皮膚の色素を作る細胞が壊れ、白いまだらが出現する疾患
尋常性白斑(はくはん)とは、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイトの働きが止まるために、皮膚に白いまだらができる疾患。単に白斑、俗に白なまずとも呼ばれます。
この尋常性白斑を大きく分けると、2種類あります。多いのは汎発(はんぱつ)型と呼ばれるもので、その10分1程度と割合が少ないのは分節型と呼ばれるもので、神経の分布に一致して皮膚にまだらができます。
汎発型の尋常性白斑は、生まれ付きのものではなく、小児期より後、特に中年以後にできやすいものです。原因は自己免疫現象であると考えられ、皮膚の色素であるメラニンを作るメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)に対して免疫反応が働き、自分の体の一部であるのに、そのメラノサイトを壊してしまうために、皮膚の色が抜けると考えられています。
全身どこでも突然、皮膚の一部の色が抜けて、その部分が白いまだらとなります。形状は木の葉状や類円形のものから、不規則な地図の形を示すものまでいろいろで、周囲に広がっていく傾向があります。痛み、かゆみはありません。
顔面、胴体、手足など、どこにでも白いまだらはできますが、数が多くなると左右対称に分布することが多くなります。ベルトや下着で締め付けられる部位や、履物でこすれる部位に好発します。
頭部に白いまだらができると、白髪が生じることもあります。重症になると、つめが変形してしまうこともあります。
分節型の尋常性白斑は、子供や若者にできやすいものです。はっきりした原因は不明ですが、皮膚の表面近くを走行している自律神経の末梢(まっしょう)から分泌される神経伝達物質が、メラノサイトを壊してしまうために、皮膚の色が抜けると考えられています。
体の左右のどちらか、片側だけに生じるのが普通で、顔や首にできやすく、特に三叉(さんさ)神経の支配領域に多いとされています。2〜3割は自然治癒しますが、残りは治療に抵抗を示します。
尋常性白斑の検査と診断と治療
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、尋常性白斑が重症の場合、甲状腺(こうじょうせん)疾患や膠原(こうげん)病などの自己免疫疾患を伴っていることがありますので、血液検査が行います。自己免疫疾患では、自分の体の中の本来なら細菌などから体を守るべき白血球などが、自分自身の体の細胞を攻撃してしまいます。
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による汎発型の尋常性白斑の治療としては、外用剤としてステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)軟こうやビタミンD3軟こうなどを使用する治療と、紫外線照射療法(PUVA療法)が一般的です。
外用剤の皮膚への塗布は、内服薬に比べて全身に及ぼす副作用が少なく、免疫の働きを調節する作用があります。重症で急速に進行する時は、ステロイド剤の内服が必要なことがあります。
紫外線照射療法(PUVA療法)は、オクソラレンという薬を10〜30分前に塗布、ないし2時間前に内服し、その後、長波長紫外線を照射する方法です。紫外線の働きで残っている色素細胞が活発になり、色素を作るようになるのを期待します。紫外線に当たった後は、せっけんで薬をよく洗い落とします。近年では、中波長紫外線(UVB)のうち、治療に有効な波長のみを全身に照射するナローバンドUVB療法も行われています。
治療の効果があると、白斑の中に点状の色素斑ができて徐々に拡大し、島状の色素斑になります。続いて、白斑の周囲にも色素が増強すると、徐々に周囲の肌色になじんできます。ここまでの期間は発症者にもよりますが、2カ月~数年かかります。気長に治療することが必要です。残念ながら、ほとんど効果が出ない発症者も存在します。
分節型の尋常性白斑の治療では、内服薬や外用剤によっても効果が少なく、表皮の移植手術が有効です。手術では、メラニンを作る細胞を、本人の正常な皮膚の表面から移植します。
よく行われているのは吸引水泡移植術で、跡が残らないように皮膚を吸盤で吸い上げて人工的に水泡を作り、その皮の部分を頭をそいでおいた白斑の部分に張り付ける方法。水泡の皮に含まれていたメラノサイト細胞が白斑の部分に定着し、数週間から数カ月後には正常な色に戻ります。
通院での移植手術も可能ですが、植皮部の患部を1週間ほど固定しておく必要があるので、できる限り入院治療したほうがよいでしょう。
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