拒絶反応が起こりにくくなるように遺伝子を改変したミニブタの腎臓をサルに移植して、最長2年間生存させることに成功したと、アメリカの企業「イージェネシス」やマサチューセッツ総合病院などの研究チームが発表しました。同社は「ブタの腎臓を人に移植する臨床試験に近付いた」と説明しています。
イギリスの科学誌「ネイチャー」(電子版)に11日付で発表しました。
動物の臓器を人に移植する「異種移植」は、別の人からの臓器移植に代わる方法として長年研究されてきました。特にミニブタは、臓器の大きさが成人のものに近く、管理もしやすいため、適しているとされます。
ただ、人の免疫細胞から「異物」とみなされやすく、移植後に起きる激しい拒絶反応が大きな課題になっていました。
研究チームは今回、「ゲノム編集」技術でブタ特有のタンパク質を作る3つの遺伝子を壊し、移植直後の超急性拒絶反応を引き起こす分子を除去。さらに、人の免疫などにかかわる7つの遺伝子をブタに導入し、人の免疫細胞からの攻撃を受けにくくしたといいます。
こうしてできた遺伝子改変ブタの腎臓を15匹のカニクイサルに1つずつ移植。サルに元々あった2つの腎臓は取り除き、免疫抑制剤で拒絶反応を抑えながら2023年3月末まで観察しました。
その結果、最長で1匹が758日生存しました。一方、4匹は腎不全などで10日以内に死にました。
今回の研究は、人への移植を想定してブタの遺伝子を改変しており、人に移植した場合のほうが結果がよくなることが予想されるといいます。
アメリカ食品医薬品局(FDA)に認められれば、来年にも人の腎不全患者を対象とした臨床試験を始められる可能性があるといいます。
ブタの腎臓や心臓を使った移植は、人からの提供臓器の不足を補う目的で研究が進んでいます。アメリカでは昨年、重い心臓病のためにブタの心臓の移植を受けた男性が約2カ月後に死亡しました。
2023年10月13日(金)
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