真菌の感染によって、関節部分に炎症が起きる疾患
真菌性関節炎は、カビの仲間である真菌の感染によって、骨と骨とが連結している関節部分に炎症が起きる疾患。
真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。主な真菌は、カンジダ、アスベルギルス、クリプトコックス、ムコールなど。
これらの真菌が血流を介して、あるいは近くの感染した組織から関節に入り、関節液や関節組織に炎症を引き起こします。
人体にはさまざまな関節がありますが、真菌が原因になった関節炎であれば、どの部位の関節に炎症が起きたとしても、真菌性関節炎と総称します。
真菌性関節炎を発症すると、関節に痛みを伴い、はれたり、熱感が現れたり、場合によっては発熱や悪寒を認めることもあります。
真菌性関節炎を発症する原因には、いくつかの要因が考えられます。一つ目の要因としては、土壌などに含まれるコクシジオイド、ヒストプラスマ、ブラストミセスなどの真菌が空気中に浮遊し、その真菌を肺から吸うことにより全身性の感染症を引き起こす場合です。その場合は、肺に感染した真菌が血液やリンパ液を介して関節に入り、炎症を引き起こします。
二つ目の要因としては、免疫抑制剤などの薬を服用中であったり、悪性腫瘍(しゅよう)があったりなど、体の抵抗力が著しく落ちている場合です。その状態では、皮膚や口腔(こうこう)内、気道などに存在し、ふだんは疾患の原因になりにくいアスベルギルス、クリプトコックス、カンジダなどの真菌が日和見感染することにより、関節の炎症を引き起こします。
真菌性関節炎には、急激に発症する急性タイプと、徐々に比較的軽い症状が出始めて長く慢性の経過をたどるタイプがあります。
一般的には、慢性の経過をたどるタイプのほうが多く、関節炎が長く続くと、次第に関節の表面の軟骨が傷み始め、炎症が侵食して骨まで破壊してゆく経過をたどる場合があります。その場合、関節内の骨と骨とがくっ付いて、強直と呼ばれる最悪の状態になることもあります。
真菌性関節炎が最も多くみられるのは、膝(ひざ)、肩、手首、股(こ)関節、肘(ひじ)、指の関節。多くの場合は一つの関節だけに感染しますが、時には同時にいくつかの関節に感染することもあります。
真菌性関節炎を疑うような症状があれば、一刻も早く整形外科を受診するのが賢明です。治療が遅れた場合には、関節の痛みや変形、関節の動きなどに障害が残ることがあります。
真菌性関節炎の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、血液検査を行い、炎症性の変化とともに真菌の種類や量について調べます。また、X線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行い、関節炎の広がりや破壊された程度について調べます。
続いて、分泌液の培養検査を行い、関節液を針で吸引して採取し、感染の原因となっている真菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。
外科的に関節内の滑膜を採取して、調べることもあります。また、全身感染症を起こしている場合は、血液からの培養検査を行うこともあります。
整形外科の医師による治療では、局所の安静と第1選択の抗真菌剤による治療を直ちに開始し、抗真菌剤を静脈内注射、あるいは関節内注射で投与します。後に、真菌性関節炎の原因であると判明した真菌に応じて、抗真菌剤の選択を調整することがあります。
この治療で効果がみられなければ、手術を行います。手術は関節を切開して、うみを洗い流し、炎症のために傷んだ部位を切除します。手術後は、関節の中のうみを出すようにチューブを留置することもあります。また、持続的に洗浄するチューブを関節内部に留置することもあります。
進行して骨まで傷んでいる場合には、感染による症状が落ち着いた後、関節を固定する手術などを行うこともあります。
真菌性関節炎の予防法としては、感染を防ぐためにマスクを着用すること、外出後に手洗い、うがいを実行することなどがあります。特に、体の抵抗力が弱っている時に感染しやすいので、必ずマスクを着用するどの配慮が必要です。また、部屋の中などにカビを発生させない配慮を行うと安全で、定期的な部屋の換気を行うことが有効です。
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