食物アレルギーとは、特定の食物を摂取した時に免疫機序を介して、アレルギー症状が出現する状態のこと。食品過敏症とも呼ばれます。
アレルギー体質の人では、特定のたんぱく質にIgE抗体を作りやすい免疫傾向があり、摂取した食物とこれらのIgE抗体を介して症状が起こるとされています。多くは食物を摂取してすぐから2時間程度でみられる即時型反応を示しますが、やや遅れて症状が出たりすることもあります。
アレルギーの原因になるものをアレルゲン(抗原)といいますが、食物アレルギーを引き起こすアレルゲン食品として卵、牛乳、小麦の割合が多くなっています。そのほか、さばやいかなどの魚介類、バナナやキウイなどのフルーツ、大豆、米、ピーナッツ、アーモンド、そばなどがあります。これらのアレルゲン食品は、年齢によって原因となる割合が異なります。
アレルギー症状は、口唇、口腔(こうくう)粘膜の接触皮膚炎様の湿疹(しっしん)から、気管支喘息(ぜんそく)、じんましん、胃腸障害を引き起こすものまでさまざまです。時には、血圧低下、顔面蒼白(そうはく)、呼吸困難、意識混濁など生命にかかわる急激なアレルギー反応であるアナフィラキシーショックを起こす場合もあります。
食物アレルギーは乳幼時期に多く、成長とともに軽快、治癒する可能性があります。小麦、大豆、米は比較的早く、3歳までに耐性が獲得されるという結果もあります。卵、牛乳は少し遅れるので、小学校低学年までは卵、牛乳が重要な食物アレルゲンとなります。9歳ころには約8割が耐性を獲得し、反応を起こさなくなります。
しかし、食物アレルギーの経過も個人差があり、中には特定の食物アレルギーが長く続く場合があります。ナッツ類、魚介類、果実、ソバ、種子類は、耐性化しにくい食物アレルゲンとされています。
平成14年4月より、加工食品のアレルギー表示制度がスタートしました。表示の目的は、重篤なアレルギー症状が起きるのを避け、表示を見ることで食べても大丈夫な加工食品を選べることにあります。
現在、表示されているアレルギー物質には、義務品目として必ず表示される特定原材料7品目と、推奨品目として表示が勧められている特定原材料20品目があります。必ず表示される7品目には、患者の人数の多い卵(玉子、マヨネーズなど)、乳(牛乳、乳製品、チーズなど)、小麦(パン、うどんなど)、えび、かにと、重篤な症状に至ることが多いそばと落花生(ピーナッツ)が指定されています。
表示が勧められているもの20品目には、あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ、ごま、カシューナッツが指定されています。
医師による治療は原因食物の除去が原則ですが、食物アレルギーの発症者は乳幼児に多く、厳しい除去食は栄養価の面で悪影響を及ぼす恐れがあります。原因が特定できない場合は、アレルギー専門医の受診が望まれます。
アナフィラキシーショックを起こした場合は、アナフィラキシーショックの治療を行います。魚介類、ナッツ類、ソバは、重篤なアナフィラキシーを起こすことが多いことが知られています。また、喘息(ぜんそく)の既往がある発症者も、重篤なアナフィラキシーを起こす可能性が高いといわれています。
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