片方の耳に重度の感音難聴が起こった後、長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を起こす疾患
遅発性内リンパ水腫(すいしゅ)とは、片方の耳に重度の感音難聴が起こった後、数年〜数十年以上の長い年月を経てから回転性めまい発作や聴力低下を起こし、症状を繰り返す疾患。
原因はよくわかっていませんが、外界の音を感じ取ったり、自らの体の傾きや回転を感知したりする内耳において、その感覚細胞の周りを満たす内リンパ液が過剰に増えることによると考えられています。
先行する重度感音難聴を起こす原因疾患としては、流行性耳下腺(じかせん)炎、外傷、上気道感染、ジフテリア、ウイルス感染、内耳炎、先天性一側聾(いっそくろう)、若年性一側聾などが主なものです。流行性耳下腺炎による片方の耳の重度感音難聴に、遅発性内リンパ水腫が合併して発症する頻度は、15~20パーセントといわれています。
遅発性内リンパ水腫は、先行する重度感音難聴側の耳が原因で起こる同側型と、聞こえのよい側の耳が原因で起こる対側型とに分類されます。まれに、両側型もあります。
同側型の場合は、すでに難聴になっているため、メニエール病によく似た回転性めまい発作の繰り返しが主な症状です。めまいがひどい時には、吐き気、嘔吐(おうと)も伴います。
対側型の場合は、回転性めまい発作の繰り返しと、聞こえのよい側の耳に新たな難聴や耳鳴りが起こります。難聴や耳鳴りも繰り返し、軽くなったり消失したりします。
昔から難聴があってめまいを繰り返すようになったり、聞こえがよいほうの耳の聴力が悪化した場合には、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが重要です。遅発性内リンパ水腫の診断は、専門医でも難しい場合が少なくありません。
遅発性内リンパ水腫の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、聴力検査を行って片耳または両耳に高度難聴ないし全聾を認め、平衡機能検査を行って機能低下を認めることで、遅発性内リンパ水腫と判断します。また、補助検査として内リンパ水腫を調べる検査を行います。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、同様の病態を示すメニエール病に準じて行います。根本的な治療法は見付かっていないため、回転性めまい発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法が基本になります。
回転性めまい発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、ステロド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)中心の薬による治療が行われます。
具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢(まっしょう)血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。
背景に自律神経失調やストレスがある場合は、自律神経調節薬や抗不安剤などを用います。
薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われます。
対側型では、聞こえのよい側の耳の聴力変動や、その悪化が問題になり、めまいに加えて日常生活に大きな影響を及ぼすため、予後は決してよいとはいえません。薬で治らない場合には、長期的にみると両耳の高度難聴になることも考えられます。
遅発性内リンパ水腫の確立された予防方法はありませんが、体調やストレスなどが発症の誘因となりやすいため、普段から規則正しい生活をして、ストレスをためないように心掛けることが重要です。
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