北朝鮮で8月末から新型コロナウイルスのワクチン接種が開始されたことが、明らかになりました。北朝鮮政府関係者に近い中朝貿易関係者が語りました。
北朝鮮はこれまでアメリカ製ワクチンしか信用せず、昨年はワクチンを共同購入・分配する国際的枠組み「COVAX(コバックス)」から割り当てられた中国製ワクチンの受け取りを拒否していたものの、今春以降の感染拡大を受けて方針を転換しました。新型コロナの再流行や貿易正常化、人的往来の再開に備える狙いがあるようです。
ワクチン接種は、 平壌(ピョンヤン) や、中国との間の陸上貿易拠点である新義州(シンウィジュ)を始めとした国境地帯、国際貨物の受け入れ港がある南浦(ナムポ)で始まっています。ワクチンは中国製とロシア製で、来年1月末までに全住民への接種を終える計画といいます。
8月に船舶で中国製ワクチンが北朝鮮に運ばれたのに続き、9月26日に5カ月ぶりに再開した中朝間の鉄道貨物輸送でも、大量のPCR検査キットと中国製ワクチンが運ばれたといいます。
北朝鮮は5月12日、新型コロナ感染を国内で初めて確認したと公表。8月に終息を宣言するまで住民へのワクチン接種は実施してこなかったものの、朝鮮中央通信によると、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は9月上旬の施政演説で「ワクチン接種を責任を持って実施」するとし、「必要な医療品を輸入してでも供給しなければならない」と強調していました。
北朝鮮は、ワクチンを低温で輸送・管理する「コールドチェーン」が整備されていないことから、2~8度の通常の冷蔵庫でも保管可能な中国製とロシア製の輸入に踏み切ったとみられます。
ある中朝関係筋は、「中国の新型コロナ対策がある程度成功していることも後押しした」と説明しています。
また、北朝鮮では再びマスク着用が義務化されたようです。朝鮮中央通信が2日に公開した「国際老人の日」のイベント様子を見ると、出席者たちはマスクを着用しています。同イベントは1日に各地で行われました。朝鮮中央テレビが報じた金日成総合大学の創立76年イベントでも、マスクを着用した若者の姿が見られました。
北朝鮮は8月に「新型コロナウイルスに勝利した」と宣言してから防疫措置を順次緩和し、マスク着用の義務を解除していました。9月までは建国記念日(9月9日)など大型イベントでも出席者のマスク姿は見られませんでした。
しかし、朝鮮中央通信は9月20日、「専門家たちは、冷え込み始める10月から全住民がマスクを着用するよう勧告している」と伝え、マスクの着用を予告しました。金総書記は9月8日の施政演説で、11月からマスク着用を住民に勧告するとの考えを示していましたが、これを1カ月前倒ししたもので、新型コロナとインフルエンザの同時流行の可能性が高まったことを受け、先手を打ったものとみられます。
2022年10月2日(日)
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