2023/09/09

🟧iPS細胞の心筋球移植で心臓の収縮機能倍増 2年後に実用化へ

 iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心臓の筋肉(心筋)の細胞約1千個を球状に加工した「心筋球」計約5万個を、重い心不全患者の心臓に移植する世界初の治験を進めている慶応大学発の医療ベンチャー、ハートシード(東京都新宿区)が、手術を行った患者2人について顕著な症状改善効果を確認したことが9日、わかりました。心筋梗塞で硬化し収縮しづらくなった心臓の収縮機能が倍増。2年後の2025年の実用化を目指すといいます。

 治験の対象は、心臓の血管が詰まって心筋が壊死(えし)し、心臓の筋肉組織が硬くなって柔軟性が失われ、血液を送る力が衰えた「虚血性心筋症」という心不全の患者。息切れやむくみが起こり、悪化すると歩行ができなくなり生命の危険も生じます。

 すでに4手術を実施。そのうち昨年12月に1例目、今年2月に3例目の手術を、いずれも60歳代男性に対して実施した共同研究機関の東京女子医科大学病院(東京都新宿区)が、術後半年を経過したことから、治療の効果について取りまとめました。

 2人とも重篤な副作用はなく、細胞のがん化もありませんでした。心筋球は約30倍の大きさに成長して心臓と一体化し、筋肉組織は柔軟さを取り戻し機能が改善しました。生命にかかわる不整脈もなく、患者は退院し歩行のリハビリテーションも始めたといいます。

 手術から半年後の分析では、心臓が血液を送り出す力を示す収縮率(健常者は平均約65%)が、1例目が26%から28%に改善。3例目は、17%から38%に倍増しました。また、心筋梗塞を起こした心筋細胞数の指標となる物質も、1例目が血液1ミリリットル当たり1万1471ピコグラム(ピコは1兆分の1)から5733ピコグラムに急減。その後も減少が続いています。3例目は、5225ピコグラムから817ピコグラムに大幅減少し、重篤な心不全の基準となる900ピコグラム以下に改善しました。

 ハートシードの社長を務める福田恵一・慶応大学名誉教授は、「入念な準備を重ねた結果、大きな問題は起こっておらず、iPS心筋球移植の安全性と有効性を立証できた。日本発の新たな心不全治療法を世界に広げたい。今後は世界規模の最終段階の共同治験を行い、2025年ごろの実用化を目指している」と説明しています。

 今回の成果は、9日に開かれた日本心臓病学会学術集会で発表されました。

 2023年9月9日(土)

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