治療が難しく、転移しやすい高悪性度の大腸がんでは、がん細胞の周辺に多く含まれる特定のタンパク質が転移を促進していることを、京都大などの研究チームが突き止めました。このタンパク質は、骨髄で作られて腫瘍に集まる免疫細胞から多く分泌されていることも判明。このタンパク質の発生を抑えられれば、がんの転移を効果的に抑制する可能性があるとしています。論文は25日、イギリスの科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」電子版に掲載されました。
このタンパク質は、悪性度の高い大腸がんのうち、がん細胞以外の「腫瘍間質」に多く含まれる「トロンボスポンジン1」(THBS1)。遺伝子操作でTHBS1を分泌しないようにしたマウスの大腸に、研究チームががん細胞を移植したところ、免疫細胞が活性化して転移が抑制され、生存期間が延びました。
このマウスに、正常なマウスの骨髄細胞を移植したところ、THBS1が分泌されるようになり、再び転移が見られるようになりました。
THBS1を作るのは骨髄でできる免疫細胞の一種で、大腸がんを取り巻く組織から出るケモカインという物質に反応して集まってくる一方で、がんを攻撃せず、逆に保護する動きをすることも判明。ケモカインの働きを抑える化合物を大腸がんのマウスに投与するとTHBS1が減り、がんの転移は大幅に抑えられました。
研究チームの京都大大学院医学研究科、中西祐貴助教は、「大腸がんは転移すると生存率が低下する。THBS1を標的にした大腸がん治療法の開発だけでなく、ほかのがんの転移抑制にもつなげたい」と話しています。
大腸がんは国内では年間約15万人が新たに発症しています。内視鏡検査などで早期発見して取り除けば高い確率で治癒するものの、大腸がんの約2割は転移しやすいタイプとされ、治療の妨げになっています。
2023年9月28日(木)
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