2022/08/21

🇧🇭大腿骨疲労骨折

正常な大腿骨に骨折を起こさない程度の負荷が、ランニングで繰り返し加わった場合に生じる骨折

大腿骨(だいたいこつ)疲労骨折とは、太ももの骨である大腿骨に、正常な状態では骨折を起こさない程度の負荷が、ランニング中心のスポーツ活動で繰り返し加わった場合に生じる骨折。

骨折は、骨が壊れることを意味し、ヒビも骨折ですし、骨の一部分が欠けたり、へこんだ場合も骨折です。正常な骨では、かなり大きな負荷がかからないと骨折しませんが、正常な骨に小さい負荷がかかる場合でも、同じ部位に繰り返し長期間かかり続けて、骨にヒビが入る微細な骨折を生じたり、ヒビが進んで完全な骨折に至る状態が疲労骨折です。

疲労骨折のほとんどは、スポーツ活動で激しいトレーニングをしている運動部の学生や社会人に生じます。陸上、サッカー、野球、バスケットボールなどあらゆるスポーツ活動で発生する可能性があり、それぞれのスポーツ活動ごとに疲労骨折を生じやすい部位があります。

下肢の中で最も太い大腿骨に疲労骨折を生じるスポーツ活動としては、まず陸上のマラソン、長距離走が挙げられ、そのほかのスポーツ活動でも、走り込みを続けることで生じます。

長時間のランニングによって、過度の体重の荷重が上方から繰り返し加わったり、地面をける際に生ずる突き上げが下方から繰り返し加わったり、大腿四頭筋、ハムストリング、内転筋などの大きな筋群による張力が繰り返し加わることによって、股(こ)関節から膝(しつ)関節に至る長い骨である大腿骨の付け根の頸部(けいぶ)から、骨幹部、膝に近い顆上部(かじょう)まで、骨の構造的な弱点といえる部位にまさまざまな疲労骨折が発生します。

頸部の疲労骨折は、股関節を介した体重の荷重による衝撃のため生じます。外側に張力、内側に圧縮力が加わる繰り返される負荷により、頸部を内反させる力が強く作用すると、外側からヒビが入ります。さらに、内反力が加わると、離解して転位します。

骨幹部の疲労骨折は、内側に生じます。これは内転筋による牽引(けんいん)張力のためだと考えられています。顆上部の疲労骨折は、内転筋やふくらはぎ後面の腓腹(ひふく)筋などの牽引張力が作用して発生します。

大腿骨疲労骨折を生じても、一般の外傷性骨折のように皮下出血や著しい腫脹(しゅちょう)を伴うことはありませんが、骨折部位は軽度の腫脹を伴い、押さえると痛みを生じます。骨幹部の疲労骨折、顆上部の疲労骨折では、その大半が膝の痛みを生じます。

痛みは、ランニングの開始時に強く出て、運動途中は痛みが軽くなります。運動終了時から終了後にかけて、痛みが強くなります。運動を休んでいる間は、痛みはほとんど出現しません。

短期的に集中的なランニングを行った時に、大腿骨疲労骨折が生じることが多いのも特徴です。競技者の要因としては、筋力不足、筋力のアンバランス、走る姿勢や走法のアンバランス、O脚やX脚や外反足などの下肢の構造的アンバランス、体の柔軟性不足などが考えられ、環境の要因としては、オーバートレーニング、競技者の体力や技術に合わないトレーニング、不適切なシューズ、練習場が硬すぎたり軟らかすぎるなどが考えられます。

症状が時としてわかりにくいことがあるのも大腿骨疲労骨折の特徴で、痛みのある部位が漠然としていることが多いともされています。

明らかな外傷がなく、ランニング中心のスポーツ活動時に大腿部の痛みを感じる場合は、疲労骨折が疑われます。整形外科を受診することが勧められます。

大腿骨疲労骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、骨の痛みがある部位と症状、スポーツ活動の種類などから判断します。

骨折の初期の段階では、X線(レントゲン)検査を行ってもほとんど異常を示さず判断が難しいこともありますが、骨折後1カ月程度で骨膜反応という骨折の修復により異常がわかります。骨シンチグラフィー検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、骨折の初期の段階の病変でも判断することが可能です。

骨折の初期の段階で診断を確定できない場合に、痛みを誘発して再現するテストを行って、骨折の可能性を検査することもあります。頸部の骨折では、片脚ジャンプで痛みが誘発されます。骨幹部の骨折では、大腿骨の下に堅い支点となるような物を入れて、大腿骨をしならせるような状態にすると、痛みが誘発されます。顆上部の骨折では、抵抗をかけて膝を屈曲させると痛みが誘発されます。

整形外科の医師による治療では、骨折部に負担のかかるランニングなどのスポーツ活動を休止し、必要に応じて固定を行います。一般には、4〜8週間の固定が必要となることが多く、激しい負荷のかかる競技者の場合には、12〜16週間の固定による安静が必要となることも珍しくありません。

固定による安静期間の後に、徐々にリハビリを開始します。まずは、日常生活だけのリハビリを行い、続いて、痛みが生じない範囲に制限してスポーツ活動を再開します。疲労骨折の場合、同じ部位が再骨折する可能性が高いため、慎重に運動を再開する必要があります。

転位のある骨折の場合や、頸部の外側骨折の場合は、手術が必要となることがあります。また、手術後のリハビリが最低6カ月間必要となります。

再発予防としては、疲労骨折が発生した要因を検討し、通常のトレーニングが過度にならないようにしたり、運動前後にストレッチを行ったりして、普段からコンディションの調整をすることも大切です。

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