踵の骨の足底部の前方に、棘状の骨ができる疾患
踵骨棘(しょうこつきょく)とは、踵(かかと)の骨の足底(そくてい)部の前方に、棘(とげ)状の骨ができる疾患。 踵骨骨底棘とも呼ばれます。
踵の骨には、足の指を動かす筋肉と、その筋肉を包む足底腱膜(けんまく)がついています。この足底腱膜は、土踏まず、すなわち踵から親指の付け根を通る足の内側の縦アーチの形を維持する役割を持っています。アーチを崩すような力を過剰に加えると、足底腱膜が強く引っ張られ、踵骨棘が作られます。
年齢的には、足底腱膜の柔軟性が失われ、組織が弱くなる40歳から60歳に発症しやすく、ジョギングやウオーキングを始めたり、踵をぶつけるような軽いけがで、踵骨棘を発症することが多いようです。
若い世代でも、ランニング、ジョギング、歩きすぎ、立ち仕事などによる足の使いすぎ、体重の増加による足にかかる負担の増加によって、発症することがあります。とりわけ、ハイヒールのように踵に衝撃のかかりやすい靴や、つま先と踵の2点だけに力が集中する靴を履いてたくさん歩くと、発症しやすくなります。踵の骨の両側が痛い場合と、足の裏側に痛みを感じる場合がありますが、裏側の痛みの多くは踵骨棘と関係しています。
初期の症状としては、足の裏のアーチの部分や踵のすぐ前の部分が痛み、押すと痛みが強くなります。朝起きた時に痛みが強く、日中は軽くなります。進行すると、1時間ぐらい座った後の歩き始めなどでも痛くなり、足の裏に体重をかける運動をすると痛みが増強します。
踵骨棘が肥大してくると、踵の真ん中あたりの痛む部分に硬い隆起を触れ、踵全体がはれ上がり、痛みのために歩行困難になります。
3週間以上も痛みが続いたり、強くなったりして日常生活に支障を来す場合は、整形外科を受診することが勧められます。
踵骨棘の検査と診断と治療
整形外科の医師による診断では、足底腱膜に沿った痛み、特に踵の下に圧痛があれば見当は付きますが、念のためX線(レントゲン)検査を行います。X線写真では、踵の骨の下に踵骨棘が認められます。
整形外科の医師による治療は、原因となった足の裏に負担のかかる運動があるなら中止し、通常、痛みを和らげる湿布が基本となります。日常の歩行時に痛むようなケースでは、ヒールカップというクッション材や、アーチサポート、足底板を靴の踵や土踏まずの部分に敷いて、痛みを和らげます。ヒールカップは市販されていますが、アーチサポート、足底板は医師の処方により義肢装具士が足に合わせて作製する装具です。
さらに痛みがひどい場合は、局所にステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)と麻酔剤を注射しますが、この注射は数週間おきに数回にとどめます。炎症が取れれば、痛みはなくなります。痛みが消えても、一度できた踵骨棘はなくならず、その後の大きさにも変化はありません。
こうした治療とともに、日常生活では足底腱膜を伸ばすストレッチを行うと効果的。ストレッチは、立った姿勢で踵を少し上げ、足先にゆっくり体重をかけていきます。この時、足の指を曲げて足首を反らし、足の裏を5~10秒、十分に伸ばすようにします。左右交互に行い、少なくとも1日各30回、できれば100回行うと理想的です。
踵骨棘が肥大して硬い隆起を触れる場合には、内視鏡下で踵骨棘を切除する手術を行うこともあります。
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