月28日(日)

2023/05/27

🟧目の難病の遺伝子治療薬、 厚労省の専門家部会が承認を了承 アメリカでは1億円超、国内価格は未定

 アメリカでは1億円を超える価格が付いている遺伝子治療薬が、日本で承認される見通しになりました。遺伝性の視覚障害に対する薬で、厚生労働省の専門家部会が26日、有効性が期待され、安全性にも問題がないと判断されたなどとして、承認を了承しました。正式に承認されれば、目の病気では国内初の遺伝子治療薬となります。

 この薬は、製薬大手ノバルティスファーマが製造販売する「ルクスターナ注」。アメリカでの価格は両目で計85万ドル(約1億2000万円)で、同国の最も高額な薬の1つになっています。

 対象は、「RPE65」という遺伝子の異常で生じる「遺伝性網膜ジストロフィー」の患者。眼球の奥にある網膜で光を感じる仕組みがうまく働かなくなる難病で、治療法がありませんでした。はっきりした推計はないものの、RPE65に異常のある患者数は少ないとされます。また、病状が進んで光を感じる細胞が失われた患者には効果が期待できず、使える患者はさらに限定されるとみられます。

 両目の網膜下に1回ずつ注射して、正常なRPE65遺伝子を患者の網膜の細胞に入れ、光を感じる仕組みが働くようにします。遺伝子を網膜の細胞まで届ける「運び役」として、安全性の高いアデノ随伴ウイルス(AAV)を使います。アメリカでは2017年、ヨーロッパでは2018年に承認され、現在は40以上の国や地域で承認されています

 厚生労働省によりますと、国内で行われた治験でも投与を受けたあと、患者はより暗い場所でも光を感じ取り歩けるようになったと報告されるなど、有効性が期待され、安全性にも問題がないと判断されたことなどから、26日、専門家による部会で使用の承認が了承されました。

 遺伝子治療薬は製造工程が複雑で、品質管理も困難。研究や開発にコストがかかるため、高額になります。国内では現在、3種類の遺伝子治療薬が承認され、2020年に承認された、筋肉が徐々に委縮する「脊髄(せきずい)性委縮症」に対する「ゾルゲンスマ」は、約1億6700万円の価格が付きました。

 ルクスターナ注の国内価格は今後決まります。欧米のように高額になるとみられるものの、国の高額療養費制度などが使えれば、患者負担は抑えられます。

 2023年5月27日(土)

🟧「サル痘」改め「エムポックス」に名称変更 国内では感染者増

 厚生労働省は26日、天然痘に似た感染症「サル痘」の名称を「エムポックス」に変更したと発表しました。差別的な表現につながったことや、動物福祉の観点から、世界保健機関(WHO)が英語表記で「mpox」に名称変更したことに伴います。

 エムポックスは、ウイルスを持つ動物や、患者の体液・血液との接触で感染します。アフリカ中部や西部で時々流行する感染症でしたが、昨年5月以降、欧米を中心に感染が拡大し、WHOが7月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言。今年5月に緊急事態終了を宣言しました。

 厚労省によると、日本国内で初めて患者が確認された昨年7月以降、163人の感染が確認されました。21日までの1週間で新たに14人の感染が確認されており、国内では感染者が増え続けています。

 厚労省は、「発疹などの症状がある人は医療機関に相談してほしい」と呼び掛けています。

 サル痘という名称は、1958年にポリオワクチン製造のために世界各地から霊長類が集められたデンマークの実験施設で、サルに天然痘のような症状が出たことを切っ掛けに、その名前が付けられ、英語表記では「monkeypox」、日本語表記では「サル痘」の名称が使われてきました。

 ただ、自然界では、サルではなくアフリカに生息する齧歯(げっし)類が宿主と考えられています。

 2023年5月27日(土)

🟩世界のサンゴの44%が絶滅危機 温暖化影響、COP29で公表

 世界のサンゴ892種のうち44%が絶滅の危機にあると、国際自然保護連合(IUCN)が14日までに発表しました。温暖化が主な要因で、IUCNは「急速な気候変動が地球上の生き物に与える影響の深刻さを表している」と警鐘を鳴らしました。  アゼルバイジャンの首都バクーで開催中の国連気...