2024/02/12

🟧酵素の老化抑制機能を解明、亜鉛と結合し活性酸素分解 京都産業大

 人などの細胞内にある酵素「ERp18」が老化を抑制する機能を持っていることを、京都産業大の研究チームが解明しました。細胞内にある亜鉛イオンと結合して、老化を進める活性酸素の1つである過酸化水素を分解します。細胞の老化や酸化ストレスを原因とする病気の予防や治療法開発につながる可能性があるといいます。論文は8日付のアメリカの科学誌「セル・リポーツ」電子版に掲載されました。

 ERp18は、細胞内にある小器官「小胞体」に含まれます。炎症やアレルギーを抑制する酵素「チオレドキシン」とよく似た構造ですが、詳しい役割はわかっていませんでした。

 研究チームはERp18を持つさまざまな生物のアミノ酸配列を調べた結果、亜鉛イオンと結合するとERp18が3個つながり、活性酸素の1つである過酸化水素を水と酸素に分解することを確認しました。

 さらに、人の細胞でERp18を作る遺伝子の働きを抑えると、過酸化水素が蓄積することが判明。また、長さ約1ミリの線虫でも同様に過酸化水素が体内にたまり、遺伝子操作していない通常の線虫と比べて寿命が1割ほど短くなりました。

 ただ、細胞内でどのように亜鉛イオンと結び付くのかは解明できていません。研究チームの京都産業大生命科学部の潮田亮准教授は、「小胞体の中は元々亜鉛が少なく、食事で亜鉛を取るだけでは効果がない。亜鉛を小胞体に取り込ませ、効率よくERp18に亜鉛を結合させる薬剤を開発できれば、老化が原因の病気の予防や治療法開発につながることが期待される」と話しています。 

 2024年2月12日(月)

🟧成人女性の冷え症に関係する遺伝的要因を発見 慶応大研究チーム、1111人を解析

 冷え症に関係する遺伝的要因を発見したとして、慶応大漢方医学センターの呉雪峰(ごせっぽう)研究員らの研究チームが、イギリス科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に発表しました。将来的に、遺伝子検査結果を踏まえて効果的な治療法を提示できる可能性がある成果だといいます。

 民間会社の遺伝子検査を利用した20~59歳の日本人女性のうち、研究に同意を得た1111人を対象に解析しました。アンケートで「冷え」の症状や負担感を調査した上で、冷えの症状がある599人とない人について、ゲノム上の塩基を比較しました。

 その結果、冷えの症状を抱えた人では、温度の感じ方に関係するタンパク質「TRPM2」「KCNK2」などの遺伝子で塩基の異なりがみられました。この違いが、冷えに関連するタンパク質の発現量を変化させ、冷えのリスクを高めていると考えられるといいます。また、一部の生薬がこのタンパク質に作用するとのデータがあり、治療方法の選択に役立つ可能性があるといいます。

 これまで、冷えにより日常生活に苦痛を感じ支障を来す冷え症が生じるメカニズムについては、女性ホルモンの乱れや自律神経の失調などが指摘されていました。一方、過去の研究で、冷えの症状のある女性の6割以上で、その母親も冷えの症状があることから遺伝的要因が示唆されてきましたが、これまで冷えに関する網羅的な遺伝子解析の研究はなかったといいます。

 研究チームの吉野鉄大・同センター特任講師(漢方医学)は、「冷え症はただ冷えるだけでなく、痛みを伴って生活の質を低下させたり、他の疾患の引き金になったりすることがある。今回の研究では遺伝的背景があることを示せた。つらい症状を抱えている場合は気兼ねなく受診してほしい」と話しました。

 2024年2月12日(月)

🟧北海道でインフルエンザが猛威、一時449校が休業 冬休み明けで再び増加の兆し

 北海道内で今冬、インフルエンザウイルスが猛威を振るっています。小中学校を中心に感染が拡大し、学級閉鎖は全道で最大で288件に上りました。昨年12月にピークを越えたものの、冬休みが終わった1月下旬以降、再び増加の兆しがあります。

 道の統計によると、インフルエンザは昨年8月末ごろに流行入りし、10月下旬に定点医療機関当たりの患者数が19・58人になりました。それから1カ月弱で定点医療機関当たり30人の警報レベルを超えました。12月初旬になると、週の症例数が1万3779人とピークに達しました。道感染症対策課の担当者は、「例年より拡大のペースが速かった。定点当たりの患者数も多い」と話しています。

 目立ったのが、インフルエンザの集団感染による学校と幼稚園の休業で、学級・学年閉鎖を含めて一時、449校に上りました。その後、12月下旬に幼稚園や学校が冬休みに入ったこともあり、定点医療機関当たりの患者数は警報レベルを下回り、1月半ばには10人の注意報レベルを下回りました。

 ただし、冬休みが明けてから再び感染拡大の傾向にあります。1月29~2月4日は症例数が2581人(前週比998人増)で、定点医療機関当たりの患者数も注意報レベルを突破。1月15~21日に6校のみだった学級閉鎖は1月29~2月4日に学年閉鎖・休校と合わせて90と15倍になりました。

 2022年12月の定点医療機関当たりの患者数は、2人以下でした。道医師会常任理事の三戸和昭医師(73)は今冬のインフル流行の理由を2つ挙げます。1つは人々の免疫の低さで、新型コロナ感染拡大以降、インフルエンザが流行せず、抗体を持つ人が減ったといいます。もう1つは、2種類のインフルエンザウイルスが同時に広まったことで、「A型の2つの亜型が拡大し、その両方にかかったという人がかなりいた」と指摘します。

 インフルエンザの感染再拡大とともに気になるのが、新型コロナの状況で、1月29~2月4日のコロナの定点当たりの患者数は15・4人。昨年9月以来、4カ月ぶりに15人を超えました。三戸医師は、「流行スピードは速いが、重症例はあまりない。今後も変異を繰り返して流行は続くだろう」と分析。「手洗いうがいなどが一番の予防策。感染したと思ったら早期に受診してほしい」と呼び掛けています。

 2024年2月12日(月)

2024/02/11

🟧富山県、アクティブファーマに業務改善命令 原薬の不適切製造で

 富山市に工場がある医薬品の原薬製造メーカー「アクティブファーマ」(東京都千代田区)が、国が承認していない方法で製品を製造していたとして、富山県は9日、原因の究明や再発防止を求める業務改善命令を出しました。

 アクティブファーマは富山市八尾町に工場があり、医薬品の原薬の開発や製造、販売を行っています。

 県によりますと、工場では原薬の製造工程で、粉をふるいにかける際、手作業で行うべき作業を機械を用いたり、加熱工程の温度が承認されたのとは異なっていたりなど、10品目で国が承認していない不適切な方法がとられていたということです。

 昨年7月、県の無通告の立ち入り検査で発覚しました。

 承認されていない方法での製造は約10年前から行われ、虚偽の製造記録も作成していたなどとして、県は9日、医薬品医療機器法に基づき原因の究明や改善計画の策定などを求める業務改善命令を出しました。

 これについて親会社の「三谷産業」は「地域住民や国民の皆様にご心配とご不安をおかけして申し訳ない」とコメントする一方、品質には問題がなく健康被害の報告もないとして自主回収や出荷停止の予定はないとしています。

 富山県内の医薬品メーカーではほかにも品質管理などに問題があったとして、2019年以降、ジェネリック医薬品大手の「日医工」など5社に業務停止命令や業務改善命令が出されています。 

 2024年2月11日(日)

🟧新型コロナに感染した子供の急性脳症、重症になりやすいタイプが1割以上

 新型コロナウイルスに感染した子供がまれに発症する急性脳症について、国の研究班が調査したところ、インフルエンザなど従来のウイルスではほとんどみられなかった重症になりやすいタイプの患者が10%以上いたことがわかりました。

 この調査は、東京女子医科大学の高梨潤一教授を中心とする厚生労働省の研究班が行いました。

 研究班は、2022年11月までに、新型コロナウイルスに感染し、脳が急激にむくむ急性脳症と診断された18歳未満の子供103人を調査し、急性脳症をタイプ別に分析しました。

 その結果、インフルエンザなど従来のウイルスでもよくみられるタイプが全体の26%に当たる27人で最も多かった一方で、新型コロナの流行前にはほとんどみられなかった重症になりやすいタイプが全体の13%に当たる14人いたことがわかりました。

 重症になりやすいタイプの患者14人のうち11人は、死亡していたということです。

 研究班によりますと、新型コロナによる急性脳症を発症する子供はまれだということですが、重症になりやすいタイプは治療法が十分に確立されていないことから注意が必要だということです。

 高梨教授は、「なぜ重い急性脳症の頻度が高いのかは詳しくはわかっていないが、長くけいれんが続いたり、呼び掛けに反応しなかったりなどの症状がある時はすぐに医療機関を受診してほしい」と話していました。

 2024年2月11日(日)

🟧東北大、分娩回数が多い女性ほど閉経後に高血圧のリスクが高いことを解明

 東北大大学院の研究チームは7日までに、閉経後では分娩回数が多い女性ほど高血圧のリスクが高く、高血圧の危険因子である肥満の割合も高い傾向があると発表しました。予防には適切な体重維持と注意深い観察が必要としています。

 世界的には25歳以上の成人の約30%が高血圧とされ、日本人女性でみると60歳以上の約60%が高血圧とされます。特に分娩と妊娠高血圧症候群は、女性特有の高血圧リスク因子として知られます。

 東北大大学院医学系研究科女性ヘルスケア医科学共同研究講座の岩間憲之講師と、同周産期医学分野の斎藤昌利教授らのグループは、20~75歳の女性3万530人を対象に、分娩回数と高血圧との関連性を調査しました。

 その結果、閉経前は分娩回数が増えても高血圧との関連性はみられなかったものの、閉経後は分娩回数1回の女性と比較して2回(1・058倍)、3回(1・091倍)、4回(1・125倍)と、分娩回数が多い女性ほど高血圧のリスクが高いことがわかりました。

 また、閉経後では分娩回数が多いほど肥満の割合が高い傾向にあることもわかり、現在の体格指数(BMI)で調整すると、閉経後の分娩回数と高血圧の関連性は薄れたといいます。

 今回の研究は、妊娠高血圧症候群の既往も考慮した上で、分娩回数と高血圧有病率との関連を調査した日本初の報告だといいます。

 研究成果は1月8日、高血圧に関する専門誌「Journal of Clinical」に掲載されました。

 2024年2月11日(日)

🟧妊娠中に体重が過剰に増えた女性、慢性疾患になる割合が高い 成育医療研究センター

 妊娠中に体重が過剰に増えた女性は、将来的に高血圧や糖尿病などの慢性疾患になる人の割合が高かったとする研究結果を、国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)の研究チームがまとめました。高血圧を発症した人の割合は、体重増加が適切だった女性と比べて、約1・5倍高くなりました。

 こども家庭庁の指針では、妊娠中の適切な体重増加量は、妊娠前の体格の指標となるBMIが「やせ」(18・5未満)の人は12~15キロ、「普通」(同18・5~25未満)の人は10~13キロが目安となっている。

 研究では同センターに通院した妊婦の母親に協力を求め、1976~1997年に出産した、妊娠前のBMIが「やせ」か「普通」だった女性318人(平均64・3歳)を対象にしました。妊娠~出産時(同28・5歳)の体重変化について母子手帳のデータを収集し、現在糖尿病や高血圧などの持病があるかアンケートで尋ねました。

 その結果、体重増加が目安を上回っていたグループは、目安内で適切だったグループと比べて、高血圧を発症した割合が約1・5倍高くなりました。糖尿病では約1・4倍、肥満(BMI25以上)になった割合も約1・8倍高くなりました。

 同センター産科の小川浩平診療部長は、「適切に体重を増やすことは、赤ちゃんだけでなく、妊婦自身の健康を守るためにも重要だと確認できた。妊婦がやせていると、低体重の赤ちゃんが生まれるリスクもあるので、主治医の指示をよく聞いてほしい」と話しています。

 2024年2月11日(日)

🟧新型コロナ国内初確認から5年 感染者7000万人以上、死者13万人

 新型コロナウイルス感染者が国内で初確認されてから、1月15日で5年を迎えました。感染者数は抗体保有率の調査から2024年3月時点で7000万人以上と推計され、人口動態統計による死者数の累計は同8月時点で13万人に上り、このうち65歳以上の高齢者が96%を占めます。オミクロン株...