2022/08/21

🇧🇭大腿神経痛

太ももの前部と側面を支配している大腿神経が圧迫を受けて起こる神経痛

大腿(だいたい)神経痛とは、太ももの前部と側面を支配している大腿神経が何らかの圧迫を受けることによって、痛みなどが生じる神経痛の一つ。

大腿神経は、股関節(こかんせつ)周囲筋を支配する運動神経の一種で、座骨神経の上部にある比較的太い神経です。第2、第3、第4腰椎(ようつい)の腹側から神経根を形成して、脊髄神経より分枝し、骨盤の前面を通り、鼠径(そけいぶ)部、太ももの前部、さらに下腿まで続き、腰から下肢にかけての神経系統として座骨神経と対をなしています。

痛みの症状としては、座骨神経痛では下肢の裏側に走るのに対して、大腿神経痛は下肢の表側に走るのが特徴です。つまり、尻(しり)の裏から、片側、あるいは両側の太ももの前や外側、膝(ひざ)下の内前側にヒリヒリとした痛みを感じます。そして、痛みだけでなく、しびれや神経の鈍りを覚えます。さらに、太ももだけでなく、腰が痛むこともあります。

大腿神経痛の原因は、ほとんどが腰椎疾患からきています。腰椎疾患による骨盤のゆがみによって骨盤周辺の筋肉が圧迫され、大腿神経も圧迫されることにより引き起こされます。このゆがみにより、障害部位が異なります。

大腿神経を支配している第2、第3腰椎間の神経根、および第3、第4腰椎間の神経根が障害されると、神経痛が起こります。これを根性大腿神経痛といい、腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症、変形性脊椎症、腰椎すべり症、腰椎不安定症などで発症します。

高齢者で多いのは腰部脊柱管狭窄症からくる神経痛で、その症状は歩いていると腰、足の痛みやしびれがひどくなりついには歩けなくなる、前かがみの姿勢は楽だが後ろに反らすと痛い、朝より夕方のほうが痛みとしびれが強いのが特徴。若年者から壮年者に多いのは腰椎椎間板ヘルニアからくる神経痛で、骨盤前面から股関節にかけて痛みが生じることがあります。

また、大腿神経は股関節の前部では大腰筋の中を走っており、この大腰筋がゆがみで緊張すると神経痛が発症します。これを絞扼(こうやく)性大腿神経痛といいます。

腰椎疾患による骨盤のゆがみ以外に、コルセットの着用、腰椎牽引(けんいん)、ギプスによる圧迫、窮屈な下着やズボンの着用、べルトやガードルの締めすぎ、自動車のシートベルトの締めすぎ、長時間の股関節屈曲位、外傷などが原因で、大腿神経が圧迫されて神経痛が起こることもあります。

さらに、肥満、妊娠により骨盤周囲の筋肉の緊張が強くなることで、大腿神経が圧迫されて神経痛が起こることもあります。妊婦においては胎児が正常な位置にいない場合に、大腿神経痛としてしびれが出ることもあります。鼠径ヘルニアの手術や股関節の手術の後に、一時的な大腿神経の圧迫により障害されることもあります。

大腿神経痛を引き起こす原因である神経の圧迫には、さまざまな原因が考えられます。中には深刻な疾患が原因であることもあるので、まず整形外科、ないし神経内科の医師を受診し原因を突き止めることが必要です。

大腿神経痛の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、腰椎や骨盤のX線写真、MRI(磁気共鳴画像)検査などで、神経の圧迫像を確認し、腰椎椎間板ヘルニアや変形性腰椎症などの疾患がないかどうかをチェックします。

必ずしも神経の圧迫像がなくても、痛みが生じる場合も割にあり、MRI検査では見付けにくいような小さな突起物が神経を圧迫していることもあります。

整形外科、神経内科の医師による治療は、大腿神経を圧追する原因を取り除くことが第一です。体重を減らすことや、骨盤部の矯正、窮屈な下着やズボンの着用の禁止などが、効果を発揮します。

また、大腿神経痛を起こしている原因によって変わってきますが、リリカ(プレガバリン)という神経痛治療内服剤、トラムセット配合錠という内服鎮痛剤などの内服、外用が有効とされています。ただし、リリカには、ふらつき、めまい、眠気、意識消失などの副作用があり、飲んでいる間は車の運転はできません。トラムセットには、投与初期に吐き気、慢性的には便秘などの副作用があります。

痛みが強い場合は、局所麻酔薬を注射して痛みを和らげる神経根ブロックを行います。この場合、1 回の注射では一時的に症状が緩和しても、数時間から1日で元の症状に戻ったりしますので、何回か注射を繰り返すこともあります。局所麻酔薬と一緒に、ステロイドホルモン剤という炎症を抑える薬を注射することもあります。

腰椎部で大腿神経が圧迫された時には、脊髄の周囲の硬膜外腔(がいくう)に局所麻酔薬を注射して、神経の痛みを和らげる硬膜外ブロックを行います。局所麻酔薬の種類を変えたり、投与濃度、投与量を変えたりして行い、硬膜外ブロックを何回か繰り返すと、痛みが急速に、あるいは徐々に軽減してゆくケースが多くみられます。

症状が治まらず、日常生活に支障を来す場合は、大腿神経を剥離(はくり)、または切離する手術を行うこともあります。炎症を起こした神経は周囲の靱帯(じんたい)や筋肉と癒着した状態にありますので、その癒着を手術で解き放つのを剥離、神経そのものを切除して痛みを感じなくするのを切離といいます。

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