結腸の緊張が緩んで、蠕動運動が弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘
結腸性便秘とは、大腸の大部分を占める結腸の緊張が緩んでいて、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘。弛緩(しかん)性便秘とも呼ばれます。
便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。
便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。
便秘の症状の現れる時期は、さまざまです。一般には、加齢とともに増加する傾向にありますが、女性のほうが男性より多いと見なされ、若い女性の便秘は思春期のころに始まることも少なくありません。
その便秘の多くは結腸性便秘で、日本人の常習化した慢性便秘の約3分の2を占めるとされています。慢性便秘は症状が1〜3カ月以上続く便秘で、旅行や生活の変化に伴う数日間だけの一過性の便秘と区別されます。
また、結腸の緊張の緩みと腸管の蠕動運動の低下のために起こる結腸性便秘と、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる直腸性便秘とが重なって、慢性便秘が起こることもあります。
結腸性便秘になると、便が大腸を通過するのに時間がかかり、水分の吸収が必要以上に増加するために、出てくる便は太くて硬くて量が少なくなり、排便回数も少なくなります。
もともと排便に関与する腹筋が弱い女性に、結腸性便秘は多くみられます。腸が緩んで、便を送り出す力も便意を感じる力も弱まってしまうため、排便時に上手に腹圧をかけて息むことができなくなった結果、起こるものです。
高齢者、内臓下垂のある人、経産婦、長期臥床(がしょう)者、虚弱体質の人、体力が低下している人、運動不足の人などにも、結腸性便秘は多くみられます。高齢者では、入れ歯がかみ合わなかったり、歯の数が少なかったりして、食事量や食物繊維の摂取不足になる傾向から、大腸を刺激する力が弱まるとともに、腹筋などの筋力が弱まる結果、起こるものです。
また、下剤を使いすぎた場合も、薬の刺激で便意を催させるため、腸の機能が低下して結腸性便秘になることがあります。
結腸性便秘になると、腹痛などの強い症状を生じることは少ないものの、長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、残便感、食欲の低下などの症状がみられます。頭痛や肩凝り、手足の冷え、倦怠(けんたい)感などの症状を伴うこともあります。
また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。
結腸性便秘の検査と診断と治療
肛門(こうもん)科、あるいは消化器科、婦人科の医師による診断では、結腸性便秘を詳しく調べるために、X線マーカーを服用して大腸の通過時間を調べる検査や、バリウムによる模擬便を用いて、排便時の直腸の形や動きを調べる排便造影検査を行います。
肛門科、あるいは消化器科、婦人科の医師による治療では、食事指導、生活指導、運動、緩下剤といった保存的治療法が主体となり、これらをうまく取り入れて便通をコントロールするようにします。
日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補うためには、市販の食物繊維サプリメントであるオオバコ、小麦ふすまなどを活用するのもよい方法です。運動で腹筋を鍛え、蠕動運動を活性化するためには、ウオーキングやジョギングを行うのもよい方法です。
緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。
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