インスタント食品のようなフリーズドライ(凍結乾燥)技術で保存したマウスの体細胞から、クローンマウスを作り出すことに成功したと、山梨大学の研究チームが発表しました。
液体窒素を使う現在の方法よりも低コストで、採取の難しい生殖細胞を使わずに遺伝資源を保存できるため、将来的には、絶滅しそうな動物を含めた生物多様性の維持につながり得るといいます。
論文は7月5日付で、科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に掲載されました。
体細胞は液体窒素を使って冷却し、凍結保存するのが一般的ですが、コストがかかることが課題でした。
そこで山梨大学の発生工学研究センターに所属する若山清香助教らの研究チームは、凍結乾燥する際の保護剤を工夫するなどして、マウスの尾などの体細胞を凍結乾燥させ、マイナス30度で最長9カ月保存しました。その後、この体細胞から遺伝情報が入った核だけを取り出し、核を取り除いた新鮮な卵子に移植する「核移植」を行うと、卵子は細胞分裂を始めました。
さらに、分裂した細胞からES細胞(胚(はい)性幹細胞)を作って培養し、増えたES細胞の核を新たな卵子に移植する2回目の「核移植」を実施。この卵子をメスの卵管に入れると、合計75匹の赤ちゃんマウスが生まれました。
世界で初めて生まれたマウスはメスで「ドラミ」と名付けましたが、凍結乾燥した体細胞のマウスと遺伝情報が同一の「クローンマウス」に当たります。
「ドラミ」は正常に成長して繁殖能力もあり、寿命も約2年と普通のマウスと変わりませんでした。その他のクローンマウスも、調べられた個体はすべて正常な生殖能力を持っていました。
2回の核移植を経て、クローンマウスが生まれる確率は0・02%ほどだといいます。この成功率は哺乳類初のクローン動物であるヒツジのドリーの成功率0・4%)よりも低いため、研究チームは信頼を得るためにも今後は成功率の改善が必要だと述べています。
2022年7月20日(水)
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