拳を握った状態での殴打により、自らの中手骨の頸部が折れる外傷
中手骨頸部(ちゅうしゅこつけいぶ)骨折とは、ボクシングや空手などのスポーツで、拳(こぶし)を握った状態で相手や物を殴打することによって、自らの手のひらの骨である中手骨の頸部が折れる外傷。ボクサー骨折とも呼ばれます。
パンチ力の強いボクシング選手が、対戦相手の頭を強く殴打し、拳を握った状態でできる平らな面で、親指以外の4本指の第2、第3関節の間の部分、いわゆるナックルパートで正確に当たっていない場合に、よく発生します。
実際には、ボクシングでの発生は意外に少なく、一般の人がけんか相手やゲームセンターのパンチングマシーンを殴打して発生するケースがほとんどを占めます。また、乗り物のハンドルを握ったまま正面から交通事故に遭うなどしたケースでも、衝撃による外力が手指の付け根にある中手指節関節(MP関節)から中手骨の長軸に向かうことで発生します。
ボクシング選手では人差し指や中指の中手骨に、一般の人では薬指や小指の中手骨に発生することが多く、外傷の衝撃後に激痛、特定部位の圧痛、手の甲や時に指先までのはれ、変形、手や手指の機能不全、運動障害などが急激に現れます。
とりわけ、中手骨頸部の骨頭が手のひら側に曲がる屈曲変形を来すため、拳がつぶれた状態になります。後遺症として、指の動きが悪くなる、握ると指が重なる、指の力が弱くなるなどが現れることもあります。
ボクサー骨折が発生した際は、応急処置として患部を氷などで冷やしてはれを抑え、患部を固定し、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。
患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指の中手骨を骨折した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。
中手骨頸部骨折の検査と診断と治療
整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、手指の付け根の中手指節関節(MP関節)にあって、手を握ると本来は盛り上がる拳がへこんでいて、痛みやはれを認めることで、中手骨頸部骨折と判断します。
X線(レントゲン)検査を行うと、中手骨頸部に骨折線を確認でき、特に側面から見た画像で骨折の屈曲変形が明らかに認められます。
整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、屈曲変形を手で整復した上で、スプリント材で手全体にスプリント固定を施し、三角巾などを使って吊(つ)り包帯での挙上を行います。
屈曲変形の整復状態を保存療法で保持するのが困難な場合は、ピンなどを用いて中手骨頸部を固定する手術的処置を行います。腱の損傷を合併した場合も、手術的処置を行います。
予防法としては、ボクシングでは正確にナックルパートで当たるように打つこと、厚めのグローブを使用することなどです。
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