2020年に国内で実施された不妊治療の体外受精によって生まれた子供が前年より201人少ない6万394人だったことが、日本産科婦人科学会の調査で明らかになりました。現行方式の記録が残る1986年以降、初めて前年を下回りました。治療対象となる世代の女性が減っているほか、新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあるとみられます。
体外受精は、卵子を体内から取り出し、体外で精子と受精させて子宮に戻します。今回、体外受精児が初めて減少に転じたものの、生まれてくる子の約13人に1人の割合を占めました。1983年に国内で初めて誕生してからの累計では77万人を超えました。
2020年は治療件数も44万9900件で、前年より8201件少なくなりました。減少に転じた背景には、第2次ベビーブーム(1971〜1974年)世代の女性が40歳代後半を迎え、年齢的に治療が難しくなったことがあります。近年は治療件数の増加が鈍化しており、2020年はコロナ禍も影響して治療を控える夫婦が増えたとみられます。
一方、体外受精は政府の少子化対策で今年4月から公的医療保険の対象となりました。厚生労働省が2021年に公表した実態調査によると、体外受精は1回当たりの治療費が平均約50万円に上りましたが、経済的負担の軽減が期待されています。
データを取りまとめた東邦大学医療センター大森病院産婦人科の片桐由起子教授は、「保険適用後に治療を受ける夫婦が増え、生まれてくる子供は再び増加する可能性がある」と話しています。
2022年8月13日(土)
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