2025/06/30

🟩高齢者の安全な薬物療法ガイドライン改定 日本老年医学会、10年ぶり

 日本老年医学会は、「高齢者の安全な薬物療法ガイドライン」を10年ぶりに改定したと発表しました。高齢者に出やすい薬の副作用を防ぐために、慎重な投与が必要となる薬物のリストを更新。糖尿病や肥満症の治療に使われる薬が加わりました。

 高齢者はたくさんの診療科にかかり、薬が増えて副作用が生じる「ポリファーマシー」を引き起こしやすくなります。ガイドラインは、薬の効果や有害事象に関する論文などをもとに、「特に慎重な投与を要する薬物」や、高齢者が必要な医療を受けられなくなることを防ぐために治療の選択肢の一つとして検討するよう求める「開始を考慮するべき薬物」を示しています。

 「特に慎重な投与を要する薬物」には、糖尿病の治療薬の「GLP―1受容体作動薬」や「GIP/GLP―1受容体作動薬」が加わりました。吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、食欲不振などに注意し、加齢に伴って心身の活力が低下した「フレイル(虚弱)」や全身の筋肉が弱る「サルコペニア」の患者では、体重減少に注意しながら投与の可否を慎重に判断する必要がある、としました。

 急に我慢できないほどの尿意を催したり、頻尿になったりする「過活動膀胱(ぼうこう)」の治療で使う「β3受容体作動薬」は、認知機能低下のリスクがないとして、「開始を考慮するべき薬物」に加わりました。

 ガイドラインの対象は75歳以上の高齢者や、75歳未満のフレイルの患者や要介護者。

 薬を自己判断でやめると、症状が悪化したり、予期せぬ副作用が出たりすることもあります。ガイドラインは医療者向けで、同学会は患者や家族、介護職に対して、自己判断で服薬を中止せず医師に相談するよう呼び掛けています。

 同学会理事長の神崎恒一・杏林大医学部高齢医学教授は、「暑くなると、脱水が引き金となり、腎機能の低下や薬物の有害事象が起こりやすくなる」と指摘し、「必要な薬を正しくのんでもらうためにも、重要なガイドラインだ」と話しました。

 2025年6月30日(月)

2025/06/29

🟩万博会場周辺の下水で感染症調査 はしか・MERSなど拡大予測の研究

 国内外から多数の人が訪れる大阪・関西万博を巡り、大阪健康安全基盤研究所(大安研)が会場周辺の下水に含まれる病原体を調べ、感染拡大を予測する実証研究を始めたことが29日、わかりました。万博会場などで体調不良で受診した患者の情報と合わせて解析することで、発生状況の早期探知や国内で流行するリスクがどれほどあるのか把握することが狙い。

 万博では半年の期間中、約350万人の訪日客を含む約2820万人の来場を見込んでいます。新型コロナウイルス流行後では最大級の国際的イベントで、大安研の朝野和典理事長は「技術を確立し、将来的な流行状況調査の負担軽減や医療提供体制の備えに生かしたい」としています。

 対象となる感染症は、はしかや中東呼吸器症候群(MERS)など約20種類。万博会場がある人工島・夢洲(ゆめしま)の周辺や、近隣の下水処理場でトイレなどの排水を週に1回採取し、ウイルスや細菌の遺伝子が含まれるかを調べます。

 2025年6月29日(日)

2025/06/28

🟩新型コロナ感染者、1医療機関当たり1人に 5月初め以来、前週比1・11倍

 厚生労働省は27日、全国約3000の定点医療機関から16~22日の1週間に報告された新型コロナウイルスの新規感染者数が3841人で、1医療機関当たり1・00人だったと発表しました。1人に達したのは、4月末から5月初めにかけての週以来。前週比は1・11倍で微増しました。

 新型コロナは、感染の規模が徐々に小さくなっているものの、例年夏と冬に流行を繰り返しています。

 1医療機関当たりの感染者数が最も多かったのは沖縄県で、前週の3・89人から5・87人に増加。愛媛県1・92人、埼玉県1・52人と続きました。少なかったのは島根県0・25人、秋田県と山形県が0・28人などでした。

 2025年6月28日(土)

2025/06/27

🟩訪問介護事業所、107町村でゼロ 中山間地や離島多く、経営難など

 ヘルパーが高齢者宅を訪れて身の回りの世話をする訪問介護サービスを提供する事業所がゼロの自治体が、2024年末時点で32都道府県の107町村に上ることが25日、わかりました。人口減少や高齢化が進む中山間地や離島の自治体が目立ちました。物価高などに伴う経営難やヘルパー不足が影響したとみられます。団塊世代が75歳以上となり、介護需要が高まる中、過疎地でのサービス提供の脆弱さが浮き彫りとなりました。

 利用者が必要なサービスを受けられない状況を避けるためにも、事業所の広域連携や経営の効率化を進めることが有効との指摘があり、行政による支援の強化が求められます。人手を確保するためヘルパーの賃上げなど待遇改善も重要となります。

 厚生労働省が公表している事業所の全国一覧に基づき集計。訪問介護事業所がゼロの自治体は2022年末は93町村、2023年末は97町村で増加傾向にあります。2024年末の107町村を都道府県別で見ると、北海道の14町村が最も多く、長野県10町村、沖縄県10町村、福島県8町村、高知県8町村が続きました。

 2025年6月27日(金)

2025/06/26

🟩「赤ちゃんポスト」設置へ補正予算可決、大阪府泉佐野市 慈恵病院の視察費など800万円計上

 大阪府の泉佐野市議会は25日、市が取り組む方針の「内密出産」や「赤ちゃんポスト」の関連予算を含む一般会計補正予算案を可決しました。市は近く連携する医療機関を明らかにし、早ければ来年度から導入するとしています。

 望まない妊娠に悩む女性が病院の担当者にのみ身元を明かして出産する「内密出産」や、育てられない新生児を匿名で預かる「赤ちゃんポスト」には、熊本市の慈恵病院と東京都墨田区の賛育会病院が取り組んでいます。泉佐野市で導入されれば全国3例目となります。

 可決された予算は、市による両病院への視察費など約800万円。市は今後、連携する病院に必要な設備の費用などを負担する方針です。ふるさと納税を原資とする基金を充てます。

 可決後に報道陣の取材に応じた千代松大耕市長は、行政主導で取り組むことで、病院と行政機関との調整が「スムーズにいくのではないか」と述べました。

 2025年6月26日(木)

2025/06/25

🟩入国前の結核検査を義務化、フィリピンとネパール対象

 留学や就労目的で日本に3カ月を超えて滞在する予定の外国人に、入国前の結核検査と、発症していないことの証明書の提出を義務付ける「入国前結核スクリーニング」が23日、フィリピンとネパールを対象に始まりました。在留中に結核と診断される人の割合が増加傾向にあり、対策が急務となっていました。比較的患者が多いこの2カ国で先行実施し、ベトナムも9月1日に開始します。

 日本政府は今後、対象国を中国、インドネシア、ミャンマーにも広げる方針。

 2023年に日本で新たに結核と診断されたのは1万96人。そのうち外国生まれの患者は1619人で約16%に当たり、年々割合が高くなっています。入国前結核スクリーニングの対象、または対象予定の6カ国からの入国者が、外国生まれの患者の約8割を占めるといいます。

 日本側が指定した現地の医療機関で、問診や胸のエックス線検査、必要に応じて喀痰検査などを受けます。証明書は在留資格の認定など来日手続きの際に提出。一部例外を除き、発症していないことを証明できなければ入国を認めません。

 2025年6月25日(水)

2025/06/24

🟩中国から輸入のスナック菓子から国内使用禁止の酸化防止剤、輸入業者に回収と廃棄命令

 千葉市は23日、同市美浜区の食品輸入業者「清水物産ホールディングス」が中国から輸入したスナック菓子から、国内で使用が禁止されている食品添加物が検出されたと発表しました。千葉市保健所は同日、同社に回収と廃棄を命じました。

 違反のあった菓子は「フライドポテト うすしお味」(1袋45グラム)で、今年3月31日以降に輸入された12万袋が回収の対象になります。すでに流通しているものの、健康被害は確認されていません。

 検出された添加物は酸化防止剤の「TBHQ」で、菓子1キロ・グラム当たり0・0011グラムが検出されました。千葉市保健所は、人が生涯食べ続けても、直ちに健康への影響はない値だとしています。

 19日に茨城県のサンプリング検査で違反が判明し、翌20日に千葉市に連絡がありました。千葉市保健所の担当者は、この菓子が手元にある場合は食べずに同社へ連絡するよう呼び掛けています。

 2025年6月24日(火)

🟪熱中症予防に「経口補水液」を飲んではいけない!消費者庁が注意喚起 健康に大きな問題を引き起こす恐れ

 猛暑日や真夏日が続く折、熱中症対策にこまめな水分補給は欠かせません。しかし、脱水症に用いられる飲料「経口補水液」について、消費者庁は「スポーツドリンクのように普段の水分補給として飲むものではない」と注意を呼び掛けています。体に良さそうだからと日常的に飲んだり、熱中症の予防対策...