2022/07/20

♏ものもらい

まぶたの分泌腺に起こる急性の化膿性炎症

ものもらいとは、まぶたの縁などが赤くはれて、痛む急性の化膿(かのう)性炎症。ものもらいは俗称で、正式には麦粒腫(ばくりゅうしゅ)と呼ばれます。

原因は、主に黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの細菌感染です。まぶたの表面についている細菌が、まぶたの分泌腺(せん)である皮脂腺、瞼板(けんばん)腺(マイボーム腺)、アポクリン腺に入り、感染して化膿が生じます。

まつげの根元にある皮脂腺や、汗を出すアポクリン腺に感染した場合を外麦粒腫、特殊な皮脂腺の一つである瞼板腺(マイボーム腺)に感染した場合を内麦粒腫と呼びます。

まぶたの不衛生、コンタクトレンズの汚れ、目をこする行為などが、細菌感染を引き起こす要因として挙げられます。また、風邪と同様に、季節の変わり目、寝不足や体調不良で疲れがたまっている時に、生じやすい性質があります。

初めは、まぶたに局所的な赤みが出現して、はれ、しばしば軽度の痛み、かゆみを伴います。炎症が強くなってくると、赤み、はれ、痛みが強くなり、熱を持ったりすることもあります。まぶたの内側にできる内麦粒腫では、かなり痛みがありますが、まぶたの外側にできる外麦粒腫では、まばたきをした時に異物感がある程度です。

化膿が進むと、はれた部分が自然に破れて、うみが出ることがあります。うみが出てしまえば、その後症状は回復に向かい、多くは自然に治癒します。しかし、うみがたまって大きくなった時には、切開してうみを出す治療が必要になることも。

まれに、眼窩蜂窩織(がんかほうかしき)炎、敗血症など重い疾患を引き起こすことがあります。ものもらいの局所をいじらないようにして安静にし、早めに治療を受けることが大切となります。

熱が出た時は、入院治療が必要なこともあります。繰り返して再発する時は、ほかに糖尿病や免疫疾患がないかを調べる必要があります。

なお、「ものもらい」という名称から伝染病のような印象を受けますが、普通に皮膚表面に存在する細菌によって起こるため、他人に伝染することはありません。

「ものもらい」は関東などの俗称で、大阪などにおける「めばちこ」、京都などにおける「めいぼ」「めぼ」、あるいは「めばち」、「めこじき」、「めかんじん」、「めんぼう」など、地方によってさまざまな呼び方をされています。

「ものもらい」、「めこじき」、「めかんじん」の呼び名は、かつての日本に他人から物を恵んでもらうと、この疾患が治癒するという迷信が存在したことに由来します。「めばちこ」は、この疾患の発症者が目をぱちぱちさせる様子に由来するのではないか、と推測されています。

ものもらいの検査と診断と治療

ものもらい(麦粒腫)の多くは、そのまま安静にしておけば自然に治癒します。しかし、「ものもらいができたな」と思った時には、放置せずに薬剤師や眼科医に早めに相談をするのがお勧めです。「そのうちに」と放置しておいて、はれや、かゆみがひどくなると面倒です。

特に、化膿が悪化した場合には、まぶたの切開によってうみの排出を必要とすることがあるので、はれがひどい場合には、眼科を受診します。うみを出すために針などでつつくと、かえって悪化する原因になるので、注意して下さい。

医師による治療は、抗生物質が入った点眼液や眼軟膏(なんこう)の処方が主で、場合により抗生物質の飲み薬を服用することもあります。なお、ものもらい用の市販薬も、販売されています。

治療を開始して2~3日で症状が軽くなり、4~5日すると治るのが普通です。この時期は、かゆくても、まぶたを触らないようにします。コンタクトレンズの装用も控えるようにします。かゆみが強い時は、目の周りを冷やすと少し落ち着きます。

手が汚かったり、栄養不足など、環境によっては再発することもあります。家庭でも、患部の清潔とバランスの取れた食事を心掛けます。

日常のものもらい予防対策としては、 前髪が目に掛からないようにする、コンタクトレンズを不潔な指で脱着しない

目の周りをしっかりと化粧しない、花粉症でかゆくてもあまり目をこすらない、などが挙げられます。

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