新生児の血液中の間接型ビリルビンが異常に増え、脳の神経細胞にたまって脳性まひなどの後遺症を残す疾患
ビリルビン脳症とは、新生児期に黄疸(おうだん)が出現し、血液中の間接型ビリルビン(胆汁色素)の上昇によって脳の神経細胞に蓄積、黄染していろいろな神経症状を来す疾患。核黄疸とも呼ばれます。
血液と脳の間には血液脳関門と呼ばれる組織があり、血液中の物質を簡単には脳に通さない仕組みになっています。元気な新生児であれば、生後1週間ほどたつと血液脳関門が働いて、血液中のビリルビンが脳へ移行しなくなります。しかし、低出生体重児(未熟児)、低酸素状態、低血糖などが存在すると、血液脳関門の機能が働かないためにビリルビンが脳の大脳基底核という神経細胞に移行し、ビリルビン脳症になりやすくなります。
ビリルビン脳症の発症2〜3日の第1期には、重症の黄疸症状のほかに、元気がなくなる、筋緊張が低下する、ほ乳力が低下する、1日中うとうとしているなどの症状がみられます。
次いで、発症約3日〜1週間の第2期には、筋緊張が高進する、後弓反張(こうきゅうはんちょう)という頭を後ろに反らした全身硬直を起こす、発熱する、甲高い泣き声を上げる、けいれんを起こすなどの症状をを示します。
発症1週間以降の第3期には、筋緊張の高進は弱まり、あるいは消えていきます。この時期に死亡したり、生存しても脳性まひ、知的障害、難聴などの後遺症を残し、永続的に続きます。
早発黄疸を見付けた場合、早急に診断、治療ができる医療機関を受診することが大切です。
ビリルビン脳症の検査と診断と治療
小児科の医師による診断では、黄疸の症状があり、血液中の間接型ビリルビン値が高い場合に、ビリルビン脳症を疑います。
ビリルビンの脳神経系への影響を調べるために、聴性脳幹反応という聴力検査や、頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うこともあります。
小児科の医師による治療では、光線療法、交換輸血を行い、高ビリルビン血症の治療に努めます。
光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、脂溶性の間接型ビリルビンを水溶性のサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。水に溶けやすいサイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。
強い光線による視神経の障害を避けるため、眼帯で遮光する必要がありますが、光線治療は長時間受けても副作用はみられず、脳性まひを引き起こすビリルビン脳症に対して非常に有効な治療法です。
光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。輸血による感染症などのリスクが全くないわけではありませんが、ビリルビン脳症による後遺症を防ぐためには必要な治療です。
脳性まひに至った場合は、早期診断し、リハビリを早期に開始します。
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