遺伝的体質により、ビリルビンが体内から排出されにくいために黄疸を生じる疾患の一つ
ジルベール症候群とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、思春期以降に黄疸(おうだん)を生じる疾患。
フランスのジルベール博士によって初めて報告された疾患で、体質性黄疸の一つです。
血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。
本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入ってアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合(ほうごう)を受けて解毒され、続いて、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。
ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。
従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合はジルベール症候群などの体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。
ジルベール症候群は、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン)が優位となり、思春期以降に発症します。体質性黄疸の中で最も多くみられるのもので、100人に3人くらいにみられます。
常染色体優性遺伝の形式を示す頻度が高いものの、原因が単一でないため遺伝形式もさまざまです。
肝臓の細胞による間接型ビリルビンの取り込みから、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変換するまでのいずれかの部位の障害が原因で発症します。
黄疸の程度は軽度にとどまり、日常生活に何ら支障はありません。
ジルベール症候群の検査と診断と治療
内科、消化器科の医師による診断では、主に問診と画像検査を行います。問診では、体質性黄疸を患っている家族の有無、過去の黄疸歴・手術歴・輸血歴などの有無、黄疸に伴う意識障害や貧血などほかの症状とその発症時期、尿便の色、皮膚の掻痒(そうよう)感、全身状態など細かく調べます。
問診でわからなかった場合に、画像検査を行います。主に超音波(エコー)検査が行われ、これによって確定します。
鑑別すべき疾患には、慢性肝炎やその他の肝疾患がありますが、血液中の間接型ビリルビンが優位であること、肝機能と肝組織像ともに適正範囲に収まること、尿中ビリルビンがみられないことから、見分けることができます。
内科、消化器科の医師による治療では、ほとんどのジルベール症候群の場合、黄疸の程度は軽度なことが多く、日常生活に支障がないので治療はしません。ただ、体調が優れない時に黄疸が濃く出る場合があるので、ストレス、極度の疲労、アルコール類の多飲を避ける生活を心掛けてもらいます。
美容的な観点から黄疸を軽くしたい時には、フェノバルビタールという薬剤の内服が有用ですが、原則はあくまで無治療です。
注意すべき点は、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素により代謝(グリクロン酸抱合)されるインフリキシマブという薬剤などの内服により、副作用が強く出現することです。
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