染色体による性別は女性なのに、外性器が男性化する先天異常
女性仮性半陰陽(はんいんよう)とは、染色体による性は女性なのに、男性のような外性器を有する先天異常。半陰陽の一種、また仮性半陰陽の一種です。
外性器は、陰核が肥大し、極端な例では陰茎のようになったり、大陰唇が陰嚢(いんのう)状に癒合したりするなど、いろいろな程度に男性化します。子宮、卵巣、卵管、腟(ちつ)の一部は、女性型に分化、発育しています。
この女性仮性半陰陽は、胎児の早い時期に大量の男性ホルモンが作用して起こると考えられ、多くは副腎(ふくじん)皮質ホルモンを作る酵素に異常のある副腎性器症候群、その代表的な疾患である先天性副腎過形成症が原因です。
ほかに、母体から男性ホルモン様作用を受けることが原因となって起こる、非進行性のものもあります。腎臓の横にある副腎の異常がなくて起こる男性化で、大部分は母親の妊娠中に流産防止の目的で使用したホルモン剤の影響によるもので、出生後は男性化は進行しません。
副腎皮質からは、コルチゾール(糖質ホルモン)とアルドステロン(鉱質ホルモン)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンもわずかに分泌されています。副腎性器症候群では、副腎皮質の働きの異常により、コルチゾールやアルドステロンの分泌が低下し、アンドロゲンが過剰に分泌されます。
この副腎性器症候群には、先天性のものと後天性のものとがあります。先天性のものは、コルチゾールの合成に必要な酵素が生まれ付き欠けているために、下垂体(脳下垂体)から副腎皮質刺激ホルモンが多量に出るようになり、副腎が過形成を起こします。その結果、アンドロゲンが過剰に分泌されるようになります。これが先天性副腎過形成症です。
コルチゾールの合成にかかわる酵素は数種類あり、欠ける酵素の種類により疾患のタイプが分かれ、症状も少しずつ違っています。いずれも常染色体劣性遺伝による異常です。日本では、21ー水酸化酵素の欠損が最も多く認められます。
後天性のものは、副腎皮質の腺腫(せんしゅ)やがんなどが原因で起こるもので、副腎皮質の機能が低下して、アンドロゲンが過剰に分泌されます。
男女にかかわりなく、先天性副腎性器症候群は発生し、女児では女性仮性半陰陽となります。陰核の肥大や陰唇の癒合がみられ、性器はどちらかというと女性よりも男性的な外見になり、男児と間違えられることが多いものです。子宮、卵巣、卵管などの生殖器官の構造は、正常です。
成長するに従って男性化が顕著になり、成人の女性では、ひげが生え、手足の毛が濃くなり、陰核が大きくなり、声変わりや月経不順、不妊、乳房の委縮が起こります。
男児では、出生時には特に異常はみられませんが、幼少時から陰茎が発育し、陰毛が生えて声が太くなります。男女児とも、早い時期に発育が停止します。
また、先天性副腎性器症候群の中でも重症のタイプでは、新生児期から副腎不全が発生します。嘔吐(おうと)、脱水、酸・塩基などの電解質の異常、不整脈などの症状が現れ、適切な治療をしないと生後数日で死亡します。
現在日本では、21ー水酸化酵素欠損症を見付けるため、新生児スクリーニング検査を行っています。尿中の副腎皮質ホルモンと、その代謝物質を測定することで、どの酵素が欠けたのか推定することができます。症状の軽い不完全型の副腎性器症候群の場合は、副腎皮質刺激ホルモンの負荷後にこれらを調べることで、ようやく診断できることもあります。
出生時に医師や看護師によって、先天性副腎性器症候群による女性仮性半陰陽が発見されることが望ましいのですが、思春期や成人後に発見されることもあります。思春期になって女の子のはずなのに初経(初潮)がなかったり、陰核の肥大や多毛などの男性化が起こってくる場合には、できるだけ早く小児科、あるいは内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。
女性仮性半陰陽の検査と診断と治療
小児科、あるいは内科、内分泌代謝内科の医師による女性仮性半陰陽の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、副腎皮質ホルモンの測定や超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による女性性器の存在確認を行います。
医師による女性仮性半陰陽の治療では、副腎性器症候群によって分泌が低下したコルチゾールやアルドステロンを補い、アンドロゲンの値を正常に戻すことが目的になります。下垂体(脳下垂体)からの副腎皮質刺激ホルモンが出すぎないように、副腎皮質ステロイド剤の一種であるコルチゾンを投与します。
女児で陰核の肥大や陰唇の癒合がみられるものは、1~3歳の間に形成手術を行って、形状の異常を矯正します。成人のがん性のものは、早期に副腎摘除の手術をしたり、コルチゾンの投与を行います。
子供が副腎性器症候群による女性仮性半陰陽を持つ両親は、副腎皮質ステロイド剤の飲み方と副作用について説明を受けて下さい。けがや発熱で強いストレスを受けた時は医師に報告し、薬の量を増やしてもらいます。副腎皮質ステロイド剤の服用を突然やめると、急性副腎不全を起こしますので、注意が必要となります。
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