心臓疾患による予期しない突然の病死
心臓突然死とは、心臓疾患による予期しない突然の病死のことであり、症状が出現してから死亡するまでの時間が24時間以内のものを指します。
突然死は、予期しない突然の病死全体のことであり、症状が出現してから死亡するまでの時間が24時間以内の内因死を指します。けがや交通事故などの外因死は除きます。日本では年間約10万人の突然死があり、就寝中が最も多く、次いで入浴中、休養・休憩中、排便中に多く起こっています。
年間約10万人の突然死があるうち、約6万人が心臓の異常が原因となる心臓突然死です。この心臓疾患による突然死は頻度が最も高く、症状出現から死亡までの時間が1時間以内となることもあり、ほかの突然死と区別して心臓突然死と呼びます。心臓疾患に次いで脳血管系疾患、呼吸器疾患、消化器疾患などが、突然死の原因として続きます。
心臓突然死を引き起こし得る代表的な疾患としては、心筋梗塞(こうそく)、拡張型心筋症、肥大型心筋症、QT延長症候群、ブルガダ症候群が挙げられます。
心筋梗塞は、心臓突然死の中で最も多い原因となる疾患です。心臓に栄養を送る冠動脈と呼ばれる血管の通り道が狭くなったり、閉塞(へいそく)したりすることで、その血管が栄養を送る領域の心筋が壊死(えし)してしまいます。
心筋梗塞によって壊死した心筋が運悪く破裂すると、心破裂と呼ばれる状態になり、ほとんどの場合、救命できません。
心筋梗塞で突然死してしまう最大の原因は、心室細動と呼ばれる不整脈です。これは、血管の梗塞部位や範囲にかかわらず、心筋梗塞発症から数時間以内に起こり得ます。心臓で血液を送り出している心室が小刻みに不規則に震える細動を伴って、全身に血液を送ることができなくなってしまうため、突然死してしまうのです。
拡張型心筋症は、多くの場合、原因は不明なのですが、心臓の内腔(ないくう)が大きく拡張し、心筋の収縮能力が著しく低下して、全身に十分な血液を送れなくなる心不全に陥ってしまう疾患です。30~40歳代と中年男性に多くみられ、家族性と認められる場合が20%ほどあります。
症状としては、動悸(どうき)、息切れ、呼吸困難などがあります。突然死の原因としては、心筋梗塞と同様、心室細動が主です。家族や親族の中に、若年で突然死や心不全を起こした人がいる場合、この疾患の可能性があるので、注意が必要です。
肥大型心筋症は、心筋が肥大して心臓の内腔が狭くなり、心臓を十分拡張させることができず、全身に十分血液を送れなくなる疾患です。この疾患の約50%は、家族性です。症状は、軽いものから重いものまでさまざまです。
突然死は、軽症を含むどの段階からも発生します。「失神を繰り返す」、「家族の中に突然死した人がいる」、「30歳未満で肥大型心筋症を発症した」場合は、激しい運動をすると危険な不整脈が出現して突然死につながってしまうこともあるため、注意が必要です。
QT延長症候群は、心電図上QTと呼ばれる部分が正常よりも延長しているために、心筋細胞の電気的な回復が延長することにより起こる疾患です。原因としては、遺伝子異常や、抗不整脈薬などの薬剤、血液中のミネラル異常などが挙げられます。疾患といってもそれ自体では症状はありませんが、多形性心室頻拍という特殊な不整脈を生じることがあり、この不整脈が心室細動に移行し、突然死の原因となります。
多形性心室頻拍を起こす誘因として、水泳や目覚まし時計のアラーム、安静・睡眠などが代表的です。この疾患は基本的に無症状なので、多くは健康診断で見付かります。
ブルガダ症候群は、若年から中年の男性に多く、また日本や東南アジアに多くみられます。原因は遺伝子異常が多く、20~30%で突然死の家族歴が認められます。普段は軽度の心電図異常しかみられず、心臓超音波検査でも心臓に異常は見当たりませんし、狭心症や心筋梗塞の兆候もありません。
夜間の睡眠中や食後の安静時などのリラックスした状態の時に突然、心臓けいれんともいえる心室細動が出現して、何の兆候もなく失神を起こします。立っていたり、座っていると、その場に転倒します。心室細動のほかに、発作性心房細動が出現することもあり、突然死に至る場合があります。
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