蟯虫が盲腸付近に寄生することで引き起こされる寄生虫病
蟯虫(ぎょうちゅう)症とは、線虫類に属する蟯虫が盲腸付近に寄生することで、引き起こされる寄生虫病。日本で最も多い寄生虫病です。
小児に多くみられますが、大人も感染します。小児では幼児期から学童期にかけて多く、約5~20パーセントぐらいの感染率があると見なされています。人から人への感染が起こるために、家族内や保育所内、幼稚園内などで集団感染することがあります。
口から入った蟯虫の卵は、6~8時間で孵化(ふか)して幼虫になり、人の盲腸およびその周辺に寄生します。その後、幼虫は約45日程度で成熟します。成虫は紡錘形で乳白色をしており、体長はオスが2.5センチほど、メスが1センチ前後、寿命はオスが2週間、メスが2カ月程度。交尾をしたメスの体内で卵が十分に発育してくると、メスは人が夜寝ている間に肛門(こうもん)付近に下りてきて、1時間に6000~10000個の卵を産みつけます。卵は1カ所に産むのではなく、卵を産み尽くすまで、産んでは進み産んでは進みを繰り返し、メスは力尽きて死にます。
その卵は産卵されて数時間以内に感染可能なまでに発育して、手指や衣類、寝具、家具、建具に付着しますので、再び口から人体に入って寄生することになります。人は蟯虫に対しては免疫ができずに何度でも感染しますので、小児がおしりをかいて卵の付着した手指をそのまましゃぶると感染がひどくなります。また、同じ布団で寝たり、密接な接触のある集団内では感染が広がっていきます。
寄生している蟯虫の数が少ない時は症状のないことも多いのですが、数が多くなると腹痛、リンパ節の炎症が生じたり、メスが下りてくると肛門の周囲のかゆみ、湿疹(しっしん)が生じ、それに伴う睡眠障害がみられることになります。盲腸に寄生しているために、虫垂炎の原因になることもあります。
蟯虫症の検査と診断と治療
幼稚園や学校の検査で偶然、見付かることもけっこうありますが、蟯虫症の症状に気付いたら、内科を受診します。同様に感染している可能性がある同居の家族も内科を受診、検査して感染の有無を確かめることが必要です。
肛門周囲に産みつけられた卵を検出するには、セロハンテープ法という方法が行われます。朝起きてすぐ、布団を出る前に肛門に粘着性のセロハンテープをつけて卵を付着させ、顕微鏡で卵を見付けます。蟯虫は毎日産卵するわけではないので、日を変えて2回、あるいは3日連続して検査します。時々、便の中に長さ1センチ前後の乳白色の蟯虫が見付けられることもあります。
治療では、駆虫剤のコンバントリン(成分はパモ酸ピランテル)を内服します。駆虫剤は成虫には効くものの、卵には効きませんので1度飲んでから、2週間後、すなわち残った卵が成虫になって卵を生む前に、もう1度飲むほうがよいでしょう。
蟯虫は病害性の低い寄生虫ですが、見付けたら家族いっせいに駆虫することが、予防の基本です。ふだんから、つめを短く切る、手洗いをよくする、毎日入浴し、できれば朝も入浴して下着を取り替える、寝具や室内を清潔に保つなどの注意が必要です。
0 件のコメント:
コメントを投稿