耳の穴、つまり外耳道が骨や結合組織で閉じてしまう疾患
外耳道(がいじどう)閉鎖症とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道が閉じてしまう疾患。内耳には異常がありません。
外耳道が骨で閉ざされる場合と、結合組織で閉ざされる場合とがあり、頻度は骨で閉ざされる場合のほうが高く、骨性閉鎖とも呼ばれます。また、両側の耳の外耳道が閉ざされる場合と、片側の耳の外耳道だけが閉ざされる場合とがあります。
さらに、先天性の外耳道閉鎖症と、後天性に起こる外耳道閉鎖症とがあります。
先天性のものは、胎生6カ月ごろまでに完成する第1鰓溝(さいこう)という外耳道の元になる組織が管腔化する際の障害によって、外耳道の閉鎖が起こるといわれています。耳介奇形、小耳(しょうじ)症などの奇形を合併することが多く、耳の近くの顔面や中耳にもさまざまな形態異常を伴うことがあります。
そして、ほとんどは外耳道が骨で閉ざされていて耳の穴がないため、耳の鼓膜と内耳との間にある中耳へ音が伝わらず、その側の耳に中等度以上の伝音(でんおん)難聴があります。
生後に起こる後天性のものは、外傷、やけど、外部からの慢性的な刺激、外耳や中耳の慢性の炎症、中耳手術後の感染などのために、肉芽(にくげ)という新しい結合組織になる増殖物が盛り上がり、外耳道をふさぐために起こります。
外耳道の骨の増殖が原因で起こることもあり、例えば、長期間にわたってサーフィンをする人は冷たい波を頻繁に耳に受けることにより、外耳道の骨が増殖して外耳道が徐々に狭くなり、ひどくなると外耳道閉塞症に至ることがあります。古くから潜水夫や、水泳愛好者に多いことが知られていましたが、特に最近はサーファーに好発することからサーファーズイヤーとも呼ばれるまでになりました。
後天性の外耳道閉鎖症の症状としては、外耳道が結合組織や骨で閉ざされるため、音が中耳へ伝わらず、伝音難聴になり、聴力レベルが60デシベル程度となります。
外耳道閉鎖症の検査と診断と治療
耳鼻咽喉(いんこう)科、ないし形成外科の医師による診断では、視診のほか、単純X線検査、断層X線検査、CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道の状態、中耳の耳小骨の状態や形態異常の有無、鼻咽腔の炎症の有無などを調べます。また、聴力検査または聴性脳幹反応(ABR)の検査を行います。
耳鼻咽喉科、ないし形成外科の医師による治療では、両側の耳の外耳道が閉ざされている場合と、片側の耳の外耳道だけが閉ざされている場合とでは、方針が大きく変わります。
閉鎖が片側の耳の外耳道だけで、もう一方の耳の聴力が正常であれば、当面は手術の必要がありません。先天性であっても、言語の発達に全く問題は起こりませんし、閉鎖しているほうの耳に補聴器を使う必要もありません。高校生ぐらいまで待って手術を行ってもいいとされますが、早く治したいのであれば、急性中耳炎が起こりにくくなる8~9歳くらいで手術することも可能です。
先天性で、しかも両側の耳の外耳道が閉鎖している場合は、言語の発達する時期に十分な聴力を確保するために、できるだけ早くから骨導補聴器を使用し始めるとともに、鼓室外耳道形成術という手術をできるだけ早い時期に実施します。
手術は、ふつう全身麻酔をして行います。手術の方法には、骨を削って外耳道を作成する外耳道形成術と、音を伝えるための鼓膜や耳小骨を作り聴力を回復させる鼓室形成術があります。4〜5歳くらいで、片側ずつ外耳道形成術を行い、鼓室形成術も行える場合は聴力も改善できます。
先天性の場合、顔面神経が耳の側頭骨の中で異常な走行の仕方をしていることがあり、この時は難しい手術になるので、熟練した耳鼻咽喉科医に手術をしてもらうことが望まれます。
耳介の形態異常である小耳症を伴っている時は、耳鼻咽喉科と形成外科の医師が緊密な連絡を取り、手術の時期や回数、方法などについて慎重に検討し、8~9歳になってから、主に形成外科の医師が耳介形成術を行ってから外耳道形成術を行います。
これらの手術を行っても、長い時をへると再び外耳道が狭くなったり、聴力が悪化したりすることもあり、再手術が必要になることもあります。
後天性の外耳道閉鎖症の場合は、傷などが治ってからふさがった部分を広げる手術をします。
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