順天堂大学(東京都文京区)は12日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)からつくった心筋細胞のシートを、重い心不全の虚血性心筋症の患者1人に移植したと発表しました。大阪大学が主導して、2020年に3例の移植を行った臨床試験(治験)の一環で、大阪大以外の施設での移植は初めてといいます。
手術は8月中旬に行われました。患者は60歳代男性で、左胸を約7センチ切った肋骨(ろっこつ)の間から、直径3センチほどのシート3枚を心臓に貼りました。シートから出る物質が血管新生を促し、心臓機能の改善が期待されるといいます。経過は順調で、患者は息切れの自覚症状が軽くなったと話しているといいます。今後、治療効果の客観的な評価も行います。
今回使った心筋シートは、京都大学iPS細胞研究財団が備蓄する他人のiPS細胞を使い、大阪府にある連携企業の施設でつくりました。低温を保つ専用容器に入れ、新幹線で約500キロ離れた順天堂大病院まで運びました。手術直前の手術室で、2時間ほど最終的な調整を行い、移植に使ったといいます。
研究チームは、「約2日以内ならば手術に適した品質で輸送可能だ」としています。移植手術についても長時間の訓練は不要で、通常の手術ができる施設ならば実施できるため普及しやすいとしています。
今後は九州大学などで数例移植して有効性や安全性を調べるということで、2025年ごろの実用化を目指します。
2022年9月12日(月)
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