東京医科歯科大学病院(東京都文京区)は4日、触覚を伝える手術支援ロボットを使った世界初の手術に成功したと発表しました。操作する医師が感触を得られることで、安全性の向上が期待できます。2024年度の統合を目指す東京工業大などと共同開発したもので、「医工連携」の成果をアピールしました。
ロボット手術は、患者の体に入れた内視鏡や器具が接続されたアームを、医師が患部の画像を見ながらハンドルで操作します。国内では2012年に公的医療保険の適用となり、広がっています。
新たなロボット「サロア」は、両大学と、東工大発の新興企業「リバーフィールド」が開発し、今年5月に医療機器として承認されました。空気圧で3本のアームを動かし、先端の器具にかかった圧力から、臓器などの硬さや軟らかさを推定し、医師の指先に感触を伝えます。
従来のロボットでも、手ぶれがないなど精密な操作ができますが、同大病院によると、触った感覚が得られないため、不慣れな医師では、切る必要のない組織を切ったり、臓器に穴を開けたりする恐れがあったといいます。
今回の手術は7月3日、40歳代のS字結腸がん患者に実施。術後の経過は良好で、1週間ほどで退院する予定です。
執刀した絹笠祐介教授(大腸・肛門外科)は記者会見で、「ガーゼと脂肪の違いもわかった。引っ張る力なども伝わるよう改良していく」と話しました。
両大学は、2024年度の統合に向けて、医工連携を進めてきました。藤井靖久病院長は「連携によりロボットが実用化されたことは大変意義がある」と強調しました。
日本ロボット外科学会の渡辺剛理事長は、「触覚を備えたロボットは画期的だ。経験が少ない医師でも、標準的な手術を、より確実に行えるのではないか。機能の改良とともに、価格を抑える工夫も求めたい」と述べています。
2023年7月5日(水)
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