国際空港のターミナルや旅客機から出された下水を分析することで、海外から入ってくる感染症の流行を予測し、対策に役立てようという研究が、関西空港で始まりました。この研究は、大阪公立大学の研究チームが進めます。
関西空港の下水を処理する浄化センターのタンクから、ターミナルや旅客機のトイレから出された処理する前の汚水を採取し、感染症を引き起こすウイルスや細菌の有無や量を分析します。
13日から泉佐野市の大学の研究室で分析が始まり、メンバーは12日に採取した汚水約3リットルを遠心分離機にかけて沈殿物を取り出していました。
研究チームでは、月に2回程度汚水を採取して、新型コロナウイルスやインフルエンザ、はしか、デング熱など、約30種類の感染症について大阪府内での流行状況を照合して関連を分析し、流行の予測につなげたいとしています。
研究チームによりますと、国内のいわゆる国際空港でこうした研究が行われるのは初めてだということです。
研究チームの代表を務める大阪公立大学大阪国際感染症研究センターの山崎伸二 教授は、「たくさんの外国人がくる2025年の大阪・関西万博までに流行の予測モデルをつくり、感染対策に活用したい。未知の感染症・病原体の把握にも努めたい」と話しています。
下水に含まれるウイルスや細菌の遺伝子を分析し感染症の流行をとらえる「下水サーベイランス」は、欧米の一部の国際空港では水際対策の一環として取り入れられています。
日本でも新型コロナウイルスの感染拡大で注目されましたが、活用には課題もあります。
国は2021年に下水サーベイランスの推進計画を策定し、自治体や大学、研究機関など合わせて20のグループが新型コロナウイルスについて下水処理場などで実証実験を行いました。
その結果、市中の流行状況や変異型ウイルスへの置き換わりについては、相関関係が確認できたということです。
一方で、大量の水に希釈される下水という特性からデータのばらつきが大きいことに加え、汚水の採取や分析の手法が複数ありノウハウが不足しているなど、課題も多いということです。
今回の大阪公立大学の研究では、こうした技術的な課題の解決策についても検討を進めることにしています。
2023年10月14日(土)
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