世界の気温が産業革命前に比べて2度上昇すると、今世紀半ばに暑さに関連する年間死亡者数は近年の4・7倍に増えるとする報告書を、世界保健機関(WHO)などの国際研究チームが15日、医学誌「ランセット」に発表しました。温室効果ガスの迅速な排出削減で気温上昇を抑えなければ、人類の健康が深刻な危機に陥ると警告しています。
30日にアラブ首長国連邦(UAE)で開幕する国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)に向け、WHOなどの専門家らが報告書をまとめました。
報告書によると、2022年までの10年間で暑さに関連して死亡した65歳以上の人は、2000年までの10年間と比較して85%増加しました。気温上昇がない場合に予測された38%増を大幅に上回りました。気温が2度上昇すると、暑さに関連した死者が、今世紀半ばには1995~2014年の水準よりもさらに370%増えると推計しました。
また、2度上昇で、2041~2060年までに中程度から深刻な食料不足に直面する人が約5億2500万人増加し、栄養失調のリスクが高まります。温暖化で蚊の生息域が拡大し、デング熱の感染リスクも37%高まると予測しました。
国立環境研究所の岡和孝主幹研究員(気候変動適応)は、「暑さによる直接的な影響や渇水、食料不足への影響も懸念される。気候変動による健康への影響を改めて認識する結果だ」と話しています。
一方、国連の気候変動枠組み条約事務局は14日、各国が掲げる最新の温室効果ガスの排出削減目標が達成できた場合、世界全体の排出量が2020年代に減少に転じる可能性が高いと分析した報告書を公表しました。一方で今世紀末の気温上昇を1・5度に抑えるパリ協定の目標に必要な削減量には遠くおよばないと指摘しました。
アントニオ・グテレス国連事務総長は、「世界は気候危機への対処に失敗しつつある」とコメント。11月末からアラブ首長国連邦(UAE)で始まるCOP28は世界の対策の進捗評価が主要議題となる予定で、今回の報告書などが議論に反映される見込み。各国の削減目標の引き上げにつながる成果が出せるかどうかが注目されています。
2023年11月15日(水)
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