東京大学医科学研究所の河岡義裕特任教授(ウイルス学)らの研究チームは8日、新型コロナウイルスのオミクロン型の派生型「BQ・1・1」と「XBB」に対して、国内で承認されている3種類の抗ウイルス薬が増殖を抑える効果があったとする論文を発表しました。 夏の第7波で流行の主流だった「BA・5」に変異が加わった「BQ・1」や「BQ・1・1」は、アメリカやヨーロッパで増えています。アジアでは、「BA・2」系統の「XBB」が広がっています。
日本国内では今のところ、「BQ・1・1」と「XBB」は大きな流行には至っていません。11月8~14日の東京都のゲノム解析では、「BA・5」が感染者の77%を占め、「BQ・1」と「BQ・1・1」の「BQ・1」系統は6・6%にとどまります。ただ、国立感染症研究所の推定では、12月5~11日に「BQ・1」系統が36%まで伸びています。
アメリカ疾病対策センター(CDC)の推定によると、11月27日~12月3日のアメリカの新規感染者のうち「BQ・1」系統が計60%を超えました。直近の主流だった「BA・5」は13・8%まで減り、置き換わりが進んでいます。
研究チームは「BQ・1・1」や「XBB」に感染した細胞に抗ウイルス薬を加えて、ウイルスの増殖を抑える効果を調べました。アメリカのギリアド・サイエンシズの点滴薬「ベクルリー(レムデシビル)」とアメリカのメルクの飲み薬「ラゲブリオ(モルヌピラビル)」、アメリカのファイザーの飲み薬「パキロビッド」の成分「ニルマトレルビル」については、いずれも新型コロナ流行初期の従来型ウイルスと同様に有効でした。
抗ウイルス薬では11月に塩野義製薬の飲み薬「ゾコーバ」が承認されました。河岡特任教授は「ゾコーバは(オミクロン型の)BA・1に対して高い有効性を示しており、有効と考えられる」と話し、「BQ・1・1」や「XBB」の新たな派生型への効果にも期待を示しました。
抗体医薬が「BQ・1・1」や「XBB」の細胞への感染をどれほど防ぐかも調べました。国内で承認されているイギリスのアストラゼネカの抗体医薬「エバシェルド(チキサゲビマブ・シルガビマブ)」やイギリスのグラクソ・スミスクラインなどの「ゼビュディ(ソトロビマブ)」、アメリカのリジェネロン・ファーマシューティカルズなどの「ロナプリーブ(カシリビマブ・イムデビマブ)」は、いずれも効果が低くなりました。これまで流行してきた「BA・2」や「BA・5」で高い効果を示していた国内では未承認のアメリカのイーライ・リリーの「ベブテロビマブ」も、同様に効果が低くなりました。
河岡特任教授は「今後の派生型でも抗体医薬の効果が低い状態が続き、抗ウイルス薬に期待が高まる」と指摘しています。
国立感染症研究所や国立国際医療研究センターとの共同研究で、7日付のアメリカの医学誌「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」に掲載されました。
2022年12月9日(金)
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