結膜が平均より強く弛緩した状態になり、異物感、流涙、出血を生じる眼疾患
結膜弛緩(しかん)症とは、結膜が平均より強く弛緩した状態になり、異物感、流涙、出血などを生じる眼疾患。
目の結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、半透明の薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。
その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ることで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しています。
また、結膜には適度な緩みがあり、上下左右などの眼球運動に耐えられるようになっています。この緩みが眼球結膜の部分で平均より強くなっている状態が、結膜弛緩症です。
緩んだ結膜は下まぶたに沿って存在し、程度が強い時は角膜へ乗り上がっていることもあります。
結膜弛緩症の原因はよくわかっていませんが、加齢とともに増える傾向にあります。
結膜弛緩症を発症すると、眼球運動や、まばたきに伴って、弛緩結膜(余剰結膜)が過剰に動くため、異物感を生じます。強い痛みではなく、ごろごろする、しょぼしょぼする、何か挟まっている感じがするなど、不快感に近いような症状です。
また、下まぶたと結膜の間の空間にたまるようになっている涙が、その空間に弛緩結膜があるためにたまらず、弛緩結膜が形成するひだ、あるいはしわの間に涙がたまり、揚げ句に、外にこぼれ落ちるため、流涙を生じます。
さらに、弛緩結膜が過剰に動くことから、結膜の毛細血管が引っ張られて切れ、白目から出血する結膜下出血の原因となります。結膜下出血を繰り返す人には、しばしば結膜弛緩症がみられます。
こういった症状から眼科を受診した場合、しばしば疲れ目、いわゆる眼精疲労などと診断され、結膜弛緩症が見過ごされていることがあり、眼精疲労などの点眼薬を処方されることもあります。しかしながら、結膜弛緩症は物理的に結膜が余っている状態なので、点眼薬だけで症状が軽快することはあっても、完治は難しくなります。
結膜弛緩症はドライアイとも深い関係があり、下まぶたに沿って弛緩結膜が存在するため、弛緩結膜が形成するひだや、しわの間に涙がたまったり、こぼれ落ちるため、角膜に涙がゆき渡らなくなり、ドライアイと同じ状態になります。弛緩結膜に隣接した部分の角膜に、傷が生じることもあります。
本当に涙の分泌量が少ないドライアイがある場合には、結膜弛緩症によりさらに目の表面に涙がゆき渡らなくなるために、ドライアイの症状の悪化につながります。ドライアイの人は、点眼薬をむやみに使用すると点眼薬毒性が出ることがありますが、ドライアイと結膜弛緩症の合併を見過ごされ、過剰な点眼薬の使用によって悪循環に陥ることもあります。
目に慢性の異物感や不快感を覚えている人、涙があふれる傾向がある人、白目からの出血を繰り返す人、いろいろな点眼薬を使ってもドライアイの症状が改善しない人は、結膜弛緩症がないかどうか一度、眼科を受診し、正しく診断してもらうことが勧められます。
結膜弛緩症の検査と診断と治療
眼科の医師による診断では、結膜の過度の弛緩は下の白目を覆っている眼球結膜に現れやすいため、下まぶたを下に引き、さらに軽く目の奥のほうへ押し付けながらそのまま上へ持ち上げると、眼球と下まぶたの間に、半透明の弛緩結膜(余剰結膜)現れることで、確定できます。
目の表面の状態を調べるために、スリットランプ(細隙灯〔さいげきとう〕)と呼ばれる検眼用の顕微鏡を使って、フルオレセインという黄色の染色液を少量点眼すると、よりはっきり弛緩結膜の存在を見ることができます。
眼科の医師による治療では、一般的に、下の白目の部分にある弛緩結膜を手術で切除します。手術は局所麻酔で15分程度で、弛緩結膜を切除した後、糸で縫合します。
手術後に強く目をこすると糸がとれるので、1週間は寝る際に眼帯をします。手術後に糸による異物感が生じますが、1週間程度でよくなります。手術後の充血も、1週間程度で消えます。手術後の傷跡はほとんど残らず、結膜は再生します。
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