2024/01/31

🟧特発性拡張型心筋症に新治療法、ネット装着で収縮力改善 名古屋大が開発

 心臓の筋肉が薄くなって収縮力が低下し、末期になると心臓移植でしか助からない拡張型心筋症。拡張した心臓を患者の適切な心臓の形に合わせて作ったネットで覆い、圧迫して収縮力を取り戻す新しい治療法を、名古屋大病院心臓外科の秋田利明特任教授が開発しました。

 これまでに4人の患者に手術を行い、スポーツや仕事に復帰できるまでに心臓機能が回復した人もいます。

 拡張型心筋症のうち、高血圧や心筋梗塞といった特定の原因が見付からない「特発性拡張型心筋症」は国の指定難病で、2021年時点で約1万9000人の患者がいます。全身に血液を送り出す左心室の筋肉が次第に薄くなり、送り出す血液量を確保するために左心室が拡張します。発症のピークは50歳代で、息切れや呼吸困難を伴います。

 さまざまな薬物治療でも改善しないと補助人工心臓を埋め込み、制御装置や電源を入れたバッグを身に付け、24時間の付き添いが必要になります。心臓移植待機患者の約6割が拡張型心筋症ですが、脳死での臓器提供者が少ないため、移植に至らず死亡する人も少なくありません。

 欧米でも患者が多く、1990年代には心臓の筋肉の一部を切り取って縫い合わせ、拡大した左心室を縮める「バチスタ手術」が広がったものの、長期的にはポンプ機能の低下が避けられず、アメリカの心臓協会は2009年の指針で推奨しないとしています。

 2000年代からネットで心臓全体を覆って手術中に大きさを調整し、心臓への圧力を高める製品が欧州で認可され、アメリカで臨床試験(治験)が行われました。しかし、肺に血液を送り出す右心室も丸ごと覆ってしまうため、左心室に必要な圧力をかけると、右心室の動きに支障が出たり、右心室の圧力を弱めると左心室への圧力が不十分だったりというジレンマを解決できませんでした。

 2006年、縫い目なしで立体的なニット製品が編める島精機製作所(和歌山市)のコンピューター編み機の新聞記事を目にした秋田教授は「心不全患者の心臓画像を基に設計すれば、患者の心臓の形に適したネットが作れるのではないか」とひらめきました。主任教授に就任した金沢医大で研究を重ねるうち、ネットの右心室の部分を穴のように大きく開ければ動きが窮屈にならず、左心室だけ圧迫することができることを発見しました。

 テーラーメードのネットを患者の心臓に専用器具を使って装着する時間はわずかに数分。左心室の形が整うことで、左心室からの血液の逆流を防ぐ僧帽弁の働きもよくなり、体に酸素を取り込む能力を示す数値が劇的に改善しました。

 1例目の60歳代患者は手術4年後でも週2回のバドミントンと週4回のジム通いができるまでになりました。ほかの3人も心臓機能が改善または維持ができており、仕事を再開したり、遠距離の旅行を楽しんだりしている人もいます。

 50歳代以降の中高年を主な対象とし、健康寿命を5~10年延長できれば、心臓移植や補助人工心臓に代わる有力な治療法になり得るというのが秋田教授の考えです。

 名古屋大のほか、東北大、東京大、東京慈恵医大、大阪大で計5例の治験を重ね、2024年度からは全国12~15の病院に拡大し、早期の保険適用を目指します。事業化に当たっては、命に直結する心臓ネットの開発に国内の医療機器メーカーが尻込みしたため、自らベンチャー企業を立ち上げました。

 秋田教授は「手技も簡単で、将来的には地元の病院でも手術ができるようになる。海外展開も検討中だ」と話しています。

 2024年1月31日(水)

🟧睡眠不足で最も労働生産性低下 筑波大が会社員の生活習慣調査

 会社員の生活習慣と労働生産性(労働パフォーマンス)の関係を分析した結果、男女ともに睡眠による休息の不足が労働生産性の低下に最も強く関係し、運動習慣の欠如や就寝前の夕食なども関連していることが、筑波大の研究チームの調査でわかりました。

 研究チームは、日本のある企業に勤める21~69歳の従業員約1万2476人を対象に、2016年の健康診断の質問票や診療報酬明細書、労働生産性に関する自己評価のデータを基に、生活習慣と労働生産性の関係を分析しました。病気による影響は除き、生活習慣では喫煙や運動、食事、飲酒、睡眠に関する11項目を検討対象としました。

 その結果、労働生産性の低下と最も関連の強い生活習慣は、男女ともに睡眠による休息の不足でした。男性では次いで運動習慣の欠如や歩行速度の遅さ、喫煙、就寝前の夕食、朝食の欠食が、労働生産性低下に関連していました。女性では次いで就寝前の夕食や食べる速度が速いこと、運動習慣の欠如が、関連していました。

 男女とも、飲酒の頻度や量は労働生産性の低下に関係はなく、女性よりも男性のほうがより多くの生活習慣が関係していることもわかりました。

 研究チームの武田文・筑波大体育系教授(公衆衛生学)は、「企業従業員の労働パフォーマンス改善に向けた取り組みとして、睡眠の改善や運動習慣の定着、適切な時間の夕食摂取について健康教育を行ったり職場環境を整備したりすることが重要だ」と話しています。

 研究結果は2023年11月9日付けで、国際専門誌「ジャーナル・オブ・パブリックヘルス」に掲載されました。

 2024年1月31日(水)

🟧中国、鳥インフルエンザ感染の女性死亡 春節の大移動での拡大を警戒

 中国衛生当局は1月31日までに、鳥インフルエンザ(H10N5型)と季節性インフルエンザ(H3N2型)に感染した女性(63)が浙江省の医療機関で死亡したと発表しました。中国では2月10日の春節(旧正月)に伴い市民の大移動が予想され、当局は新型コロナウイルスを含め感染症の拡大を警戒しています。

 国家疾病予防コントロール局によると、女性は昨年11月末に発熱やせきの症状が出て、12月中旬に死亡しました。鳥から鳥インフルエンザに感染したとみられ、今回のウイルスが人から人へ感染した状況は確認されていないといいます。

 春節の帰省や旅行に伴う特別輸送態勢「春運」が1月26日に始まり、3月5日までに延べ約90億人が移動するとの予測があります。コロナの新変異型「JN・1」の感染拡大が懸念されています。

 2024年1月31日(水)

2024/01/30

🟧山梨県、女性が卵子の凍結保存を行う費用助成へ 東京都に次いで2例目

 妊娠のタイミングと仕事のキャリアとの両立に悩む人を支援するため、山梨県が健康な女性が卵子の凍結保存を行う費用を助成する方向で最終的な調整を進めていることが30日、わかりました。

 山梨県は、出生率の低迷による人口減少に歯止めをかけるため、妊娠を望んだ時に備えて自らの健康を管理する「プレコンセプションケア」の普及を進めています。

 その一環として、県は妊娠のタイミングと仕事のキャリアとの両立に悩む人を支援するため、将来、妊娠を望む健康な女性が卵子の凍結保存を行う費用の一部を助成する方向で最終的な調整を進めています。

 県内に住む女性が対象で、事前に「プレコンセプションケア」や、卵子を取り出すリスクを学ぶ機会を持つことなどを条件とし、対象年齢や人数などについて詰めの調整を進めているということで、年間20万円程度を上限に助成し、凍結した卵子を使った治療にも最大10万円程度を助成する方針です。

 県は、必要な費用を2月定例県議会に提案する2024年度当初予算案に計上します。

 山梨県によると、都道府県が卵子の凍結保存費用の助成を実施するのは、東京都に次いで2例目。

 2024年1月30日(火)

🟧東京圏の転入超過12万6515人、東京都の転入超過6万8285人 一極集中が再び加速

 総務省は30日、住民基本台帳に基づき2023年に都道府県をまたいで引っ越し、転入届を出した人の移動を集計した人口移動報告を発表しました。

 東京圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)では、転入者が転出者を上回る「転入超過」が12万6515人でした。東京圏への流入は新型コロナウイルス禍で一時は鈍ったものの、転入超過は2年連続で前年を超えて、2022年より2万6996人増え、2023年の転入超過はコロナ流行前に当たる2019年の85%まで戻りました。2014年からは外国人の移動も調べていますが、日本人に限れば28年連続の転入超過でした。一極集中が再び強まっています。

 都道府県別でみると、転入超過は東京都と神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、滋賀県、福岡県の7都府県でした。残り40道府県は転出者が転入者を上回る「転出超過」でした。

 東京都の転入超過は6万8285人と2022年よりも3万262人増え、2年連続で前年を上回りました。コロナ禍で在宅勤務が広がり転入超過は一時は減ったものの、足元では増加傾向に転じ、コロナ流行前だった2019年の8万2982人にも近付き、東京一極集中が再び加速しました。

 2024年1月30日(火)

2024/01/29

🟧早期乳がんの新たな治療法が始まる 切除手術より負担少ない治療に期待

 早期の乳がんの患者に対し、胸に細い針のような電極を刺して熱でがんを焼いて死滅させる新たな治療法が昨年12月に保険適用となり、東京都内の病院で25日から患者への治療が始まりました。乳房を切除する手術よりも負担の少ない治療になると期待されています。

 この治療法は「ラジオ波焼灼(しょうしゃく)療法」と呼ばれ、がんの中に外から細い針のような電極を刺して、ラジオ波帯の電流を流し、発生する熱によってがんを死滅させるもので、新たに早期の乳がんへの治療法として昨年12月15日、保険適用となりました。

 これを受けて東京都目黒区の東京医療センターでは、25日からこの治療法を始め、医師が画像を見ながら、患者の胸に慎重に電極を刺して治療を行いました。

 乳がんの治療は早期でも乳房の一部や全部を切除する手術が中心となっていますが、この治療法は、傷が小さいため体への負担も少なく、これまでの臨床研究では、切除手術と同等の効果が認められたということです。

 対象となるのは、がんが1つだけで、がんの大きさが1・5センチ以下などの条件に合った早期の乳がんで、治療は日本乳癌学会が認定した医療機関で行われるということです。

 臨床研究で代表を務めた東京医療センターの木下貴之副院長は、「乳房を切除せずに治療できるのは患者さんにもメリットが大きいはずだ。この治療が行える施設を増やせるよう、普及に力を入れたい」と話していました。

 2024年1月29日(月)

🟧拒食症の症状の重さに関係する脳の部位を突き止める 精神・神経医療研究センターなどが共同研究

 太ることを恐れて食事を極端に制限してしまういわゆる拒食症について、国立精神・神経医療研究センターなどの共同研究チームが多くの患者の脳の画像を詳しく調べたところ、症状の重さに関係する脳の部位を突き止めたと発表し、拒食症をより正確に診断する技術につながるとして注目を集めています。

 この研究は、国立精神・神経医療研究センターの関口敦室長などのチームが行いました。

 チームでは、2014年5月から2019年2月にかけて東北大学病院心療内科など国内の5つの医療機関で「神経性やせ症」、いわゆる拒食症と診断された女性103人の脳のMRIの画像を詳しく分析し、健康な女性102人の脳の状態と比較しました。

 その結果、拒食症の患者では症状が重くなるほど、脳の「腹側前頭前野」と「後部島皮質」という2つの部位の体積が増加していることがわかったということです。

 2つの部位はそれぞれ感情や食欲を抑制したり、吐き気などの感覚を処理したりする際に働く場所だということです。

 拒食症は、初期では患者自身が気付かないことも多く、正常な「やせたい」という願望との区別がむずかしいということで、チームでは、より正確に診断する技術への活用が期待できるとしています。

 関口室長は、「拒食症は精神疾患の中で突出して死亡率が高い。客観的な検査で診断できるようにして、治療体制を充実させたい」と話していました。

 2024年1月29日(月)

🟥サンフランシスコ市、超加工食品の製造業者提訴 健康被害への責任追及

 アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市は2日、超加工食品の製造業者を相手取り訴訟を起こしたことを明らかにした。超加工食品を巡っては、数十年にわたる過剰摂取の結果、多くのアメリカ人が肥満になったと専門家らは指摘している。  訴訟の対象には、クラフト・ハインツ、コカ・コーラ...