エプスタイン・バーウイルスが特定のリンパ球に感染し、ウイルスが慢性的に増殖する疾患
慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症とは、ヘルペスウイルス科に属するエプスタイン・バーウイルスが特定のリンパ球に感染することにより、ウイルスが体内で慢性的に増殖する疾患。慢性活動性EBウイルス感染症、CAEBV(Chronic Active Epstein-Barr Virus infection)とも呼ばれます。
通常、エプスタイン・バーウイルスは、白血球の一種で、免疫をつかさどるリンパ球のBリンパ球に感染します。慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症の場合は、Bリンパ球以外のリンパ球であるTリンパ球、NK細胞にも感染することが発症の原因だと考えられています。
慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症と同様にエプスタイン・バーウイルスに起因し、症状も酷似している疾患としてエプスタイン・バーウイルス感染症(EBウイルス感染症、伝染性単核球症、キス病)が挙げられますが、慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症で感染するウイルス量はエプスタイン・バーウイルス感染症の100〜1000倍以上多い点で異なります。
エプスタイン・バーウイルスに感染したTリンパ球、NK細胞の増殖が、慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症の原因ですが、増殖の原因はわかっていません。
エプスタイン・バーウイルスは、乳幼児期には家庭内や保育所で、思春期以降では異性間の交流を中心に、キスや飲み物の回し飲みなどによる既感染者の唾液を介して、主にBリンパ球に感染しエプスタイン・バーウイルス感染症を発症させます。まれに、Bリンパ球以外のTリンパ球、NK細胞にも感染し、慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症を発症させます。経口感染のほか、輸血により感染することもあります。
Bリンパ球に感染したエプスタイン・バーウイルス感染症の症状の現れ方は、感染する時期によって異なります。日本人の70パーセントは2〜3歳までに初感染しますが、乳幼児期では病原菌に感染しても症状が現れない不顕性感染が多く、症状が現れても軽度です。
思春期以降に感染すると、約50パーセントが発症します。ただし、感染してもほとんどが4~6週間で、症状は自然になくなるといわれています。20歳代では90パーセント以上が抗体を持っているといわれていますが、成人になってから初感染した場合、症状が重くなります。6カ月以上症状が続く場合は、重症化している可能性があります。
エプスタイン・バーウイルスは一度感染すると、その後は潜伏感染状態となり、終生にわたって共存します。そのため、急性感染症以外にもいろいろな疾患を引き起こすことがあります。再感染はしないものの、免疫力が低下した場合に発症することもあります。
エプスタイン・バーウイルス感染症の主な症状は、発熱、頸部(けいぶ)リンパ節の腫脹(しゅちょう)、咽頭(いんとう)痛、肝臓と脾(ひ)臓が次第に大きくなる肝脾腫、肝機能異常。 症状が進行して、劇症肝炎や血球貪食(どんしょく)症候群などを併発すれば、生命の危険があります。
15~30歳くらいの青年期に、エプスタイン・バーウイルス感染症は多くみられます。
一方、Bリンパ球以外のTリンパ球、NK細胞にも感染した慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症では、発熱や頸部リンパ節の腫脹、咽頭痛、肝脾腫、肝機能異常、内臓や血管などの炎症、皮膚炎などエプスタイン・バーウイルス感染症と同じ症状を発症し、再燃を繰り返します。
急変により、数年以内に約半数の人が、そして十数年の経過でほぼすべての人が、死に至ります。急変の代表例は、肝不全や心不全、腎(じん)不全などの多臓器不全、悪性リンパ腫、血球貪食症候群、上咽頭がん、胃がん、日和見感染です。
10歳までの小児に、慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症の大半がみられますが、50歳以上で発症することもあります。男女差は認められません。
乳幼児、小児の発熱が1週間続き、普通の風邪にしては変な症状を示した場合は、内科、あるいは耳鼻咽喉(いんこう)科の医師を受診し、精密検査を受けることが勧められます。
慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症の検査と診断と治療
内科、耳鼻咽喉科、あるいは血液腫瘍(しゅよう)科の医師による診断では、血液検査を行って、末梢(まっしょう)血液中のエプスタイン・バーウイルスDNA量を計り、その増加を確認します。また、血液検査や、浸潤組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行って、通常はBリンパ球に感染するエプスタイン・バーウイルスが、Tリンパ球、NK細胞にも感染していることが確認された場合に、慢性活動性エプスタイン・バーウイルス感染症と確定します。
鑑別すべき疾患には、同じように発熱、リンパ節腫脹、肝脾腫などが持続する若年性関節リウマチ、リウマチ熱、川崎病、急性リンパ性白血病、悪性リンパ腫などがあります。
内科などの医師による治療では、発症メカニズムが不明で治療法が確立されていないため、免疫化学療法、悪性リンパ腫に準じた抗がん剤の多剤併用療法、抗ウイルス療法などを試みます。これらの療法はある程度有効ですが、その効果は一時的で、完全治癒には至りません。
造血幹細胞移植(骨髄移植)が治癒可能な唯一の治療法で、大量の抗がん剤で感染細胞を含む自己の血液細胞を破壊するとともに、健常なドナーから提供された造血幹細胞を投与し、健全な造血を回復させます。しかし、合併症などのリスクを伴うことが多く、成功率は約50〜70パーセントで、進行してからの移植では成功率が低くなります。
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