2023/12/05

🟧妊娠初期のビタミンAサプリ摂取、子供に心臓病リスク 妊娠希望時の摂取も注意

 国立成育医療研究センターなどは、母親が妊娠初期にビタミンAのサプリメントを摂取すると、生まれる子供が心臓病を抱えるリスクが高まるとの研究成果をまとめました。従来もビタミンAの過剰摂取を避ける必要性が指摘されており、大規模調査で裏付けました。

 横浜市立大学などとの共同研究の成果で、論文がアメリカの心臓協会の学術誌に掲載されました。環境要因が子供の健康に与える影響を調べる環境省の疫学調査「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」のデータを用いました。

 約9万組の母子について、3歳までに心臓の各部位を隔てる壁に穴ができる「心室中隔欠損症」や「単心室」など先天性の心臓病と診断された子供と、化学物質や環境との関係を調べました。

 妊娠初期に「ビタミンAサプリメントを内服しているか」との質問に「はい」と答えた妊婦では、「いいえ」とした人に比べて生まれる子供が心臓病を持つリスクが約6倍に高まりました。

 ビタミンAは胎児の発達に必須の栄養素ですが、過剰に取ると胎児の奇形などにつながると報告されています。胚が分化する過程でビタミンAの活性体のレチノイン酸が作用し、心臓などに奇形を生じると考えられているものの、発症の詳しい仕組みはわかっていません。 厚生労働省は、妊娠を計画する人や妊娠3カ月以内の人はビタミンAの大量の摂取を避けるべきだとしています。

 また、妊婦が降圧薬や抗てんかん薬のバルプロ酸を服用している場合、生まれてくる子供の心臓病のリスクは約4〜5倍でした。ただ、薬を控えるかどうかは主治医と相談すべきだとしています。母親が先天性の心臓病を患ったことがある場合、リスクは約3倍でした。

 研究をまとめた国立成育医療研究センターのデータサイエンス部門長で小児循環器医の小林徹さんは、「胎児の心臓が形成されるのは受精から3カ月ぐらいまでとされている。妊娠が判明するまでの時間差を考慮すると、妊娠初期だけでなく、妊娠を考えている女性はビタミンAのサプリは飲まないほうがよい」と指摘しています。

 2023年12月5日(火)

🟧「咽頭結膜熱」と「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎」の感染者数さらに増加 過去10年間で最も多い状況が続く

 子供を中心に流行が続く咽頭結膜熱の11月26日までの1週間の患者数は、前の週からさらに増え、過去10年間で最も多い状況が続いています。

 また、溶連菌感染症の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎も感染者数が過去10年間で最多となり、専門家は「今後も流行が続くと予想されるため、周囲の感染状況に応じて対策を取るようにしてほしい」と話しています。

 プール熱とも呼ばれた咽頭結膜熱は子供を中心に高熱や結膜炎などの症状が出るウイルス性の感染症で、せきやくしゃみなどの飛まつで感染するほか、ウイルスが付着したタオルなどを介しても感染します。

 国立感染症研究所によりますと、11月26日までの1週間に全国約3000の小児科の定点医療機関から報告された患者数は、前の週より771人多い1万1139人となりました。

 1医療機関当たりでは前の週を0・24人上回って3・54人となり、過去10年間での最多を6週連続で更新しました。

 都道府県別では、北海道が7・99人、福岡県が7・24人、福井県が6・48人、佐賀県が5・96人、奈良県が5・91人、三重県が5・56人などとなっていて、合わせて26の都道府県で国の警報レベルの目安となる「3人」を超えています。

 また、主に子供が感染し、発熱やのどの痛みなどの症状が出る溶連菌感染症の一種、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎の患者も、増加が続いています。

 11月26日までの1週間に報告された患者数は前の週から253人増えて全国で合わせて1万2146人、1医療機関当たりでは3・86人となっていて、過去10年間で最も多くなりました。

 都道府県別では、鳥取県が国の警報レベルの基準となる「8人」を超えて9・53人となっていて、次いで宮崎県が7・06人、千葉県が6・1人となっています。

 子供の感染症に詳しい国立病院機構三重病院の谷口清州院長は、「咽頭結膜熱などのウイルス感染症の場合、3日以上高熱が続くと脱水症状を起こすことも懸念されるので注意が必要だ。また、A群溶血性レンサ球菌咽頭炎は細菌性の感染症で、抗菌薬による治療が可能なので早めに医療機関を受診してほしい。流行は今後も続くと予想されるため、周囲の感染状況に応じて対策を取るようにしてほしい」と話していました。

 2023年12月5日(火)

2023/12/04

🟧再生可能エネルギー発電容量、2030年までに3倍 COP28で110カ国超賛同

 アラブ首長国連邦(UAE)ドバイで開催されている国連(UN)気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で2日、2030年までに世界全体の再生可能エネルギー発電容量を3倍に引き上げることに、日本を含む110カ国以上が賛同しました。

 2050年までにカーボンニュートラルを実現させるためには、太陽光発電、風力発電、水力発電などの再生可能エネルギーが、石炭や石油、ガソリンに取って代わることが極めて重要です。

 UAEのスルタン・ジャベル議長は、加盟国の半数以上が2030年までに世界全体の再生可能エネルギー発電容量を3倍に増やし、エネルギー効率を2倍にする誓約に署名したと述べました。

 だが、この誓約には、サウジアラビア、ロシア、イランなどの主要産油国のほか、石油消費量の多い中国も署名していません。

 これとは別に、COP28では同日、2050年までに世界全体の原子力発電の設備容量を2020年の3倍にする宣言に、日本やアメリカ、イギリス、フランスなど20カ国以上が参加しました。

 アメリカのジョン・ケリー大統領特使は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの目標達成に原子力発電技術は必要不可欠だと述べ、石炭火力発電所に代わる理想的な解決策として、次世代型原発「小型モジュール炉(SMR)」技術の利点を強調しました。

 2023年12月4日(月)

🟧塩野義製薬の抗菌薬「セフィデロコル」、厚労省が承認 欧米に続いて日本でも販売へ

 塩野義製薬は11月30日、既存の抗生物質が効かない薬剤耐性感染症の治療薬「セフィデロコル」について、厚生労働省から製造販売の承認を受けたと発表しました。アメリカやヨーロッパではすでに販売しており、日本でも近く販売を始める予定です。

 塩野義は2022年3月に、日本での製造販売の承認を申請していました。セフィデロコルは2020年にアメリカで販売を始め、2023年4〜9月期にアメリカとヨーロッパで計111億円の売り上げがあり、海外市場を開拓する戦略製品となっています。日本でも薬剤耐性感染症向け抗菌薬として一定の需要が期待できるといいます。

 セフィデロコルは11月7日、「抗菌薬確保支援事業」の第1号に指定されました。抗菌薬確保支援事業は、厚労省が薬剤耐性対策の一環として新たに試行導入したもので、抗菌薬の販売を手掛ける製薬企業の収益の一定額を保証する制度で、製薬企業が薬剤耐性対策(販売量の適正水準維持)に協力することで生じる減収に対して一定額を支援すると同時に、抗菌薬の開発を促す仕組みを作ることで、薬剤耐性対策を推進することを目的としています。

 抗菌薬は開発に多額の費用がかかる一方で、使いすぎると細菌が薬剤耐性を持つ可能性が高まるとされ、過剰な利用の抑制が求められています。セフィデロコルがあまり使われなかった場合には、一定の売り上げに達しなかったぶんを厚労省が補います。

 塩野義製薬は、「(セフィデロコルは)薬剤耐性菌による感染症で苦しむ日本の患者に対する新たな治療選択肢となることが期待される」とコメント。さらに、「当社では、抗菌薬適正使用推進の一環として、セフィデロコルの感受性検査の開発・提供に向け取り組みを進めている」としています。

 2023年12月4日(月)

🟧国際的な環境NGOが日本を「化石賞」に4回連続で選出 気候変動対策に消極的

 ドバイで開かれている気候変動対策を話し合う国連の会議「COP28」で、国際的な環境NGOは、日本が石炭火力発電所などを延命させ、再生可能エネルギーへの移行を遅らせているとして、気候変動対策に消極的だと判断した国に贈る「化石賞」に選んだと発表しました。

 「化石賞」は、世界各国の環境NGOが作るグループ「気候行動ネットワーク」が、COPの期間中、パリ協定の実施を妨げ、気候変動対策に消極的だと判断した国を毎日選び、皮肉を込めて贈っています。

 3日、COP28での最初の発表を行い、日本、ニュージーランド、そしてアメリカを化石賞に選んだとしています。日本の受賞は4回連続となります。

 気候行動ネットワークは日本について、火力発電所の化石燃料の一部を、二酸化炭素を排出しないアンモニアなどに転換することで排出削減を進めようという日本の取り組みに触れ、「環境に配慮しているようにみえて、実際は国内だけでなくアジア全体で化石燃料による発電を延命し、再生可能エネルギーへの移行を遅らせるグリーンウォッシュ戦略だ」などと批判しています。

 化石賞のトロフィーを受け取るパフォーマンスをした日本の環境NGOのメンバーの長田大輝さんは、「気候変動の影響が世界中で出ていて、一刻も早く脱化石燃料をしないといけない中、日本はそれができていない。脱化石燃料に向けて具体的な行動をしないといけない」と話していました。

 今回のCOP28でも気候変動対策に消極的な国として、国際的な環境NGOから4回連続で「化石賞」に選ばれたことについて、日本政府関係者は「民間団体の活動に、政府としてコメントすることは差し控える」とした上で、「日本政府が進める温室効果ガスの排出削減対策が講じられていない石炭火力発電所の新規建設は行わないという日本の脱炭素の取り組みを世界に発信していきたい」と話していました。

 2023年12月4日(月)

🟧日本初の「内臓脂肪減少薬」が来春発売 購入には高いハードルも

 大正製薬(東京都豊島区)は薬局などで買える一般用医薬品(市販薬)として、日本初の内臓脂肪減少薬「alli(アライ)」を来春、発売すると明らかにしました。販売は研修を受けた薬剤師がいる限定店舗のみで、購入も運動や食事といった生活習慣の改善に取り組んでいる人に限られます。

 アライは食事に含まれる脂肪の分解を阻害し、排泄(はいせつ)させる作用を有します。主な服用対象は腹囲が男性85センチ以上、女性90センチ以上で、糖尿病や脂質異常などの健康障害がない18歳以上。

 日本では肥満に加え健康障害があると「肥満症」などとして治療の対象となる一方で、健康障害がない場合は服薬や手術などの治療手段がありませんでした。アライは、摂取した脂肪の約25%を排出することが期待できるとされ、医療用医薬品としての発売をへずに薬局とドラッグストア(薬店)で購入が可能な市販薬として注目を集めています。

 ただ、あくまで食事や運動といった生活習慣の改善を助ける補助的な使用であり、購入には服用3カ月前から生活習慣の改善に取り組む、服用1カ月前から生活習慣の改善に取り組んでいる記録を示すなど、高いハードルがあります。また、同剤を販売できる薬局も、専用の研修を受けた薬剤師がいる店舗に限られます。

 仙台市で11月25、26日に開かれた日本肥満学会・日本肥満症治療学会学術集会では、アライを紹介する大正製薬のブースに注目が集まりました。千葉大学医学部付属病院の横手幸太郎院長は同学会で、「行動改善と組み合わせて未病の段階から対処することにより、予防医学を新しいレベルで達成することが期待される」と述べました。

 2023年12月4日(月)

2023/12/03

🟧年代別に推奨する運動頻度のガイド案を作成 成人には1日60分以上の歩行を推奨

 新型コロナウイルスの影響などで、子供の体力が低下する中、厚生労働省は年代別に推奨する運動の頻度を示したガイド案を取りまとめました。

 スポーツ庁の調査では、小中学生の体力テストの合計点がここ数年低下していて、コロナ禍で子供の運動機会が制限された影響などが指摘されています。

 こうした中、厚生労働省は、子供(18歳未満)、成人(18歳以上)、高齢者に分け、年代別に健康のために推奨する運動量の目安を示したガイド案を取りまとめました。

 ガイド案では、18歳未満の子供は、世界保健機関(WHO)が推奨している参考値として、通学なども含めて、1日60分以上少し息が上がる程度の体を動かす活動を行うほか、ジョギングなどより強度の高い運動を週に3日以上行うことを示しました。

 さらに、スマートフォンなどの画面を見てすごす時間や座りっ放しの時間を減らすことも示しました。

 一方、部活動などで激しすぎる運動をすると、体の故障につながる可能性があるとして、週に2日以上の休養日を設けるよう注意を促しています。

 また、18歳以上の成人は1日60分以上、高齢者は1日40分以上、ウォーキングなどの活動を行うことを推奨しているほか、成人と高齢者ともに、週に2日から3日、スクワットなどの「筋トレ」を行うことが望ましいとしています。

 厚労省は、年度内にもガイドを作って自治体などに周知し、地域での健康づくりのための計画策定などに生かしてもらうことにしています。

 2023年12月3日(日)

🟥茨城県の救急電話相談、2カ月間で最多2万9170件 選定療養費徴収が影響か

 救急車を呼ぶか迷った際に助言を受けられる茨城県の「救急電話相談」で、昨年12月と今年1月の2カ月間の相談は前年同期比約12%増の2万9170件に上り、過去最多となったことが11日、県への取材でわかりました。12月に始まった緊急性のない救急搬送患者から「選定療養費」を徴収する制...