化粧品などが原因で顔に色素沈着が生じる皮膚障害
女子顔面黒皮症とは、化粧品などが原因になることによって、顔に色素沈着を生じる皮膚障害。リール黒皮症とも呼ばれます。
男性に生じるケースもありますが、大部分は20~50歳の女性にみられます。
顔では、ほおを中心に耳前部、額、まぶたなどに、紫褐色から黒褐色の網状、斑(まだら)状、またはびまん性の境界のはっきりしない色素沈着を生じます。時には、首や前腕に生じることもあります。
多くの場合には、色素沈着の前に、顔のかゆみ、あるいは赤みなどがあって、その後、半月から数カ月以内に色素沈着に気付きます。色素沈着ができた後も、かゆみ、赤みが残っている場合もあります。
原因が不明のこともありますが、大部分はもともと素因のある人に、化粧品皮膚炎などの湿疹(しっしん)のような炎症反応が繰り返し起こった結果、表皮の基底部が破壊され、基底部にあるメラニン色素が真皮内に入るために生じると考えられています。
かつて、化粧品に含まれるタール系の色素や香料が原因の化粧品皮膚炎が多かった時期に、この女子顔面黒皮症も増加しました。化粧品メーカーがこれらの色素や香料を化粧品から除外してから、女子顔面黒皮症が急激に減少したことからも、化粧品皮膚炎と関連の深いことがわかります。原因物質には、タール色素の赤色219号、ズダンI、ジャスミン油、パラベンなどがあります。近年は、化粧品の品質向上によってあまりみられなくなっています。
女子顔面黒皮症に気付いたら、原因となっている化粧品などの使用を中止することが必要です。皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診して、どの化粧品が原因物質となっているかについての検査を受けることが勧められます。
また、女子顔面黒皮症と似たような症状のものに、入浴の時にナイロンタオルなどで皮膚をこすりすぎて、色素沈着するものがあります。若い女性を中心に、胸、背中、腕など下の骨が出っ張っていて、皮下脂肪の少ない部分に生じるのが特徴です。
ナイロンタオルは木綿のタオルより繊維が強いため、皮膚に加わる刺激が強すぎるのが原因と見なされますので、使用をやめれば自然に治ります。
女子顔面黒皮症の検査と診断と治療
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状やその部位から原因として疑われる化粧品などを推定し、続いて貼布(ちょうふ)試験(パッチテスト)で確認します。
貼布試験では、リント布かガーゼに原因と考えられる化粧品などを塗って、皮膚に張り付け、絆創膏(ばんそうこう)で固定します。48時間後に検査の判定を行った時、貼布した部分に発赤、または小さな水膨れができていれば陽性です。貼布試験を行う際には、入浴はできず、汗をかかないように注意する必要もあります。
皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、大部分は顔面の湿疹様病変の結果生じるため、原因と思われる化粧品などを除くことが重要です。
女子顔面黒皮症そのものに対する特効治療法は、現在のところありません。多くの場合は、皮膚炎の症状が合併しているので、赤みがあったり、かゆみを伴う急性期には、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)の外用、抗ヒスタミン剤やビタミンCの内服などを行います。症状が激しく、範囲が広い場合には、短期間ステロイド剤の内服を行います。
化粧品などの原因物質との接触を避けることでよくなり、炎症症状が取れれば色素沈着は消えるのが一般的ですが、色素沈着が取れるまで数年かかる場合もあります。
生活上の注意としては、急性期では皮膚のバリア機能が壊れていますので、化粧は一切しないように。マッサージなどの摩擦を避け、日光にもなるべく当たらないほうが安全です。
急性期をすぎた後は、低刺激性のせっけんや、敏感肌用の化粧品を、徐々に使っていくようにします。
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