妊娠や授乳期以外に起こる乳汁などの分泌
乳汁漏とは、妊娠や授乳期以外に乳頭から分泌物がみられる状態。乳汁漏出症、乳頭異常分泌症、異常乳頭分泌とも呼ばれます。
妊娠期間中や授乳期に女性の乳頭から乳汁(母乳)が出るのは普通ですが、乳汁漏ではそれ以外の時期に乳頭から分泌物がみられるわけです。
乳頭の片方からだけ分泌物がみられることもあれば、乳頭の両方から分泌物がみられることもあります。何もしなくても気付くほどの分泌物がみられることもあれば、軽くまたは強く乳頭を圧迫しないと分泌物がみられないものもあります。
分泌物は乳汁のようなさらっとした白色のものもありますが、膿(うみ)が混じって黄色や緑色っぽく、粘り気があることもあります。また、分泌物に血が混じって茶褐色であることもあります。
その原因は、さまざまです。乳汁をつくる乳腺(せん)に何らかの異常がみられる場合と、乳腺以外の部分の異常が原因の場合とがあります。
ほとんどは乳腺に異常がある場合に生じ、女性ホルモンのバランスが崩れることで起こる乳腺症や、卵巣ホルモンが何らかの影響を与えることで起こる乳管内乳頭腫(しゅ)などによって生じます。また、割合として多くはないものの、乳がんによって生じることもあります。
乳腺以外に原因があるものとしては、薬剤の副作用による場合があります。ある種の抗うつ剤や胃薬、降圧剤、経口避妊薬(低用量ピル)などが原因で、乳汁を産生するプロラクチンというホルモンの分泌を刺激することがあり、そのような薬剤を長期服用することで乳汁漏の症状がみられることもあります。
さらには、下垂体の疾患や脳の疾患、甲状腺や卵巣の異常による乳汁漏もあります。
乳汁のような白色もしくは透明の分泌物が出る場合は、大抵の場合、ストレスなどによりホルモンバランスが乱れたりすることが原因で、深刻な問題ではないことがほとんどです。
それ以外の分泌物が出た場合は、早めに婦人科 、内科、乳腺科などを受診することが勧められます。
乳汁漏の検査と診断と治療
婦人科 、内科、乳腺科などの医師による診断では、まずは原因を調べるために、乳房の視診や触診のほか、分泌物の検査、マンモグラフィー(乳腺X線検査)、血液検査、超音波(エコー)検査、乳管造影などを行います。
薬剤が原因のこともありますから、服用中の薬についても問診し、血液中のプロラクチン濃度を測定することもあります。
婦人科、内科、乳腺科などの医師による治療では、原因に応じた処置を行います。
原因が薬剤の服用である場合は、減量もしくは休薬を考えます。乳汁の分泌がみられるだけで、ほかに特別な異常や兆候がなければ、経過観察も可能です。不快ならば、プロラクチンの産生を妨害する脳内物質であるドーパミンの分泌を促す薬により、プロラクチンの分泌を抑えると症状は消えます。
原因が乳管内乳頭腫などの良性の疾患の場合は、大抵は外科手術の必要はありません。痛みなどの症状があまりないケースでは、経過観察だけで、特に治療は行いません。
乳がんなどの場合は、外科手術で腫瘍(しゅよう)を切除し、抗がん剤による化学治療などを行います。
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