武田薬品工業は14日、デング熱ワクチン「キューデンガ」がブラジルで承認を得たと発表しました。2022年8月にインドネシアで初めて承認され、12月にヨーロッパ連合(EU)で承認を得ており、ブラジルでは2023年中の販売を見込んでいます。重症化を防ぐ効果が高いとされており、アメリカでも承認申請しました。
ブラジルの国家衛生監督庁が4歳以上から60歳までを接種対象とし、キューデンガを承認しました。デング熱は蚊が媒介するウイルス感染症で、毎年3億9000万人が感染し、発熱や発疹、頭痛などの症状のほか、重症化すると出血といった症状も見られ、約2万〜2万5000人が死亡するとされます。
ブラジルでは感染が拡大傾向にあり、2022年のデング熱による死亡者数は1000人超、同年の症例数は140万例でした。
キューデンガは複数のデングウイルスに有効で、感染歴に関する検査を必要としません。 デング熱ワクチンを巡っては、2015年にフランスのサノフィが世界初のワクチンで認可を得たものの、感染歴のない子供が接種後に感染した場合、逆に症状が重くなる事例が確認されました。流行国の一つだったフィリピンではそのために数十件の死亡事例が報告され、ワクチン接種が感染歴のある人に限られ、患者数の多いとされる9歳未満の小児には使えないといった経緯がありました。
武田薬品工業は16日、インドネシアやブラジルなどで承認を得たデング熱ワクチン「キューデンガ」に関する投資家向けの説明会を開き、今後10年以内に年1億回分(5000万人分)を生産する体制を整える方針を明らかにしました。医薬品の製造受託事業者を活用するほか、自社生産も強化します。ピーク時の売上高は16億ドル(約2100億円)から20億ドル(約2600億円)を見込みます。
同社のグローバルポートフォリオディビジョン・プレジデントのラモナ・セケイラ氏は説明会で、「想定よりも早期にキューデンガの承認を取得できた。旅行者向けなどデング熱が流行していない国でも対策として活用できる」と述べました。これまで年5000万回分の製造能力を想定していましたが、インドなどでパートナーシップ先と連携し、生産能力を増やします。
セケイラ氏はキューデンガについて、「国や市場ごとに柔軟に価格を設定する」と話しています。例えば旅行者向けの接種を目指すドイツでは1回当たり115ドル(約1万5000円)とする一方、インドネシアではワクチン接種の価格は1回当たり40ドル(約5300円)とし、感染が深刻な流行国で公的機関などと連携する場合には平均価格より低い水準に設定することも検討します。
現在、デング熱は熱帯・亜熱帯地域を中心に発生しているものの、地球温暖化の進行やコロナ禍からの回復局面で人の往来が増加するのに伴って、脅威はさらに広がるとみられています。日本でも2016年に海外帰国者の死亡例が発生しており、武田薬品工業は国内でも将来承認申請する方向です。
2023年3月16日(木
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