理化学研究所などの研究グループは、脳動脈瘤ができた際に特定の遺伝子の突然変異が起きていることを突き止め、手術ではなく、薬による治療の可能性を見いだしたと発表しました。
理化学研究所のチームリーダーで杏林大学医学部の中冨浩文教授らの研究グループは、外科手術で摘出された脳動脈瘤の遺伝子を解析し、405個の後天的にできたとみられる遺伝子変異があることを確認しました。
このうち16個の遺伝子が特に高頻度で変異がみられ、その多くが腫瘍形成にかかわる遺伝子として知られるものだったということです。
特に治療が困難な大きな動脈瘤では、PDGFRβ(ベータ)という遺伝子の変異が起きていました。
この遺伝子変異を導入したマウスに、がん治療薬の1つである「スニチニブ」を投与したところ、動脈瘤の発生・成長が抑制されたということです。
研究グループによると、日本人の約5%が破裂する前の脳動脈瘤を発症しています。脳動脈瘤の治療は、現状では開頭手術か血管内カテーテル治療しかありませんが、研究グループでは今後、スニチニブと似た作用を持つさまざまな薬を試すことなどにより、投薬による脳動脈瘤の治療が可能になるとみて、10年後をめどに実用化につなげたいとしています。
本研究は14日付で、アメリカの科学雑誌のオンライン版に掲載されました。
2023年6月15日(木)
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