40歳以下の若年層に発症するパーキンソン病で、多くは遺伝性
若年性パーキンソン病とは、40歳以下の若年層に発症するパーキンソン病。15万人近い患者がいるとされるパーキンソン病のうち、約5〜10パーセントを占めると見なされています。
50~60歳代で発症することが多い一般的なパーキンソン病は、さまざまな環境要因、生活習慣、性格、遺伝などが重複することによって発症するとされています。中脳にあるドーパミン神経の変性と脱落により、手足の震えや、筋肉の硬直、姿勢制御の障害などさまざまな運動障害が起こり、病状が進行すると日常生活を送ることが極めて困難になります。
一方、若年性パーキンソン病の場合は、遺伝によるものが多く、常染色体劣性遺伝(APーJP)という形式をとります。原因となる遺伝子として、Parkin(パーキン)、PINK1(ピンク・ワン)という蛋白(たんぱく)質を作る遺伝子が確認されています。どちらかに変異が起こり、本来持っているはずの異常発生したミトコンドリアを排出していく力が失われ、異常なミトコンドリアが細胞内に蓄積されて、中脳にあるドーパミン神経の変性と脱落が起こり、発症に至るとされています。
この常染色体劣性遺伝形式で発症する若年性パーキンソン病では、両親のどちらかに近親婚、大部分はいとこ婚の前例があり、早い人では10歳代で発症しており、最年少では7歳で発症というデータも存在しています。また、10歳代や20歳代といった早い時期での発症の場合は大抵、兄弟姉妹などとそろって発症するというデータも残されています。
この遺伝性の若年性パーキンソン病の特徴として、L-ドーパというパーキンソン病に有効な薬の効力が非常にあり、一般的なパーキンソン病に比べても長期間効力を維持することができます。また、睡眠効果がはっきりしていて、睡眠が深ければ薬もよく効き、睡眠が浅ければ薬の効き目も悪くなります。
症状の進行は、一般的に非常に緩やかで、発症している期間は30年から50年以上と長くかかります。その症状は、1日のうちの移り変わりが大きく、朝目覚めた後は症状が軽く、時間がたつにつれ症状が重くなります。朝目覚めた後、症状が軽くなるのは、睡眠による効果で、昼寝の後も同じように症状が軽くなることがあります。
初発症状は歩行障害のことが多く、ジスキネジアという無意識に足が震える不随意運動がよく見受けられます。一般的なパーキンソン病の若年性発症では、振戦という手の震えが初発であることが多いのと対照的です。
振戦が現れても微細なものが多く、関節の固縮、動作が緩慢にある無動はあまりひどくありません。姿勢保持障害(後方突進現象)が目立つことが多く、かなり特徴的な症状です。発症後数年たつと、すくみ足も出現することが多くみられます。
幻覚・幻聴など自律神経症状・精神症状の頻度が高いという特徴もあります。物忘れなど認知障害は認められません。
若年性パーキンソン病の検査と診断と治療
神経内科の医師による診断には、さまざまな方法があります。まず、最も一般的な検査方法としては、脳のCT検査、MRI検査のほかに、血液検査や尿検査、髄液検査などがあります。ただ、これらの検査によってパーキンソン病と診断することは非常に困難を極めているため、SPECTやPETといった検査も必要になることがあります。
また、遺伝性の若年性パーキンソン病が疑われる場合には、血液検査が有効とされています。近年は、遺伝子診断も可能になっています。
若年性パーキンソン病の治療は、主に薬物療法によって行われています。使用される薬物の多くは、ドーパミンの補充や分解抑制などを目的に、L-ドーパなどのドーパミン関連の薬物となり、非常によく効きます。
しかし、L-ドーパなどのドーパミン関連の薬物の使用によりジスキネジアが現れやすく、 服薬が長くなると薬の効果の持続時間が短くなり、症状の日内変動が激しくなってきます。これらの症状をを防ぐためには、多剤を併用することが多くみられます。
その他の治療法としては、外科的方法(手術)や、リハビリ、食事療法などがあります。
手術では、定位脳手術およびドーパミン産生組織の移植が挙げられます。ただし、手術が行われるのは薬物療法で効果が期待できず、また、薬物による治療が断念されるような場合に限られています。
リハビリでは、身体的なリハビリはもちろんのこと、精神的リハビリも同時に行われることが重要です。どのような場合でも、無理をせず自分に合ったリハビリを少しずつ毎日行うことで快方に向かっていきます。
食事療法では、低蛋白を心掛けたメニューをメインとして取り組んでいくことになります。
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