2024/12/24

🟪「がん予防」うたう再生医療で敗血症、厚労省がクリニック運営法人などに改善命令

 医療法人輝鳳(きほう)会(東京都豊島区)が運営する医療機関で自由診療の再生医療を受けた2人が敗血症となった事案で、厚生労働省は24日、再生医療安全性確保法に基づき、輝鳳会と都内の医療機関代表2人に対し、再発防止策の策定などを求める改善命令を出しました。調査では複数の法令違反や、不適切な衛生管理体制が確認されたといいます。

 発表などによると、輝鳳会の医療機関「THE K CLINIC」(同中央区)で今年9月30日、がんの予防をうたった再生医療で細胞の投与を受けた2人が帰宅中に緊急搬送され、集中治療室(ICU)に入院。敗血症と診断され、その後回復しました。

 この医療機関では、希望者の血液から培養した免疫細胞を自分の体に戻す再生医療を提供しており、2人は同法人「池袋クリニック」(同豊島区)で別々に血液を採取されていました。血液は同法人の培養センター(同所)で、細胞の培養と処理が行われたといいます。

 厚労省は10月25日付で、培養センターでの細胞の加工などを一時停止する緊急命令を発出し、同29日から同センターなどに立ち入り調査しました。その結果、2人の細胞加工物の残液から細菌が確認され、同省はいずれかの工程で混入した可能性が高いと結論付けました。

 培養センターでは、点検整備の記録の作成が行われないなど複数の法令違反があり、無菌試験の一部を目視で行うなど不適切な体制もあったといいます。このため同省は改善命令で、衛生管理体制の再検討や、改善計画の提出などを求めました。

  藤田医科大の八代嘉美教授(幹細胞生物学)は、 「がんの『予防』をうたう再生医療は一般的に科学的根拠に乏しい。再生医療の提供には高度な衛生管理が求められ、混入防止の教育体制や緊急時の安全確保策など、国や学会が連携して対策を考える必要がある」と話しています。

 2024年12月24日(火)

2024/12/23

🟪新型コロナ、沖縄県が独自で注意喚起へ 流行時に「拡大準備情報」を発出 

 沖縄県は19日、新型コロナウイルス感染症の流行が疑われる場合、県独自で「新型コロナ感染拡大準備情報」を発出すると発表しました。新型コロナについては、過去の感染データの蓄積が乏しいことなどから、国がインフルエンザのような注意報や警報の発令基準を設けていない一方、重症化する高齢者は多く、医療関係者から県独自の注意喚起を求める声が出ていました。

 新型コロナが5類に移行した昨年5月(第19週)以降、県は定点医療機関からの患者報告数を毎週金曜に公表しています。

 県感染症対策課によると、準備情報は原則として、定点当たり報告数が直近13週の平均値と、標準偏差の2倍との合計を上回った時に出します。医療機関や高齢者施設での面会制限や換気の徹底など具体的な注意事項も添えます。解除の発表はしないといいます。

 感染の平穏期の定点当たり報告数は夏と冬で異なっていましたが、標準偏差を用いることで、より正確に感染拡大の兆候をつかめます。広島県や鳥取県は定点当たり報告数を基に独自の注意喚起をしているものの、標準偏差は用いていないといいます。

 県内でも高齢化が進み、感染拡大時に医療機関が対応できなくなる恐れが強まっています。県感染症対策課は「インフルエンザのように注意報や警報を発令することも検討したが、今後、国が新基準を設定した場合に混乱する可能性があることから準備情報とした」と説明し、「現状では県民が感染拡大の実感を持ちにくく、準備情報で明確なメッセージを伝え、感染対策を呼び掛けたい」としています。

 2024年12月23日(月)

2024/12/22

🟪小中学生の体力調査、中学生男子はコロナ感染拡大前を上回る

 全国の小学5年生と中学2年生を対象に、50メートル走など8つの項目で体力や運動能力を調べる今年度の国の調査で、中学生の男子の合計点は新型コロナウイルスの感染拡大前を上回りました。一方で、小学生の男女は低下傾向にあり、スポーツ庁は運動の機会を増やす取り組みに力を入れていく方針です。

 国は2008年度から、全国の小学5年生と中学2年生を対象に50メートル走やボール投げ、反復横とびなど8つの項目で体力や運動能力を調べていて、今年度は約185万人が対象となりました。

 この中で、8項目の成績を80点満点で数値化した「体力合計点」の全国平均は、中学生の男子では昨年度より0・5ポイント上がって41・7で新型コロナの感染拡大前の2019年度の成績を上回りました。

 特に「長座体前屈」や「立ち幅跳び」では調査開始以来、最もよい成績となったほか、「50メートル走」は7秒99で6年ぶりに8秒を切りました。

 また、中学生の女子は昨年度より0・1ポイント上がり47・2とほぼ横ばいとなっています。

 一方で、小学生の合計点は、男子が0・1ポイント下がって52・5、女子が0・4ポイント下がって53・9で、依然として新型コロナの感染拡大前よりも低い水準で推移しています。

 特に女子は、「上体起こし」以外のすべての項目で下がっているか横ばいとなっていて、合計点は過去最低となりました。

 また、生活習慣についてのアンケートでは、学習以外でスマートフォンやテレビなどを1日3時間以上見る割合が小中学生ともに昨年度より増え、小学生では男子が44・1%、女子が38・7%と、いずれも約2ポイント増加しています。

 これについてスポーツ庁は、スマートフォンなどを見る時間はコロナ禍で増加に拍車がかかり、今後もこの傾向は続いていくと分析していて、日常生活で運動の機会を増やす取り組みに力を入れたいとしています。

 調査結果の分析にかかわった子供のスポーツ学が専門の中京大学の中野貴博教授は中学生の男子が新型コロナの感染拡大前の成績に戻った一方で、小学生では依然、低い水準となっていることについて、「コロナ禍で、体を動かす遊びは制限されてしまっていたが、今の中学生はコロナ禍より前にいろいろな遊びを経験している。一方で今の小学生は、生活習慣を確立する小学校中期までの時期に新型コロナの感染拡大が直撃したので、その影響が残っている可能性がある」と分析しています。

 また、子供たちの運動の課題として全力を出し切ることができない児童や生徒が見られることを挙げ、「学校現場を回っていると、全力を出し切る前にやめてしまったり、全力を出す機会そのものが減っていたりする。それは一瞬の力を使う握力や、持久力のテスト結果にも影響していると推測される。教員の雰囲気や声掛けでも変わると思うし、思い切ってやってみた時の爽快感が子供に伝われば、変化が出てくると思う」と指摘しました。

 2024年12月22日(日)

2024/12/21

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし

た。

 都道府県別では、大分県が37・22人で最も多く、次いで福岡県の35・40人、鹿児島県の29・00人でした。東京都は17・36人、大阪府は21・79人などと、42都道府県で注意報の基準を上回りました。

 新型コロナウイルスは1医療機関あたり3・89人で、前週(3・07人)の1・27倍となり、3週連続で増加しました。

 日本感染症学会の石田直・インフルエンザ委員長は。「年明け以降、インフルエンザとコロナが同時期に流行のピークを迎える恐れがある。ワクチン未接種の人は年内に打つことを検討してほしい」と話しています。

 2024年12月21日(土)

2024/12/20

🟪PFAS、来年春に検査義務化を 自民党が緊急提言案

 発がん性が指摘される有機フッ素化合物「PFAS(ピーファス)」を巡り、自民党環境部会などが来年春をめどに代表物質の2種類を現在の暫定目標値から水道法の「水質基準」に格上げし、水質検査や濃度が一定の数値を超えた場合の対応を水道事業者に義務付けるよう政府に求める緊急提言案をまとめたことが20日、明らかになりました。

 代表物質のPFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)は暫定目標値のため、基準を超えても対応は努力義務にとどまります。そのため水質検査を実施していない水道事業者もあり、基準化により「100%の検査と基準順守を図る」ことを訴えます。政府も水質基準に格上げする方向で、有識者会合で議論しています。

 政府はPFAS汚染の実態を把握するため、大規模な水道事業のほか小規模な簡易、専用水道を対象とした初の全国調査を実施。専用水道の結果は未公表ですが、環境省によると、2024年度は富山県を除く46都道府県の332水道事業で検出されました。基準値超えは確認されませんでした。

 2024年12月20日(金)

2024/12/19

🟪アメリカ初の鳥インフルエンザ重症患者、南部ルイジアナ州で報告

 アメリカ疾病対策センター(CDC)などは18日、南部ルイジアナ州在住の高齢者1人が高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)に感染し、重症だと発表しました。鳥インフルエンザのパンデミック(世界的な大流行)への懸念が高まる中、アメリカ国内で人の重症例が報告されたのは初めて。

 アメリカで今年4月以降に報告された鳥インフルエンザの感染者数は、これで61人となりました。これまでの感染者はいずれも軽症で、自宅療養していました。

 CDCによると、ルイジアナ州の患者は裏庭で病気になったり死んだりした飼育中の鳥と接触していました。

 ルイジアナ州保健局は、「患者はH5N1感染に関連する重度の呼吸器疾患を患っており、現在入院している。重篤な状態だ」と明らかにしました。患者は基礎疾患を有し、65歳以上だといいます。

 カナダ西部ブリティッシュコロンビア州でも11月に、10歳代の重症患者が入院。この患者とルイジアナ州の患者のウイルスは、いずれも遺伝子型が「D1・1」で共通しています。

 こうした中、アメリカで最も人口が多く、感染者61人のうち34人が報告された西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は18日、非常事態を宣言し、州の監視態勢を強化し、農業部門を支援すると表明しました。

 2024年12月19日(木)

2024/12/18

🟪アメリカ・ニューヨーク大、ブタの腎臓を人に移植 3例目、患者は退院し透析離脱

 アメリカのニューヨーク大学ランゴーン医療センターは17日、遺伝子を改変したブタの腎臓を53歳の女性患者に移植することに成功したと発表しました。患者の治療を目指した腎臓の異種移植は3例目で、前の2人は移植から2カ月前後で死亡しており、現在、世界で唯一の異種移植を受けた生存者だとしています。

 アラバマ州出身のトワナ・ルーニーさんは、1999年に母親に腎臓一つを提供しましたが、数年後、妊娠合併症のため、残りの腎臓が機能しなくなりました。

 動物の臓器を人に移植する異種移植は長年、実現が困難とされてきたものの、遺伝子改変と免疫管理の進歩により、夢の医療ではなくなってきており、中でも近年、ブタは理想的なドナー候補と見なされています。

 妊娠高血圧腎症により慢性腎臓病を患っていたルーニーさんは、2016年12月から8年間、人工透析を受けてきました。

 腎臓移植待機リストに入れられていましたが、適合する腎臓がなかなか見付からずにいました。有害な抗体レベルが異常に高いため、拒絶反応が起きるのはほぼ間違いなく、一方で、透析の継続に必要な血管の条件が悪くなってきたため、健康状態が悪化していました。

 選択肢が尽きたルーニーさんは、ブタの腎臓移植の臨床試験に参加することを申請。11月25日に7時間におよぶ手術を受けました。

 ルーニーさんは12月6日に退院。体調はよく、人工透析をやめられたといいます。記者会見に臨んで、「この贈り物、第2の人生のチャンスを受け取ることができて、とてもうれしい」と語り、「元気いっぱいです。食欲もあるし…もちろん、トイレにも行ける。8年間行けなかったのに!」と笑い、「ディズニー・ワールド」でお祝いする予定だと付け加えました。

 遺伝子改変されたブタの腎臓が脳死状態ではない人に移植されたのは、ルーニーさんで3人目。

 1人目の患者は、手術から2カ月後に亡くなり、2人目は回復の兆しを見せていたものの、47日後に移植した腎臓を取り出す必要に迫られ、その後、亡くなりました。

 しかし、ルーニーさんの場合は移植を受ける前に末期状態ではなかったと、手術を主導したロバート・モンゴメリー医師は指摘し、過去のそれぞれの事例が重要な教訓となり、技術が洗練したと強調しました。

 ルーニーさんに提供されたブタの腎臓には、人体との適合性を高めるため10個の遺伝子改変が施されており、その中には、宿主の拒絶反応を防ぐのに役立つ胸腺も含まれています。

 2021年に脳死患者に遺伝子改変されたブタの臓器移植を世界で初めて行った異種移植の先駆者、モンゴメリー医師は、いずれの技術についても「おそらく来年の今ごろか、もっと早く」正式の臨床試験が行われる可能性が高いとの見方を示しました。

 2024年12月18日(水)

🟪「健康寿命」ほぼ横ばいで推移、厚労省発表 男性72・57歳、女性75・45歳

 厚生労働省は24日、介護を受けたり寝たきりになったりせずに日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」が、2022年は男性72・57歳、女性75・45歳だったと公表しました。前回調査の2019年(男性72・68歳、女性75・38歳)から、ほぼ横ばいで推移しました。  健康寿命は3年...