2022/07/18

■光免疫療法で細菌や新型コロナもピンポイント攻撃 東京慈恵会医科大が発表

 東京慈恵会医科大などの研究チームは、がんをピンポイントで攻撃する「光免疫療法」の仕組みを使い、細菌や真菌、新型コロナウイルスを殺すことに動物実験などで成功したと発表しました。体内で必要な細菌などには影響を与えず、薬剤耐性菌だけを狙って攻撃できる可能性があるといいます。

 研究チームは、細菌の一種「黄色ブドウ球菌」の表面にくっつく抗体に、光が当たると反応する物質を結び付けた薬を作製して、鼻腔(びくう)に黄色ブドウ球菌を保菌させたラットへ投与。続いて、鼻腔に近赤外光を当てると、数分で黄色ブドウ球菌だけが死にました。

 研究チームは、「光に反応する物質が急激に変形し、菌の表面を傷付けて破壊した」と考えています。


 真菌の一種であるカンジダ菌や新型コロナウイルス、治療が難しい薬剤耐性菌についても同様の薬をそれぞれ作製。シャーレ上で振り掛けて近赤外光を当てたところ、真菌やウイルスが消失したことを確認しました。


 現在、細菌に対しては抗生物質を使う治療が一般的になっています。しかし、腸内細菌など体内に必要な細菌まで攻撃を受けてしまう問題がありました。薬剤耐性の有無にかかわらず、病原体をピンポイントに狙って除去できる薬はありませんでした。


 体の外からレーザー光を当てて、がん細胞を死滅させる「光免疫療法」で使う薬と医療機器は、2020年に承認を受け、頭頸部(とうけいぶ)がん患者への治療が始まっています。


 細菌や真菌、ウイルスという身近な病原体にも、効果が確認されたのは初めて。ほかの病原体だけにくっつく抗体を見付ければ、その病原体に効果が期待できる薬を作ることが可能になります。


 研究チームの光永眞人・東京慈恵会医科大講師(消化器・肝臓内科)は、「薬剤耐性や既存の薬で効果が期待できない病原体の治療に役立つ可能性がある。病原性のない細菌や正常な細胞には影響しないため、副作用も少なくできると期待される」と話しています。


 研究チームがまとめた論文は、イギリスの科学誌「コミュニケーションズバイオロジー」のウェブサイトで公表されています。


 2022年7月17日(日)

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