流行性耳下腺炎の原因となるムンプスウイルスが感染し、精巣に炎症が起こる疾患
ムンプス精巣炎とは、流行性耳下腺(じかせん)炎の原因となるムンプスウイルスに感染することによって、男性の生殖器官である精巣に炎症が起こる疾患。ムンプス睾丸(こうがん)炎とも呼ばれます。
精巣、すなわち睾丸は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。
ムンプス精巣炎は、ムンプスウイルスの血行感染によって起こり、思春期以降に、おたふく風邪、あるいはムンプスとも呼ばれる流行性耳下腺炎にかかった人の10〜30パーセントが、ムンプス精巣炎も合併して発症します。
思春期以降に、流行性耳下腺炎にかかる人は、小児期にかかっていなかったり、ワクチンの予防接種を受けていなかったりして、ムンプスウイルスに対する免疫を持っていない人です。
思春期以前に、流行性耳下腺炎に合併してムンプス精巣炎を発症することは、まれです。
症状は、流行性耳下腺炎を発症した4〜7日後に、急激な精巣の痛みとはれが起き、陰嚢の発赤、発熱、頭痛、悪心、倦怠(けんたい)感などが現れ、3〜7日くらい続きます。通常、排尿に関する症状はありません。
まれに精巣の委縮を起こすこともありますが、大部分は片側だけの精巣に炎症が起こります。両方の精巣に炎症が起こると、後遺症として無精子症など男性不妊の原因になることがあります。完全な男性不妊の原因となることは比較的まれながら、回復後に精子数の異常がみられ、受精能力が減退することもあります。
ムンプス精巣炎を発症したら、できるだけ精巣へのダメージを少なくするため家で安静にし、陰嚢をつり上げて固定し、さらに冷湿布をすると痛みは軽くなります。
男性不妊になるのを予防するためには、やはり一度は泌尿器科の専門医を受診しておいたほうが安心です。
ムンプス精巣炎の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断は、精巣の痛み、はれ、硬化などの症状から簡単に判断できます。流行性耳下腺炎の先行と、咽頭(いんとう)や精液からのウイルス分離や、血液中のウイルスに対する抗体の値が初回より2回目の測定で上昇することで、確定できます。尿中に、うみや細菌は認められません。
泌尿器科の医師による治療としては、全身の安静、陰嚢の固定や冷湿布とともに、ムンプスウイルスが原因の時は抗生物質は有効ではないため、熱を抑えるための消炎鎮痛剤を投与します。陰嚢の固定では、スポーツ用のサポーターや大腿(だいたい)部の間に張った粘着テープで陰嚢を支えることもあります。
1週間程度で炎症は治まりますが、長期化したり両側の陰嚢に炎症を起こすと、精巣の中の精子の元になる細胞が死んでしまい、精巣が委縮し、男性不妊の原因になります。ムンプス精巣炎の20〜30パーセントに、男性不妊が起きると見なされています。
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