比較的成熟した小型リンパ球が血液中に増加し、リンパ節や脾臓、肝臓のはれを生じる疾患
CLL(Chronic Lymphocytic Leukemia)とは、血液のがんと一般的にいわれる白血病の一つで、比較的成熟した小型リンパ球が血液中に増加し、リンパ節や脾臓(ひぞう)、肝臓のはれを生じる疾患。慢性リンパ性白血病とも呼ばれます。
白血病にはいくつかの種類があり、がん化する細胞の種類から骨髄性とリンパ性とに分けられます。また、未熟なリンパ球が増加する場合と成熟したリンパ球が増加する場合とで、 ALL(Acute Lymphoid Leukemia、急性リンパ性白血病)とCLL(慢性リンパ性白血病)とに分けられます。これらは、骨髄やリンパ系組織の中で発症します。
通常、血液の中に成熟したリンパ球が著しく増加した状態が、CLLです。リンパ球の種類により、B細胞性とT細胞性とに分けられ、多くはB細胞性です。白血病細胞は、リンパ節、骨髄、脾臓などで非常にゆっくり増殖し蓄積します。
CLLは、小児には少なく、成人でも中年以降に好発し、男性に多いとされています。頻度は年間、10万人に1~3人の発症率。全白血病の約2~3パーセントを占め、比較的まれです。リンパ球のがんには、悪性リンパ腫(しゅ) やALLがありますが、これらとは病態が異なります。
CLLの原因は、まだ明確ではありません。そのため危険因子や予防方法も、明らかではありません。環境因子の影響、遺伝的要因、免疫学的異常などが、一部関与していると考えられています。
CLLの細胞は、リンパ節、骨髄、末梢(まっしょう)血の中で増殖しますが、細胞の増加による直接の症状はあまりみられません。一般的には、白血病細胞が増殖することにより、リンパ節や脾臓、肝臓がはれてきます。T細胞性白血病の場合には、皮膚や中枢神経に転移しやすい傾向があります。
また、骨髄の中で白血病細胞が著しく増加した場合には、正常な血液が造られず、貧血や血小板減少による出血傾向などの症状が起こることがあります。同時に、リンパ系の細胞の異常や免疫力の低下などにより、細菌やウイルスに対する抵抗力がなくなり、発熱や肺炎などの感染の症状が認められることがあります。白血病細胞の増殖により体重減少、倦怠(けんたい)感、発熱、寝汗などの症状がみられることもあります。
合併症として、体の抵抗力のもとである免疫の異常が起こることもあります。免疫の異常による溶血性貧血や、赤血球だけが少なくなる赤芽球癆(せきがきゅうろう)といった特殊な貧血、血小板減少がみられることもあります。
CLLの発症の初期は無症状なので、最近では健康診断での血液検査などで見付かったり、ある程度進行してから全身の症状が少しずつ出現して発見されることもあります。ほかのがん同様、早期発見が望ましいのですが、難しいのが実情です。
CLL(慢性リンパ性白血病)の検査と診断と治療
内科、血液内科の医師による診断では、倦怠感や微熱が続いたり、体のリンパ節がはれたり、肝臓や脾臓がはれたりしているような場合、まず血液検査を行います。血液検査で体の血液細胞の内容と数を調べ、異常が認められた場合には、骨髄の検査を行います。骨髄検査では、胸の胸骨や腰の骨である腸骨に細い針を刺して、骨髄液を吸引し、骨髄の中で増えている細胞が何であるかを調べます。
白血病の場合には、細胞の免疫学的検査により、白血病細胞がB細胞性か、T細胞性かなどを調べます。さらに、白血病細胞の染色体検査などを行います。
いくつかの診断基準がありますが、血液検査にて血液量1ml中にリンパ球が1万個以上あり、それらが明らかに成熟したリンパ球である場合には、まずCLL(慢性リンパ性白血病)が最も疑われますが、 ALL(急性リンパ性白血病)、特殊なタイプの白血病であるヘアリー細胞白血病と前リンパ性白血病、悪性リンパ腫の白血病化、成人T細胞性白血病などの疾患との鑑別が必要です。
CLLと確定診断された場合には、より詳しい検査により疾患の進行の程度、体の中での広がりの程度を調べる病期分類を行います。いくつかの分類がありますが、RAI分類がしばしば用いられ、次のように分けられます。
0期:リンパ球の増加のみの時期、1期:0期にリンパ節のはれを伴う時期、2期:さらに脾臓、肝臓のはれを伴う時期、3期:それらに貧血を伴う時期、4期:これらに血小板減少を伴う時期 。これらの病期分類は、予後とよく相関しています。
内科、血液内科の医師による治療では、リンパ球の増加のみである0期では経過観察を行い、1期以降では抗がん剤を用いた化学療法が主体となります。このほかに、放射線療法や造血幹細胞移植法、あるいはモノクローナル抗体による治療が行われることもあります。すでに確立されている標準的な治療方法がありますが、CLLを完全に治すことはなかなか難しいのが実情です。
化学療法は、抗がん剤が血流に乗り、全身に運ばれて白血病細胞を殺すため、全身療法と考えられています。抗がん剤には、注射や点滴、飲み薬などいろいろな種類があり、主に使用されるのはシクロフォスファミド、ビンクリスチン、フルダラビンなど。
抗がん剤以外では、生物製剤が使用されます。生物製剤は、すでに体の中にある活性物質を実験的に合成し、自分の体の抵抗力を増すような形で使われるもので、悪性度が低いB細胞悪性リンパ腫の治療に承認されたモノクローナル抗体も使用可能となりました。これはリツキサンと呼ばれる薬剤で、B細胞の表面に出ているCD20という抗原に特異的に結合するもので、高い治療効果が報告されています。
放射線療法は多くの場合、CLLが原因で大きくなった脾臓や、リンパ節、腫瘤(しゅりゅう)などによる圧迫症状を緩和するために行われ、放射線を照射します。これは局所治療であり、対症治療の一つです。
造血幹細胞移植法は、白血病に侵された骨髄を健康な骨髄に置き換える治療法です。白血球の型が完全に一致した兄弟、または非血縁者の健康な造血幹細胞をもらって移植するもので、全身状態が良好で臓器機能が正常であれば、50歳までは施行可能とされています。
合併症の治療では、感染に対しては抗生物質の投与などが行われます。自分の免疫の異常で起こる溶血性貧血などに対しては、免疫の異常を抑える目的で、プレドニゾロンなどのステロイドホルモン剤などの薬が使われることもあります。
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